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落内円は落ちている  作者: 七風


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333/555

ムサシPT 19層で無双する

エキドナのダンジョン。


その十九層。


ガイルがEVに向かって話していた。


「皆さん、今日はチヨさんとナツメさんを連れてきています」


その隣では、二人が少し緊張した様子で立っている。


「十九層って聞いてないんだけど!」


ナツメがムサシを見る。


「うむ!」


ムサシはいつもの調子で頷いた。


「実戦が一番の修行である!」


「そういう問題じゃないよ!」


「姉様……」


「……来る」


チヨが刀を抜いた。


魔物が一気に飛びかかってくる。


「わっ……!」


ナツメが慌てて弓を構える。


「えいっ!」


放たれた矢が魔物の足を正確に射抜く。


動きが止まったところへ、チヨが踏み込む。


「……そこ」


一閃。


魔物が倒れる。


「姉様、次!」


「うん」


今度はナツメが前へ出る。


近づいてきた魔物を刀で受け流し、そのまま距離を取る。


弓を構え直す。


「これなら……!」


放たれた矢が魔物を貫いた。


「……倒した」


「倒したね」


最初こそ「あわわ」となっていた二人だったが、次第に動きが落ち着いていく。


チヨが前を抑え、ナツメが後ろから援護する。


魔物がチヨの横を抜ければ、ナツメが仕留める。


ナツメへ向かえば、チヨが間に入る。


「そこ!」


「任せて!」


一体。


また一体。


二人は確実に魔物を処理していった。


ガイルがEVを見る。


「お、コメント来てますね」


『この二人、登録試験でFって言われたんだよな?』


『だから登録しなかったんじゃなかったっけ?』


『登録してないのに十九層来てるの草』


「そうなんですよ。Fからって言われたので、二人とも登録しなかったんです」


『え?』


『F判定されて登録やめたの?』


『じゃあ今の二人って無所属?』


「そういうことです」


ガイルが苦笑する。


「まあ、本人たちからしたら、わざわざFで始める必要もないですからね」


『いや今の戦い見たら納得w』


『どう見てもFじゃない』


『普通にAクラスじゃね?』


『というか姉妹の連携がすごい』


チヨとナツメはコメントを見ながら顔を見合わせる。


「……褒められてる」


チヨが呟く。


「うん」


ナツメも嬉しそうに笑う。


そのとき。


ムサシが二人を見る。


「チヨ、ナツメよ!」


「はい!」


「今日はデータ集めと思うがよい!」


二人がムサシを見る。


「このモンスターをデータ化すれば、ナナリーグッズをいっぱい買えるぞ?」


「……ナナリー」


チヨが少しだけ目を細める。


「あの子もかわいい……」


「師匠?」


ナツメが目を丸くする。


「ナナリー殿はよいぞ。実にかわいらしい」


「モンバトのデータにすれば……いっぱい買えるなら…でもご飯も食べたい…」


ガイルが笑いながらEVを見る。


「お、師がまたナナリーさんの話をしていますね」


『ムサシ、ナナリー好きすぎだろw』


『弟子の修行にナナリーグッズを利用するなw』


『でも目的が具体的すぎるw』


『モンバトデータ集め=ナナリーグッズw』


「さあ!」


ムサシが刀を構える。


「行くぞ!」


魔物の群れへ向かって走り出す。


「師匠!?」


ナツメが慌てて追う。


チヨも刀を構えた。


「……師よ」


「どうした?」


「ここは私達にはぬるすぎます」


ムサシが振り返る。


「ほう?」


チヨの目が、いつもより少しだけ輝いていた。


「まだ……行けそう……!」


「お」


ナツメが姉を見る。


「姉様がやる気満々だね!」


「……うん」


チヨが頷く。


そして二人は、ムサシの後を追って走り出した。


ガイルがEVへ向き直る。


「どうやら、十九層では足りないみたいですね」


『え?』


『今なんて?』


『十九層がぬるい?』


『F判定したギルド職員、今どんな顔してるんだろw』


『登録しなくて本当によかったな』


『いや、この姉妹普通に強すぎる』


『ムサシの弟子っていう肩書きだけじゃないぞこれ』


『チヨちゃんめっちゃやる気になってるw』


『ナツメちゃんも楽しそう』


ムサシがさらに奥へ進む。


「ならば、次へ行くぞ!」


「はい!」


「うん!」


三人が駆けていく。


ガイルはその後ろを追いながら、EVを確認する。


「これは……今日はかなりいいデータが取れそうですね」


『データもだけど撮れ高がすごいw』


『次の配信も見たい』


『和の国の姉妹、覚えたわ』


『剣聖ムサシの弟子って覚えやすい』


『この二人、絶対もっと上まで行くだろ』


十九層。


それはチヨとナツメにとって、思っていたよりもずっと軽い場所だった。


そしてその姿は、EVを通して多くの視聴者に知られていくことになる。


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