姉妹と 和の国の話
ギルマスルーム。
マドカ、ヒナタ、ムサシ、ゲンナイ、リゼット、チヨ、ナツメが集まっていた。
先ほどまで和の国について話していたが、ムサシが気になったことを口にする。
「まず和の国の小次郎なのだが、佐々木小次郎で間違いないかね?」
「それは初代の本名だねー」
チヨが答える。
「そして歴代の当主には小次郎を継承してるの」
「そうだなー。継承するまでは五郎とかだとするでしょう? 当主になったら小次郎を名乗るのが許されるの」
「何代目小次郎みたいなやつ?」
「そうそう!」
「ふむ……小次郎という人物、いつの生まれかわかるか?」
ムサシがチヨを見る。
「そうだなー。確か三百七十年前が初代だったはずー」
「ムサシ、もう確定じゃない?」
マドカがムサシを見る。
「あ? ジジイが宮本武蔵ってのは知ってる。備前長船なんて佐々木小次郎しかいねぇんじゃねぇか?」
ゲンナイが言う。
「そうなるのかのぅ……」
ムサシは少し考える。
そしてチヨとナツメを見る。
「チヨ、ナツメ。驚かないで欲しいのだが」
二人がムサシを見る。
「ここにいるリゼット様以外は、別の世界で生きていた記憶がある。そこは日本という名であった」
チヨとナツメの表情が固まる。
「その佐々木小次郎と決闘した記憶が、ワシにもある」
「長船、三尺ほどの長さはなかったかね?」
チヨが少し考える。
「確かに、そうだけど……」
「日本という国に、みんながいたってこと?」
ナツメが驚く。
「そして、ご先祖様がムサ師匠と勝負したってこと?」
チヨも驚いたようにムサシを見る。
「ムサシはこの世界にいつの間にか飛ばされてきたらしいよ。十代の姿でね」
マドカが説明する。
「若返って、この世界の怠惰の国にいたらしいね」
「ああ。もう約四百年ほど前であったか」
ムサシが頷く。
「不思議ー!」
マドカが楽しそうに言う。
「そこで私は思うの。ムサシとは別のタイミングで、コジロウもこの世界に飛ばされたんじゃないかなってね!」
「あなた達の文化、日本に結構似てるんだよ」
ヒナタも頷く。
「確かに……」
チヨが考える。
「和の国に、たまに日本に帰りたいって言い始める人いた……別の世界だとか……」
「じゃぁ、初代を筆頭に、徐々に日本っぽくなっていったのかな?」
マドカが言う。
「多分そうなんじゃねぇか?」
ゲンナイが答える。
「俺らにとっちゃ、日本の懐かしい料理が作れそう――くらいで、あとはどうでもいいがな!」
「ゲンナイ、多分さぁー。時代劇みたいなのがずっと続いてる国なのかもよ」
「ありそうだな。身分制度とか、まさにそうだわ」
ゲンナイが頷く。
「昔の技術が継承され、より日本っぽくなっちまった。そして度々現れる転生者か転移者。そいつらが付け足してったってとこか」
「その可能性が高いですね」
リゼットが言う。
「私の実家、丸ごとこの世界に飛ばされてきましたから」
「実家丸ごと!?」
ナツメが驚く。
「私は九歳で、この体で日本の記憶が戻ったんだけど、それ以前の記憶がないんだよねー。でも日本でどんな生活してたかは、はっきり覚えてる。その記憶が戻った直後に、お姉ちゃんに保護されたけど」
「俺もだな。なぜかこの体は記憶が劣化しねぇ。日本の記憶も鮮明にあるぜ」
「それは不老の追加特典のようなものかもしれないわね」
リゼットが言う。
「私もムサシも、記憶劣化はないのよね」
「なんか不思議だね」
マドカが呟く。
「この世界に同胞が少なからず、ワシら以外にもいるという可能性が出て来たな」
ムサシが言う。
「今日は来てないけど、ナナリーもだもんね!」
マドカが付け加える。
「まぁ、佐々木小次郎が異世界転移者というのは確定でいいと思う」
「まぁ私にとっては、だから? で終わるんだけどね」
マドカはあっさり言う。
「それよりも食べ物!」
「そこなの!?」
ナツメが突っ込む。
「マドカ、私は陰陽師が気になるかなー」
ヒナタが言う。
「私も式神とか使えたし。日本の陰陽師って現代にもちゃんと継承されてるんだよ? ラノベとかマンガだけじゃないの」
「術者が転移して、この世界に合わせていったのかしら」
リゼットが考える。
「要はサマナーのようなものなのね?」
「近いですね」
ヒナタが頷く。
「他にも紙に術式を書いて起動させるとかですかねー」
「なるほどな」
マドカも興味を持つ。
「まぁムサシも、コジロウがこっちに来たのは驚いてるかもしれないけどさー、文化や技術を伝えて来たっての知れただけでいいんじゃない?この子達は子孫なだけで、コジロウの事を詳細には知らないんでしょ? もう知れないことなんだしさ!」
「まぁ、そうであるな!」
ムサシが頷く。
「二人共、別にワシと小次郎はいがみ合っていたわけではない。命も奪う勝負をしたわけではないという事は、信じてくれるかね?」
「実際に生きて転移してるんだし、それはそうだろうよ!」
ゲンナイが答える。
「ゲンナイよ。ただ、ワシ、巌流島には行ったけれども、まちぼうけなどはしておらんのだが!」
「それは歴史がおもしろおかしくしたんじゃねぇのか? 小説みたいによ!」
「その可能性は高いな!」
ゲンナイが笑う。
「ワシ、ずるい奴みたいなのだが……!」
ムサシが少し不満そうに言う。
「まぁムサ師匠は剣にまじめそうだもんね!」
ナツメが言う。
「しかも……剣聖……尊敬するべき……師になってほしい……」
チヨがムサシを見る。
「ああ、もちろんだ!」
ムサシが嬉しそうに答える。
「マドカは弟子ではあるが、仕事がいっぱいで、ワシはダンジョンに行くしかなかったしな!」
「それは仕方なくない?!」
マドカが突っ込む。
「ムサシ、あなた拗ねすぎよ?今でも時間がある時はちゃんと勝負してるじゃない」
「でも二人とも、ちゃんと安心していいよ?」
「ムサシは剣の事になると、どこまでも本気で向き合ってくれるもん!」
「勉強になる!」
チヨとナツメが頷く。
「ほっほ。早速明日から修行じゃ!」
ムサシが嬉しそうに言った。
「まぁ、小次郎のことはいいとして」
マドカが話を切り替える。
「まず和の国との交流を私はしたいんだよね」
「うん! 料理のレパートリーを増やしたい!」
ヒナタもすぐに乗ってくる。
「俺も料理ってのじゃ豆くらいしか出せねぇしな!」
ゲンナイが言う。
「あれ作るのに年単位かかんだろ? 買えよ。んで食わせろ」
「和の国に行くのって難しいの?」
マドカがチヨとナツメを見る。
「ん……?」
チヨが少し考える。
「そうでもないけど……?」
「定期便出てるけど?」
ナツメが普通に答えた。
「…………」
「…………」
「…………」
部屋に沈黙が落ちる。
「え?」
マドカが聞き返す。
「定期便?」
「うん」
「普通に行けるの?」
「船に乗れば行けるよ?」
マドカは少し考える。
「なんか……もっと秘境みたいなところだと思ってた」
「そんなことないよ?」
ナツメが首を傾げる。
「外国の船もたまに来るし、和の国からも外へ出る人はいるから」
マドカが立ち上がる。
「行けばわかるってことだね!」
全員がマドカを見る。
「行きたい!エキドナと商談してゴールにっていうかエキドナにいろいろ欲しい!」
「……え?」
ナツメが目を丸くする。
「だから、行こうよ」
マドカが笑う。
「和の国の料理も食べたいし、実際にどんなところなのか見たい!」
「うん! 私も行きたい!」
ヒナタも賛成する。
「俺も興味あるが、ここから出れねぇんだよな。お土産頼むわ。」
ゲンナイも頷く。
「ワシも行くぞ!」
ムサシも即答した。
「お前は刀だろ」
ゲンナイが突っ込む。
「当然だ! 和の国の刀を実際に見られるのだからな!」
「結局それかよ」
「それの何が悪い!」
チヨとナツメは顔を見合わせる。
そして、チヨが少しだけ笑った。
「……じゃあ、一緒に行こう」
「うん!」
ナツメも頷く。
こうして、これまで話を聞くだけだった和の国へ。
エキドナの面々が、実際に足を運ぶことになった。




