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落内円は落ちている  作者: 七風


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落ちる女、落内円

新作はじめました。守護霊ばあちゃんも同時に書いていくことになります。こっちもよろしくね!

落内円、十八歳。


 高校卒業。


 大学受験――失敗。


 就職活動――してない。


 資格――特になし。


 彼氏――当然なし。


 友達――まあ、いるにはいる。


 そして私には、昔から一つだけ、周囲に褒められるものがあった。


「ゲームなら負けないんだけどなぁ……」


 私はスマホを眺めながら呟いた。


 ゲームだけは本気だった。


 攻略Wikiは隅々まで読む。


 隠しアイテムの入手条件は全部調べる。


 期間限定イベントは取り逃さない。


 コンプリート要素があるなら、当然コンプリート。


 ゲーム大会に出れば、それなりに上位まで行ける。


 現実でもこの集中力が発揮できれば、人生はもっと違ったんじゃないかと思う。


「落内って、本当に何やってもダメだよな」


 高校時代、何度言われたことか。


 落ちない。


 円。


 なのに人生では落ちまくり。


 名前負けにも程がある。


「……まあ、いいけど」


 私はコンビニ袋を片手に歩いていた。


 家に帰ったら新作ゲームをやる。


 それだけが今日の予定。


 人生設計?


 そんなものは知らない。


 私は自分の足元を見ずに歩いていた。


 そして――


「ん?」


 道の真ん中に、マンホールがあった。


 正確には、マンホールの蓋が少しずれていた。


「……なんで開いてんの?」


 覗き込む。


 暗い。


 深い。


「これ、落ちたら死ぬやつじゃん」


 そう言った直後だった。


 ズルッ。


「え?」


 足が滑った。


「ちょ――」


 ガタンッ!


「うわああああああああ!?」


 私は穴の中へ落ちた。


 落ちる。


 落ちる。


 ひたすら落ちる。


「いやいやいやいや!?」


 こんなところで!?


 異世界転生とか!?


 いや待て!


 転生するならせめてトラックだろ!


 なんでマンホール!?


 しかも――


「私、今日までずっと落ちてばっかじゃん!!」


 大学にも落ちた。


 人生にも落ちた。


 そして最後は物理的に落ちた。


「落内円、十八歳――」


 暗闇の中で、私は悟った。


「……最後まで落ちるのかよ、私……」


 そして。


 私の意識は途切れた。


     ◆


「……ここ、どこ?」


 目を開ける。


 真っ白な部屋だった。


 病院ではない。


 天国……でもない。


 そして目の前には。


 黒い角を生やした女が座っていた。


「…………」


「…………」


 しばらく見つめ合う。


「……悪魔?」


「そうですね」


「天使じゃなくて?」


「悪魔です」


「死後の世界って悪魔が担当なの?」


「今日は私が担当です」


「担当制!?」


 女は淡々と書類をめくった。


「落内円さん。十八歳。死亡原因は転落死」


「そこは分かってます」


「では、次の人生について説明します」


「待って」


「はい?」


「私、転生するの?」


「その予定です」


「マジで!?」


 私は身を乗り出した。


 ゲーム、漫画、アニメ。


 散々見てきた異世界転生。


 まさか自分が?


「……じゃあ、もしかしてチートとか?」


「一応、選択肢はあります」


「キターーー!!」


 私は立ち上がった。


「よし! 第二の人生!」


 悪魔は微妙な顔をした。


「……その前に、転生先について説明します」


「はい!」


「あなたが行く世界では、一般的な善悪の認識が、あなたの世界とは大きく異なります」


「ほう」


「あなたの世界で善とされている神々が、こちらでは悪性存在として扱われています」


「……え?」


「逆に、あなたの世界で悪魔とされている存在が、善性として信仰されています」


「…………」


 私は数秒考えた。


「それって……」


 そして指を突きつける。


「悪魔の親玉じゃん!!」


「そういう認識になりますね」


「世界観めちゃくちゃじゃん!」


「世界の人々はそれを真実として受け入れています」


「じゃあ私が『ゼウスは善神だ!』とか言ったら?」


「異端扱いされるでしょうね」


「…………」


 私は椅子に座り直した。


「……一回納得しとく」


「ありがとうございます」


「納得してないけどね!」


 悪魔は微笑んだ。


「では、チート能力の選択に移りましょう」


「待ってました!」


 私は身を乗り出した。


 こうして私――落内円の、二度目の人生が始まることになった。


 ただし。


 このときの私はまだ知らなかった。


 次の人生でも――


私は結局、いろんな意味で落ちることになる。

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