エピローグ
9/8 六話目 ※98と同時投稿です。
「本当にこのような本で国民達の意識も変わっていくのね。驚きだわ……」
「案外、良い意味で単純だからな。実話を元にした本なんて、共感する者が多いに決まっている」
今、私とフルダーナスは一冊の本を見ながら、会話を交わしている。
そう、この本は……子供でも読みやすいように編集された魅了を持つ女の子に関するもの。
フルダーナスが私に対する悪印象を無くすための施策の一つではある。
私は本を出しただけでこんなにも変わるとは思っていなかった。
だけれども、その本を読んで、確かに国民達の私への感情が変わっていったのは確かだった。
魅了の力を持つ女の子が、様々な困難を経て愛を知っていく物語。
……実話も混ぜられていて、見る人が見れば私のことだというのは分かるだろう。
自分のことがこうして本になっていると正直照れくさい。でもこの本が受け入れられると、私とフルダーナスのことも受け入れてもらえるのだとそう思って嬉しくはなった。
「魅了持ちへの迫害とか、そういうものがなくなってくれることは嬉しいけれど……他国にまで私とフルダーナスの話が広まっているのはやっぱり……恥ずかしいわ」
本を出すことを了承したのは私だ。そうしたら国民達の目も変わっていくだろうとフルダーナスがいってくれたから。
それに実際にこうして魅了の力に対する見方も変わってくれている。
私はそのことは嬉しい。けれど、やっぱり恥ずかしさも大きい。
「ヴィオはやっぱり可愛いな。私はこの本が出版されたことで、ヴィオが逃げられなくなったと嬉しいが」
「逃げないわよ?」
「でも吊り橋効果で恋愛感情が芽生えたと勘違いしたなんてこともよくある話だろう?」
「……心配していたの?」
「少し。だってヴィオが急に私に気持ちを返してくれたから」
「そんな心配いらないわよ。私は……フルダーナスが許してくれたらずっと一緒に居たいと思っているのだから」
フルダーナスは案外、少し心配をしていたみたい。
確かに何かのきっかけがあって、恋をしたと勘違いしてしまうことってあるんだと思う。
あんな出来事があって、助けられたからって私が勘違いしているのかもと一瞬は考えていたのかも。
私はフルダーナスが私のことを離したくないと思っていてくれているのは嬉しい。
「それならいい。結婚式も楽しみだ」
「ええ。私も楽しみだわ。……私、魅了の力があるから、誰かと結婚をすることなんて考えていなかったの。政略結婚の駒にもなれないし、諦めていたから楽しみ」
魅了の力のことが露見したら、周りから祝福をされる結婚式が出来るなんて思ってもいなかった。
実際に私が魅了持ちだとしって、国民達から様々な目を向けられていたから。
それでもフルダーナスがそんなものは関係なく私のことが好きだと示してくれて、それに本を出版することで印象をがらりっと変えさせた。
怖かったから、魅了持ちであることを公にしようとは思っていなかった。
だけど、私が魅了持ちだったとしても……想像していたような悲劇的なことなんて起こり得なかった。
私が魅了持ちでも、周りに祝福される素晴らしい結婚式を送ることが出来るのだ。
そう実感して楽しみで仕方ない。この先、私が魅了の力で苦労したとしても、フルダーナスが傍に居てくれたらきっと大丈夫だとそう思った。
だから、私はこれからも大丈夫。
「私もヴィオのウエディングドレス楽しみだ」
「結婚式をあげたら半年はこちらにいるのよね? 半年後はあなたの故郷に行けるかと思うとそれも楽しみだわ」
そう、結婚後は半々でフルケーヘン王国とグザックデーダ王国を行き来することになった。
それは私がこのフルケーヘン王国を好きだということ、フルダーナスも隣国の英雄としての立場があること。それらを踏まえて、片方の国にだけ留めるよりも、両方に滞在する方がいいのではないか? という話になったから。
それに私もグザックデーダ王国のことが気になっている。
どんな国なのか、どんな暮らしが待っているのか。それを想像するだけでワクワクする。
フルダーナスもこちらによく顔を出しているけれど、実際にフルケーヘン王国に住んでみるとまた違う感想を抱くことだろう。
ただ訪れるのと、暮らしてみるのとでは違う。
……隣国で過ごしている間はオーロと過ごす時間も減るけれど、手紙のやりとりをしようという約束はしている。
オーロは私が結婚した後も、王宮で魔法研究を続けると言っていた。オーロは今の所ルンジャーと結婚する予定はないらしい。それも一つの選択だろう。
ルンジャーも特に気にしていないらしい。二人が話し合って納得がいく未来に繋がるならそれでいいと私は思っている。
「ヴィオが居るならどこだって天国みたいなものだろうな」
「もう……大げさよ」
「本心だが? きっと何処だって楽しい」
自信満々にそう言われて、私は思わず笑った。
これから先の未来、苦労はあるかもしれない。私は魅了持ちの王女だし、フルダーナスは英雄という立場だ。
それでも……私はフルダーナスと一緒なら、何でも乗り越えられる気がする。
魅了持ちであるが故に、私は人付き合いに消極的だった。人前に出ることなく、心の底から信用出来る相手を中々作れずにいた。
だけど、長い間文通をしてくれていたオーロと出会った。オーロと実際に会って、私は沢山背中を押してもらえた。
そして王族として動いた結果、フルダーナスとも出会った。フルダーナスはまっすぐに私に気持ちを伝えてくれた。魅了持ちであることも受け入れてくれた。
大事な友人と、大切な人。
どれか一つでもかけたら、今の未来はなかったかもしれない。
だから私にとって二人とも大事な人。
きっと、これから先の未来は幸福に満ちている。私はそんな予感しかしていなかった。
というわけでこちらで完結になります。
元々この物語は虐げられている悪妻と噂の女の子の友人視点で書いてみるのはどうかな?というところからかき出した物語です。
秘密の文通友達の危機をしって、交流を持つことから始まる物語いかがだったでしょうか?
ヴィオは産まれながらの魅了の力を持ち合わせているのもあって、人との関わり合いには消極的でしたがオーロやフルダーナスと共に過ごしているうちに少しずつ前向きに人と接するようになっています。
オーロも散々自尊心を傷つけられた結果、少しだけ後ろ向きになっていましたがヴィオと過ごしているうちに本来の前向きさを取り戻しています。
個人的には楽しんで書いたので、少しでも面白いと思っていただければ嬉しいです。
感想などいただけたらとても喜びますので、よろしくお願いします
2026年9月8日 池中織奈




