元次男、次男じゃなくなる①
「んぅ?」
違和感。
風上与一は起き抜けに違和感を感じる。
何故か身体がいつもより重い。
「かぜかな?」
言ってみて、それは違うと直感する。
体調不良からくる気怠さとは違う。
与一は季節の変わり目に体調を崩しがちで、体調不良とは馴染み深い。
その経験値から、風邪ではないと分かる。
では、なに?
「ん? んぁ? え? 声おかしくない?」
声が高い。わずかに、いや、いくらか高い。
どうしたのか。やはり風邪で、喉をおかしくしたのか。
だが、それにしては、声がかすれていない。
どういうことだろうか?
オープン。
心の中で念じれば、視界にステータスが表示されたウィンドウが出る。
小学校の義務教育で習得する、ステータス閲覧のスキルだ。
その手の障害を持つ人間でなければ、大抵の者が取得出来るスキルである。
「……え、世界のバグ?」
体調を調べるためにログを辿れば、なんと深夜二時に「世界のバグ」を受けたという記述があった。
世界のバグ。
その呼び名は国によって異なるが、日本では世界のバグと称されるそれ。
それは、端的に言って、突如肉体に異変が起きる症状を指す。
ある者は、全身が岩のように固くなったり。
ある者は、透明人間になれるようになったり。
ある者は、全身から発火できるようになったり。
ある者は、身体が粘土のように変形できるようになったり…
…と。
肉体に多種多様な変化が、なんの前触れもなく起きるのだ。
そして、その変化は決して戻ることはなく、永久永続なのである。
「……えっ!? 世界のバグぅッ!!??」
ことの重大さに気がついた与一は、飛び起きて部屋の姿見の前に行く。
自分がどうなってしまったのかを知るために。
そこには…
「…………………へ?」
…そこには、女子がいた。
顔のパーツをそのままに、一回り小さくなって、髪を長くして、女性的な体つきをした風上与一が、そこにはいた。
「……え、えっと」
あまりのことに、開いた口がふさがらない与一。
考えが、まとまらない。
そんなまとまらない中で、だだ一つ、率直に思ったことがあった。
「…俺って、意外と女顔だったんだな」
それはどこか現実逃避気味の、そんな感想であったという。




