元次男、次男じゃなくなる②
与一という名前は、本来、十一番目の男児につけられる名前である。
一郎二郎ときて十郎までいく、そしてその次は十一郎とはならずに、与一となる。
おそらく、余り一をひねって与一となったのであろうと思う。
風上与一の与一は、彼の母が名付けた。
天から与えられし、たった一つの宝物。そういう意味らしい。
あと、11人も子供がいる名前なんて、子孫繁栄で縁起が良いのだとか。
まあ。
そんな素敵な名前をつけてくれた彼の母は、もうこの世にはいないのだが。
というか与一には、この世に血の繋がった家族がいない。
彼の実父は、彼が赤子の頃にモンスター被害で亡くなった。
そして彼が三歳くらいの時に、今の父親と実母が再婚したのだ。
で。
彼が五歳くらいの頃に、実母が死んだ。
殺人鬼の凶刃にやられての、理不尽な死であった。
ちなみに、実母も実父もモンスター孤児で親類等はいなかった。
そこから。
八歳になるまで、与一は父と二人で過ごしてきた。
血は繋がらなくとも、与一と父は確かな絆で結ばれていた。
そして。
与一が八歳になる頃に、義父が再婚する。
相手は一太郎二姫の子持ちの女性であった。
さらに。
再婚して翌年。
二人の間に男児が生まれた。
加えて、そこから二年後に女児も生まれる。
合わせて七人家族。
だが。
与一と血の繋がっている家族は、一人もいないのだ。
だから、与一は家事をこなす。
家族のために、家事を進んでこなす。
誰に強制されているわけでもない。
だが与一は進んで家事を行う。
ただ、漠然と、不安なのだ。
家族を愛しているし、家族に愛されている。
その自覚は与一にもある。
でも。
だけど。
それでも。
ふとした瞬間に、孤独が心を支配する。
本当に一瞬。本当に一瞬だけ、家族が信じられなくなる。
そんな自分が嫌で家事に打ち込む。
こんなに愛されているのに、愛を疑ってしまう自分が許せなくて、嫌で、嫌いで。
自分に対して、どうして、なんで、最低だよ、と思いながら家事をする。
家族の役に立ちたくて。
役立たずは家にいらないから。
と。
そんなことを思うような家族では絶対にないのに、そう思ってしまう自分。
嫌い。
嫌い。
なんだコイツは、悲劇のヒロインでも気取っているのか、いい加減にしろ、気持ち悪い。
そう何度も自分を非難しても、どうしても、ふと、そういう気持ちが過ってしまう。
最悪だ。
これは家族への侮辱だ。
愛する家族を侮辱するなんて、許せない、許せない。
死んだ方がいいとさえ、少しだけ思ってしまう。
そんなことをすれば家族の心を深く傷つけることになるから、絶対にしないが。
ああ、本当に、なんて最低な人間なのだろうか。
そんな、この自分に酔ってるみたいな思考も嫌い。
世の中にはもっと不幸な人がいっぱいいるのに。
自分は恵まれているのに。
嫌い。
嫌い。
大嫌い。
と。
彼はそう思っている。
そう思ってしまっている。
風上与一は、そんな思いを抱えながら、毎日、笑顔で家事をこなす少年であった。




