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地球滅亡の直前に時間操作の能力を獲得したので、したいこと全部してから地球を救います。  作者: 夏野恵


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第12話 はい、私の短所は性格が良すぎることです。

そういえば前、MBTI診断というものが流行ったよね。

今更だけど、ちょっとやってみようかな。


「これ、絶対散歩中にするヤツじゃないでしょ」


立ち止まって診断開始。


診断終了。


「ISTPね」


だからなんなの?

説明文を斜め読みする。


なんでも巨匠らしい。

他にも起業家とか冒険家、主人公なんていうのもあるとか。


「私、ガウディってことでいい?」


なんかわからないけど、そういうことなんだろう。


悪い気はしない。


満足してスマホをポケットに入れて散歩を再開した。



「今日はどうしよう」


歩きながら、昨日生まれた疑問を解決する手段を考えていた。


その疑問というのは、「なぜ目覚まし時計をセットしないと、外の風景は変わらないのか」。


寝て起きたときに時間が動くとは言っても、目覚ましをセットするかどうかで2つに分岐する。


1. セットする→起床時、その時刻になっている

2. セットしない→起床時、時刻は就寝時のまま


「目覚まし時計が起点になっているのはわかるんだけど……」


その理由とか、細かい条件と言ったものはまだわからない。


少し上を見上げながら歩き続けた。

傍から見るとかなり滑稽に映るかもしれない。


時間が止まっててよかった。


「あの目覚まし時計くんに秘密がある、という仮説を置いてみよう」


合ってるか分からないけど、とりあえずそう言うことにする。


「そうなってくると、別の目覚まし時計を使っても時間が動くのかを確認する必要があるよね」


じゃあ今日はスマホの目覚まし機能を使えばいいか。


「なんだ、簡単じゃん」


今日のノルマ達成。

あとは好きにさせてもらおう。


この空間の秘密を明らかにするというのは、一応趣味という体裁をとっている。

自分に課せられた義務だと思ったら、やる気がなくなってしまうからだ。


もし本当にしたいことが見つかったら、そっちを優先するつもり。


そして今日はそのしたいことがあった。



「シェアサイクルってどうやって使うんだろ……」


私の目の前には自転車が7、8台止まっていた。


私の行動範囲は基本的に徒歩20分圏内。

もし自転車を使うことができれば、もう少しその範囲が広がる。


行ってみたい場所も何か所かあるので、シェアサイクルという謎サービスに手を出すことにした。


「とりあえずアプリをダウンロードすればいいの?」


指示されるまま、アップストアを開いてダウンロード。


「この流れで変なアプリとかダウンロードさせられないよね」


連携して使いますけど? みたいな意味わからん海外製のアプリもたまにある。

しかしこのアプリをインストールするだけで普通に使えるみたいだ。


一安心。



「で、そのあとはどうすればいいの?」


一旦紹介記事に戻って手順を確認する。


自転車についてあったQRコードを読み込むらしい。

支払い方法等の設定等を済ませると利用可能に。


利用後に自動決済という形をとっているようだ。


「とりあえず、ちょっと乗ってみるか」


今日は別に行きたい場所もない。

そのため、以前行った河川敷あたりまで行って折り返そうと思う。


自転車に跨っていざスタート。


「久しぶりに乗ったけど、意外と楽しいなコレ」


高校の頃はバスに乗っていたが、中学校の頃は自転車で通学していた。

当時は何漕ぎで自宅までたどり着けるかという遊びをしていた記憶がある。


驚異の23漕ぎだった。

それが驚異かどうかの判断はあなたに任せる。



中学時代の記憶を手繰り寄せながら自転車を漕ぎ続けた。


中学2年の夏頃まで、私は吹奏楽部に入っていた。


でも途中で退部した。

理由はとってもシンプル。


人間関係だ。


「いやーあれはマジでだるかったな」


今思い出しても溜め息が出る。


細かい話は割愛するが、とにかく性格が終わってる子たちの魑魅魍魎だった。

私も性格が終わってる界隈の末席にいると思っていたが、そうではなかった。


つまり私は性格が良い人間ということになる。

これからの面接ではこう答えることにしよう。


Q. あなたの長所は何ですか?

A. はい、私の長所は性格が良いことです。


Q. それではあなたの短所について教えてください。

A. はい、私の短所は性格が良すぎることです。


これで昇進試験は合格間違いなし。




「やっぱり自転車って便利だなー」


歩いて20分近くかかるものが、たったの7分で到着した。

2倍以上の行動範囲が約束されたな。


川をぼんやり眺める。


動いていない川は、ただの水溜まりでしかないけど、見ていると不思議な気持ちになる。


ほらあるじゃん。

ずっと同じ漢字を見ていると良く分からない気持ちになるってヤツ。


そう、ゲシュタルト崩壊。


受験生時代に何度もなった記憶がある。

特に睡眠時間を削って勉強しているときになった。


あれってなんか理由あったのかな、とか考えつつ自転車に跨り元来た道を戻る。



無心で自転車を漕ぎ続けた。



「これで大体300円か」


安いのかどうか私には判断つかない。


ただ、一日乗り放題プランというのもあるらしい。

それが1,500円ということを考えると、五分の一に見合った時間ではないと思う。


多分、ちょっと損している。


「でもまぁ、長い時間利用させるためのインセンティブで一日乗り放題を安くしてる、みたいな可能性もあるか」


10個購入したら10%オフっていうのと同じだ。

こっちは1個買いたいって言ってるのに、なんで10個買わせようとするわけ?


そんなどうでもいいことを考えながら帰宅した。



「『二重スリット実験とは』で良いかな」


シャワーを浴びて髪を乾かしている間、二重スリット実験に関する動画を見てみることにした。


そもそも、二重スリット実験は思考実験の一つだったらしい。

現代の科学技術が発展してきたことにより、現実で実験可能になった、と説明されていた。


ちなみに私がその中で一番面白いと思ったのがDean Radinという人物の研究。


わかりやすく言えば、


「人間の意識そのものが量子状態に影響を与えているのでは?」という研究だ。


現在では懐疑的に見られていて主流ではないらしいが、そんなことはどうでもいい。

私はエンタメとして面白い方を信じる。


マジレスはマジレス専門家たちに任せよう。



「とりあえず、今日はスマホで目覚ましをセットするか」


起きる時間を設定する。

そしてスマホをベッドの横に置いていざ就寝。


瞼を閉じる。


高校生の頃だったらその日にあった出来事を振り返って、なんであんなことしちゃったんだろうと1人反省会をしていた。


ペアワークのとき、もうちょっと話した方が良い印象与えられたかな、とか、

体育の時間、真面目に参加してたら先生に小言言われなかったかな、とか、

もっと『好き』って伝えておけば、彼氏が浮気しなかったかな、とか。


まあ全部、後の祭り。


祭りって言うのであれば、失敗も見方によってはフェスティバル。

せっかくなら失敗も楽しんだ方が得、という考えで乗り切った。



高校の頃の楽しかった思い出を振り返りながら眠りに落ちた。



ピロロロロ、という聞きなじみのないBGMで目が覚めた。

スヌーズボタンに手が伸びたが、ちゃんと停止して起き上がる。


「外はどうなってるかな」


カーテンを開いて確認してみた。



外の景色は変わっていた。



「起き抜けであんまり頭回らないけど……」


これが何を意味しているか考える。


「目覚まし時計くんはあまり関係ないってこと……?」


つまり時間を設定する、という行為自体が重要ということ。

目覚まし時計自体が特別というわけではないらしい。


「一旦、朝食食べてから考えよ」


とりあえずそれが先だ。

カーテンを全開にしてから、私はキッチンに向かった。


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