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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第八章 ターニングポイント
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同一人物

ドッペルゲンガーは...ちょっと違うかな

「いいよ。例えば...」



 パチン!とマリアが指を鳴らす。



「む...」

「全然分かんないでしょ。苦労したんだよ、習得するの」



 すると、目の前に何かが現れた。



 それは板のような形状で、非常に透明度が高い。どこかに出てくるとわかった上で見ないと出現したことを観測するのも難しい。



「触っても?」

()()()いいよ」

「他はダメなのか」

「まあ追々ね」



 掌サイズのそれは、少し色味をつけるだけで<メヌー・リング>使用時の小板のようにも見える。原理的には同一なのかもしれない。そして力を入れても壊れる様子はなくかなり頑丈。



「これほど小さい理由は硬度か」

「維持するにはそれくらいにするしかなかったんだよね」

「<無詠唱>?それとも<魔道具>?」

「<魔術>だよ。<儀式>を事前にしておいて、特定動作でいつでも出せる」

「それについてもあまり知識はないな」

異世界(地球)由来だから仕方ないね」



 事前に仕込みが必要となると、タイムラグなしの魔法としては<無詠唱>の方が使い勝手が良さそうに見える。仕込みが無くなれば当然使いにくいからだ。



「だが、マリアの場合事前にMPを消費するメリットが勝る、か」

「すーぐMPを根こそぎ持ってかれるからね。しかもこれ、なんだかんだ消費重いし」

「ストックは幾つある?」

「メインで使うのは今75、使うかもで置いてあるやつは1種類2個」

「限界は?」

「すっごい聞くね。今の僕だと100が限界だよ」

「つまり、脱出までに無くなる可能性も」

「ある。というか、下手したら足りないんじゃないかな」



 神話生物との戦いは熾烈を極める。それはマリアもまたよく理解している。



「性質と数はわかった。あとは何かあるか?」

「そうだね...回復はある程度できるよ。お姉ちゃん仕込みだからほぼ独学だけど」

「姉がいるのか」

「まあね」



 なら、あまり薬は使わない方向で行くか。



「よし、ひとまずはこれで。あまり袋小路にいても良くはない」

「安全地帯じゃないから?」

「そういうことだ」



 立ち上がり、もう一度通路の奥を見る。



 こちらからだと奥は明るく、何もいないのがよく見える...



 はずだった。



「「!!!」」



 ガン!!



 結界と剣。その2つがそれにぶつかる。



「見たことは」

「ない!」



 四足歩行、毛皮、人の顔、一対の角。



 少なくとも知識にはない、それ。



 だが、その程度で俺達は殺られない。



 ボン!と爆発。結界が。



 その勢いによって、それが仰け反る。



 腹が、がら空きに



"待ってソルス!貴方は一体何と"

「!」



 なった。そこに強烈な一撃。



 当然止められない。爆発の勢いに乗じた振り上げは、自分でも止められないほど強いものだった。隙を見せたのだから当然、限りなく最大の攻撃を行うべきだ。



 ...体が反応した。間違いなく、今の剣に俺の意思はなく、反射だった。



 剣が、それの身体を抜ける。まるで、そもそもそこにないかのように。






「「罠!」」



 気づいた時には遅い。



 背後の壁が勢いよく迫ってくる。ぶつかって、そのまま前へと進んでいく。



 マリアを確認すれば、そこには驚愕の表情。目の前にそれはいない。



 完全に、してやられた。



 ドン!



 勢いが急になくなり、そのまま放り出される。



 当然受け身を取れる訳もなく、地面に転がる。



「ぐぅ!」



 長く転がり続け、ようやく止まれば。



 俺達は、どこかの十字路にいた。



「う...くっ!」



 痛む体を何とか立ち上がらせて、周りを見る。



 十字路はどこまでも伸びていた。見渡す限り遠くまで。



 途中にはいくつか分岐があるようで、その数は...



「...いや、やめよう。マリア、無事か」

「痛てて...大丈夫、動ける程度には軽いから」



 そういうと立ち上がった。かくいう俺も体は痛むものの動けない訳じゃない。



 [再生]で何とかなるだろう。



「地図は、使い物にならないか」

「突き当たりは...あー、ないのね。まあ部屋の構造は変わってるかな」

「...気づくべきだった」



 足音がしなかった。そして、お互いに常に通路の奥からの気配に警戒していたはずだ。



 それほど本物に近い勢いだった。事実、剣と結界で受け止めている。



「悔やんでも仕方ないよ、次に活かすしかない。こうなったんだから、とりあえず探索しないと」

「...そうだな」



 ペンを取り出す。インクはまだ残って...いる。



「目印は?」

「これかな」



 ピッ、とマリアが自身の指を八重歯で切った。



 血がポタポタと垂れてくる。虹色だが。



「すごい色だな」

「あんまり近づかないでね。悪影響しかないよ」

「わかった。なら先導しよう」

「思ったんだけどさ、この階層って無限に続いてるのかな?」

「いや、有限だろうな。無限に続いている<ダンジョン>なんて聞いた事...」

「...あるんだね」

「あったな」



 ============================================



 案の定有限だった空間は、しかし思ったより広くなかった。



「できた?」

「ああ。念の為再確認しよう」



 通路は格子状に5*5で構成されている。その範囲から逸脱する部分、通路の端はランダムな別の通路の端と接続されている。会わなかっただけなのか定かではないが、()()とも魔獣とも、神話生物とも接触しなかった。



 俺たちが来た袋小路、そして<ダンジョン>の階層を移動するための階段はなかった。永遠に続いているように見える牢獄ということか。



 通路に囲まれた牢屋は4*4の16部屋。出入口の方向はこれもランダムであるように見える。



 そして中にはほとんどの場合何も無かった。精々が枷の跡であったが...



「骨があった場所は?」

「こことここ、それとここ」

「齟齬はないな」

「記憶力はいい方なんだ」

「個数は?」

「当然」



 マップ上だと

 ・上から1行目、左から4列目に1本の骨

 ・上から3行目、左から3列目に3本の骨

 ・上から4行目、左から2行目に2本の骨



「何かわかる?」

「少なくとも、これがギミックの本質であることだけは」

「僕も。ただ君と違うのはこれらが何を意味しているのかも少し予想を立ててることかな」




 俺はこういうギミックが得意ではない。



 できればこのままマリアが何とかするのが1番いいのだが。



「聞かせてもらおうか」

「多分これ、<魔法陣>なんだよね」

「これがか?一体どんな効果なんだ」

「え?あ、そっか日本語だとそうだけど、こっちの言語だと違うのか」



 うーん、と唸るマリア。同音異義語と言うものらしい。



「えっとね、僕たちが元いた地球(異世界)には、マホウジンっていうパズルがあったんだよ」

「パズル...<ダンジョン>のギミックか」

「あっちだとただの娯楽なんだけどね」

「そういえば、異世界では娯楽が発達しているんだったな」

「ここが発達してないだけなんだけど、まあそれはいいや。ペン貸して」

「ああ」

「このまま地図に...ん?」



 マリアが地図を裏返す。3階層のマップの裏は無地のはずだ。



 しかし、そこには何かが書かれていた。赤黒く、おそらくは血が固まって書かれている。



 波線のように見えるが...いや、違う。



 アラビア語か。



「なんて読む?」

「おっとその前に、何で君はこれを言語として認知している?」



 ...鋭い。が、さすがに全て話すわけにはいかないか。



「神話生物について調べている最中、それに似た文字を使った言語を見つけた。今は練習中で、発音できないがある程度読める」

「ん、わかった。で?これはどこまで読めるの?」

「読めなかった。まだ履修範囲外だ」

「まあちょっと難しいかもね」

「読めるのか?」

「当然」



 コホン、と息をついて、一言。



「مكتمل」

「...喋れるのか」



 驚いた。確か地球には数多の言語があると聞いたことがあるが、まさかたまたまアラビア語を主に使う場所で...



「習ったの、かなり昔なんだけどね」

「なら本来は」

「話が脱線しそうだから、それはまた後で」

「む、そうか。ならば仕方ない」



 その過去に、神話生物へと繋がるヒントがあるかもしれないと考えたが。



 まあいい。今はマホウジンとこの言葉の意味について聞かなければ。



「意味だけど、一般的には'完全な'とかになるかな。うろ覚えだからあまり信用しないで欲しいけど」

「それで、その言葉は先程のマホウジンに繋がるのか?」

「もちろん。というか、少し簡単になったよ」

マホウジン?完全?なんのことでしょう。ちなみに文字に起こすと


? ? ? 1

? ? ? ?

? ? 3 ?

? 2 ? ?


となりますが...?

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