5じゃなくて4
お久しぶりです
...今後、何回言うことになるのでしょうね?
「なんで、ここにいる」
「それはこっちのセリフだよ。なんで<勇者>がこんな<ダンジョン>に?」
やはり、一枚噛んでいる。もし関わっていないのなら何があったかくらい言うだろう。
「...」
「まあ、何となくわかるけどね。リーシャが君を呼んだのだろう?」
「リーシャ?」
<ダンジョン>の前にいた、あの子か...?
「人間のように見えたが、まさか...」
「人間だよ。僕について来てくれる、理由は分からないけどね」
「本当にか?」
<魔王>のことだ、神話生物だということを隠す可能性もある。
「もし神話生物であるなら、僕は君に隠したりしない」
「...」
「信用してないね。でもそれでいい。神話生物に対する警戒は常に怠らないことだ」
そんなことわかっている。ここまで幾度となく神話生物と戦い、その全てで死にかけたからな。
「...警戒をしろというのなら、聞かせてもらおうか。なぜ<魔王>がここにいるのか」
「はは、正しい判断だ」
答えによっては、ここで<魔王>を...
「だけどその前に、この拘束具を壊してくれないか」
「何?」
「僕自身、もう1週間は飲まず食わずでね。僕の左腕が体内で頑張っていないと、意識を保つことすらできない」
な、そんなに...
「出来ればこれを壊して、追加で食べ物も欲しい」
「図々しいな。わかった、失礼する」
「生きるためにはなんでも...え?」
<魔王>を直視する。右腕と、それから両足に枷。
ただの鉄製、斬れば簡単に壊せそうだ。
"ま、待ってくださいソルス!これは罠かもしれないのですよ!"
「喋るのかその聖剣。ってそれはともかく、その意見には僕も同意だぞ、もし罠だとしたら」
「罠なら、とっくに俺は死んでいる。ここで殺せばいいだけだ」
いくらでも方法はあるだろう。単純にここに閉じ込めればそれだけでも。
何より
「何より、お前がいる理由がない。エサとしてぶら下げておくものとしては十分だが俺はここに魔王がいることを聞いていない」
罠にかけるのなら<勇者>5人全員を一気に始末した方が早い。そのためなら、居ないのに<魔王>が居ると言えばいいだけ。わざわざ<魔王>がここにいる理由にはならない。
全体的に、罠である場合無駄が多すぎる。
パパパキン!
拘束具はやはり簡単に壊れた。古くなっていた可能性もあるな。
「さてあとは食べ物か」
「あ、ああ」
「確か、1週間飲まず食わずと言っていたな」
「言ったけど...」
なら、胃や腸に優しいものがいいな。
<簡易調理キット>を取り出して組み立てる。今日だけで2回も使うとは。
「あのー、何をしていらっしゃるんです?」
「?、見ての通り、料理の準備だが」
火をつける。水を適量入れ、火力を調整。
そしてその中に<マイマイ米>を投入。
「どの程度食べる?」
「え、ええと。普通に1人前でお願いします」
「あいわかった」
あとは加減を見つつ煮るのみ。
「...」
"...ソルス、確かにこの<ダンジョン>での戦いは熾烈を極めるものでした。どこか調子が悪いのなら、私ができる限りのサポートを"
「いや?今は特に問題は無い」
本当ならもっと早く完成するんだがな。<マイマイ米>は、下手に火を入れるとダメになる。
炊けたら美味く、常に安い。備蓄には持ってこいだが、少し繊細。
つまり粥には適さないが、持ち合わせがこれしか無かった。
「...ん、ソルス」
「なんだ...確か、マリアか」
「うん。ショゴスが、通常より長く煮てほしいって」
「ショゴス、は左腕のか。それは構わないが、味がかなり落ちるぞ」
「食べられなければ味も意味をなさない、ってさ」
仕方ない、火力を強めるか。どうやら消化器官をかなりやられているらしい。
"な...なぜ、敵に、<魔王>に塩を送るような行為を...?これが<聖神信仰教会>に伝われば..."
「<魔王>?何か勘違いしているようだが、目の前にいる女は救助対象だ。お腹が減っているらしいから料理を作っているんだ」
粥も立派な料理だ。
「...やっぱり、君優しすぎるよね」
"それに関しては同感です。まさか、見敵必殺の対象を救うなどとは"
「でも止めないのね」
"私に止める権利はありません。それに、出来ればソルスの意見を尊重したいのです"
「ほー。剣のくせして生意気だね」
"剣とはなんですか。私にはソルスから貰ったアルカマという名があります"
「へー...」
...意外と続いているな、会話。相性が良かったのだろうか。
「罪な男だね、ソルスくん」
「俺はお前に君付けで呼ばれるほど仲良くなった覚えはない」
「おいおい、僕は転生者だぞ?前世で死ぬまで生きていたんだ、その分僕の方が人生の先輩でしょう」
「二度とその名で呼ばないでくれ。虫唾が走る...よし、完成だ」
味見も悪くなかった。急ぎで作ったにしては及第点と言える。
お椀に入れてマリアに差し出す。食べやすいようにスプーンも添えて。
「まさか、本当に食べることになるとはね」
「...一応忠告しておくぞ。それを食べたら、俺たちは一時的にだが行動を共にすることになる。それでいいんだな?」
「問題ないよ。ここまで来たらそのつもり、だけどそれは<ダンジョン>を出るまで」
「そうだ。わかっているのならそれでいい」
フッ、と<魔王>...マリアが、すこし微笑む。
「それじゃ、いただきます」
そして、粥を頬張った。
魔王と勇者が共闘するのも珍しいことではなくなりましたね




