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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第八章 ターニングポイント
397/402

パワーと知能は両立できる

わ、我は滅びぬ...

 ひとまずの小休憩。<爆属性>による大きめの自傷ダメージを無視せずに回復を行う。



 でも時間はかけていられない。<ヒールポーション >を瓶ごと体に叩きつけて吸収する。



 その後すぐに両手で剣を構え直し、相手の様子を伺う。



「██████!!」



 雄叫びをあげつつ突進...だがさっきと違う、4足での走行だ。



 後脚と中脚で走り、前脚を大きく広げての走行。空気抵抗で先程の突進よりもすこし遅い上に、今度は意識のほとんどが奴に向いている。



 もちろん後ろから走ってくる音は近づいている、もうあと30秒もあれば俺に攻撃を仕掛けられる範囲に入ってくるだろう。



 つまり、20秒で前の魔獣に決着をつけなければいけない。




「...はっ!」



 前方にダッシュし、俺からも近づく。アルカマを上に構え、叩き切るような姿勢で。



 突進の速度は奴の方が上、だが攻撃は前傾姿勢も相まってバスタードソードであるアルカマが先に当たる。



 奴もそれを理解しているのか、丸太のような前脚を頭の上でクロスし防御姿勢を取っている。



「<直前回避>」



 ならばとアルカマを後ろに持っていく。これで攻撃は上段ではなく中段になった。普通はこの重さの物持って走りながら構えを変えるなんて不可能だが、自分も走ることでタイミングを合わせやすくなった<直前回避>がそれを解決してくれる。



 地面と平行に、がら空きになった腹を斬る。



 ザクッ



 手応えは、あり。しかし硬く、その上腹を動かして受け流そうとして来る。一瞬でしかないのに、反応のいい魔獣だ。



 このままだと深手を負わせる前に攻撃が通り抜けてしまう。



「<派生:円撃>」



 MPがかさばるがこのチャンスを逃さないためだ、仕方ない。<魔技>を繋げて確実に割腹させる。



 バシィィ!



「███?」



 真っ二つになった魔獣は、血を吹き出しながら突進の勢いのまま吹き飛んでいった。



<派生>含め<魔技>を3つも使ってしまったが、そのおかげで10秒程のタイムで倒すことが出来た。



 後々に響かないが心配だが...いや、それよりも前にやることがあるな。



「「█████████!!??」」



 同族を殺された怒りを感じる。2体で通路を塞ぐように走っており、逃がす気が微塵も感じられない。



 2体同時は...いや、無傷で済まそうとするなら<魔技>は必要か。



 ちょうどいい、最近覚えたやつがある。今みたいな状況ならうってつけだろう。



 アルカマを鞘に入れ、引き抜く構えを取る。



 奴らは俺の行動を気にせず、ただ肉の壁として6脚突進を続けている。2回目だが、遠い位置からだとむしろカウンター系の<魔技>が合わせやすいな。



「…はぁっ!!」



 そして当たる直前に鞘から勢いよく引き抜き一閃。



 ピッ



 当たった。そして奴らの突進は俺をすり抜ける。



 お互いを見合う奴ら。傷が一切ないことを確認すると、



「「████!!」」



 笑みを浮かべ走ってきた。



 だが、この<魔技>は攻撃の最後に言葉を発する<魔技>だ。



「<反撃>」



 当然、本命の攻撃はその後になる。



 音もなく切断される体、その意味を理解することなく。



 ドササッ



 奴らは沈黙した。



「…ふぅ」



 一息ついて、死体を確認していく。知らない魔獣である以上まだ生きている可能性がある。



 切断された3体を解体しながら確認していく。



 …一応心臓は胸部にあるのか。同時に脳となる部分も頭部に存在している。



 その他の部分も、人間の骨格と比べれば確かに違和感が出るが、魔獣としてはむしろ人間に近すぎると言えるな。



 だがはっきりと分かることは、奴らは攻撃で死んでいたということだ。真っ二つに切断されれば死ぬらしい。



 剥ぎ取ったものを回収し、その場を離れる。既に凍って固まったとはいえ、血は匂いを残す。移動しなければあの魔獣を数が集まった状態で対処しなくてはいけなくなる。



 マップを確認して...と、これは...



 "どうしました?"

「いや...奴らの壊した壁の先が、もしかすると近道になっているかもしれない」



 時間をかけていられないが、もしもそうならかなり有用だ。



 見立てではこの迷路を突破するのに1時間以上かかるはずだったが、それが...



 壁の奥は通路になっている。迷路型の<ダンジョン>も様々だが、この<ダンジョン>は壁をすこし薄くし、空間内に可能な限り通路を敷き詰めた構図になっていた。



 つまり、本来通ることの出来ない道ができている。



 ゴールである<ダンジョンボス>のいるであろう大部屋、その扉前から逆に辿っていくと...この通路はそのかなり近くと繋がっている。



 最近地図を見ていなかったこともあって確証を持つことができないが...



 穴のそばに着く。ガレキの奥を確認し、それを地図と照合する。



 ...うん、やはりこの奥の通路を右に曲がれば通常ルートと合流できる。近道として活用できそうだ。



 今度はしっかりとくぐり抜け、魔獣が来ていないか再確認する。



 後ろからも来ていないことを確認したら、すぐに大部屋の方へ向かう。



 体の冷えを抑えているとはいえ、長時間戦うことは出来ない。近道が見つかったのは都合がいい。



「...さすがに、これくらいの対策では無理か」

 "普通はその程度でも十分ですが"

「少し甘く見ていたな。このままだと、あと30分ほどしか...」



 短期決戦を狙うしかないが、マップにはこの先大広間とある。



 それに、見えてくるあれは...



 通常、<ダンジョンボス>のいる部屋に入るための入口は普通とは違う。大体は大きな門で、たまに違うものになるが。



 門ではない。いや、門ではあるか。しかしそれは戸の役割を持たず、あくまでも飾りでしかない。



 牙や骨、木材などで粗雑ながらも豪華に飾られたそれ、明らかな人工物は魔獣の中でも大物の存在が予感できる。



 つまり、こういう中間階層によくある<モンスターハウス>、魔獣が大量発生する空間では無い。ただ強い中ボス格の魔獣がいる。



 "あれは...なんの牙でしょう?"

「見たことは無い、恐らくは上か下の階層の魔獣だろう」



 異種あるいは同種での魔獣間の勢力争いは有りうる。それに人間が巻き込まれ集落が1つ地図から消えるのもあまり珍しいことでは無い。



<ダンジョン>は階層を繋ぐ場所のみ隣接した魔獣の巣とも言える。友好的な関係を築くか敵対し争うかは魔獣によるだろうし、少なくともこの階層の魔獣は後者にあたるように見える。



 罠を使うほど狡猾な魔獣だ、生きるために他の魔獣を狩っていても不思議では無い。もっとも通常、<ダンジョン>や<生存不可区域>に湧く魔獣は、その空間に濃く漂う<魔力>を吸えるため何かを狩る理由は無いが。



「...ここで考えていても埒が明かないな」

 "行きますか?"

「いや、まずは軽く偵察だ。できる対策はしておきたい」



 門に近づく。くぐらなければ問題は無いはずだ。

BGM:どうあがいても希望のテーマ

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