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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第八章 ターニングポイント
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極寒地帯(2度目)

1ヶ月ぶりなので初投稿です

 話していたら、階段の終点にたどり着いた。



 2層目と1層目を区切る扉は、もう目の前だ。



「...さあ、行くぞ」

 "はい"



 扉はノブを回すことで開けるタイプ。回そうとノブに触れて。



「ん?」



 気づく。金属製のノブが、異様に冷たい。



「まず...いや、もう遅いか」



 手を離そうとしたが、すでにノブに触れていた右手は張り付いて離れない。



 寒い環境で宝箱などを触った時に起こる現象だ。この状態で無理に離そうとすると皮や指ごと持ってかれる。



 ...落ち着いて、残っている左手で<インベントリ>を操作。



<簡易調理キット>を取り出す。



「さすがに、片手で組み立てるのは、難しいな」



 この<簡易調理キット>は、いつでもどんなときでも調理をできるよう俺が考案したものだ。形にしたのはシートで、快く承諾してくれた。



 "あの諦めの表情は今までのどんなものよりも...ねえソルス?"

「...」



 特にこの<簡易調理キット>で優れているのは、小さいながら組み立てるだけでかまどを作れる点だ。



 別に焚き火でもできたりはするが、かまどの方が早いしムラが生まれにくい。断然、かまどの方がいい。



 ...組み立てれたかまどに火をいれ、+を押して強火に。



<インベントリ>から、今度は鍋を出す。水筒に入っている水を適量注ぎ、その中に温石とする石を入れる。



 少し待ち、沸騰したお湯の中で熱くなった石を取り出して、ドアノブに触れるよう動かす。



 自分の手に当たらないよう、慎重に...



「ん...」



 ノブ自体があったかくなったことで右手が動くようになった。それでもすぐには離さず、ゆっくりと離していく。



 指の先から、第一関節、第二関節と...



 ...何とか、手を離せたか。



「ふう」

 "落ち着いている暇はありませんよ"

「ああ、分かっているさ」



  <インベントリ>からグローブを手に取る。滑り止めがあるおかげで武器が手から滑り落ちる心配がなく、その上極寒地帯でも安心な断熱性を兼ね備えている。



 あの現象は剣などの武器防具でも起こりうるからな。念の為、鎧の内側に着込むインナーも厚手のものに切り替えておこう。



 今のうちに<サーモポーション>も飲んでおく。3時間ほど、気温変化に強くなれる優れものだ。



 保険になるが先程作った温石を袋の中に入れ、胸鎧の内側に仕込んでおけば。



 通常なら足りないと言わざるを得ないが、準備が一通り終わった。



 本当ならもう少し準備していたいが、時間が無い。



 扉を開け...軍手越しでもかなり冷たいな。蹴破って中に入ろう。



 バゴン!!



 中、2層目は思った通り冷えていて、所々地面や壁が凍っているのが散見される。



 魔獣が来る前に記憶しているルートの方向へ進みつつ、念の為地図も見る。



 2層目は1層目と違って迷路になっている。<極寒>の<制限>である<ダンジョン>ではよくある、凍死のタイムリミットと複雑怪奇な迷路の凶悪コンボだ。



 が、それはカミラの前では無に帰す。高さまで完璧な地図に加え、本来ならトラップや宝箱の位置、<制限>、湧く魔獣とその性質まで分かる。



 当然、 <ダンジョン>攻略前に<ダンジョン>攻略後相当の情報が手に入ったなら、<ダンジョン>探索の難易度は数段階下がる。奇襲はほぼゼロになり、魔獣の弱点を突けることで戦闘を有利に立ち回れることが出来、さらに無駄な探索を省くことで物資の消費を最低限に抑えられる。



 だが、今回はそうはいかない。早さのために<ダンジョン>の形状のみを写してもらったから、魔獣についての理解がほとんどない。



 だから



 ガラガラガラ!!



「!?」



 飛び退いて回避。急に壁が崩れてくるとは。



  トラップ、それも<ダンジョン>が生成された時に生まれたものでは無い。



 知能の高い魔獣が扱う仕掛け罠だ。



 いつもならこういう罠も分かるが...俺がカミラに依存していた証拠だな。



 "背後からも来ます"

「挟撃か、厄介な奴らだ」



 ...崩れた壁の奥から魔獣が出てくる。



 まず目に入ってくるのは、びっしりと生えている体毛。がっしりとした体格に生える白銀のそれは、しかしお膳立てに他ならない。



 黒い1本の角、そして6本もの脚から3つずつ伸びる黒い爪。周りの白は、それを際立たせていた。



 見たことの無い魔獣。<スノーグリズリー>に近いが、あいつの脚は4本であり、今のあいつのように2本足では立つことが出来ない。出来たとしても、歩けない。



 前には1匹、後ろからは...2匹。初見の、それも相当強い魔獣が、計3体の同時戦闘。



 幸いなことに通路はそこまで狭い訳では無い。地図をしまいアルカマを抜く。



 "!?"

 …ドッドッドッドッドッ



 後方から走ってくる音。時間は、もうない。






「██████!?」



 聞き取れない叫び声と、突進。



 まるで、見えない!



 咄嗟に聖剣でガードするが、受けきることは出来なかった。



 腕ごと弾かれ、腹が露になる。やつにとっては絶好のチャンス、飛びかかって噛みつきを狙ってきた。



 体勢が崩れている以上、やれることは少ない。だが何とかするしかない。



 体術は無理。初見の攻撃である以上<直前回避>はリスクが高い。



 なら。



「。爆ぜろ

<爆炎(ドカン)>」



 やつの眼前で<爆属性>魔法を発生させる。もちろん俺にも被害があるが、崩れていた体勢のおかげで少し抑えられた。



「くっ」

「██████」



 お互いに吹っ飛んで体勢を立て直す。ダメージは...そこまでか。あの様子だとその太い脚でガードできていたみたいだな。



 つまり、例に漏れず頭部弱点の可能性が高い。突進する時は狙い目かもな。



 "........."

「大丈夫か、アルカマ」

 "うぇ!?え、ええ。問題ありませんよ"



 すっとんきょうな声をあげている場合じゃないぞ。



 "わ、わかっています..."



 あの6本足、かなり強い。



 4本の腕として使ってくると思っていたが、どうやらそうでも無いらしい。



 "多脚による突進、見えましたか?"

「いや、見えなかった。少し前かがみになったかと思ったらこれだ」



 見えないが反応はできた。奴が前かがみになったことで俺が警戒したから。



 だが突進自体は全く見えない。いつの間にか目の前にいる、そんなイメージ。



 "次は受けれるか分かりませんよ"

「ああ、もう避けるしかない」



 突進によって無理やりガードを剥がされた腕は、まだかなり震えていた。元々剣は攻撃を受けるものではなく、受け流すものだ。



 それが出来なかった以上、勢いは腕へダイレクトに伝わった。2度は受けることが出来ない。



 かなり速くそして強い突進である以上受け流すことも難しいだろう。もはや避ける以外に選択肢がない。



「…来る!」



 さて、どう反撃するか...

何故でしょう、あの魔獣、どこかで見た記憶が...?

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