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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第八章 ターニングポイント
395/402

朝飯前の難易度ではない

安全地帯です

「くっ」



 階段に滑り込む。段差に足が何度も当たるが、これくらいは我慢する。



 階段上に...いない。音は...



 コッ...コッ......コッ.........



 離れている。どうやら、撒けたようだ。



 "お疲れ様、でも休憩する時間はあまりありませんよ?"

「もちろんだ、だがその前に対策しなくては」

 "透明化に対して、ですね"



 2層目に透明化する敵が現れるかどうか定かではないが、どの道1層目に戻る以上対策は必須。



 さっきは逃げていたから使えなかったが...<インベントリ>が使えるのならやりようはある。



「例えばこれだ」

 "それは...なんです?食糧?"



 <ブレッドスカルの骨粉>。水を混ぜてこねることでモチモチした生地になる。



 量はかなり多い。この1袋だけだが、普通の剣よりよっぽど重い。



「<パン>を自作してみようと思って購入していたんだが、この際仕方ない」

 "本当に料理が好きですね"

「そうだな、女はあまり興味は無いし、睡眠は安全であればどこでもいい」



 料理は俺にとって唯一の娯楽かもしれない。



「さて、これの使い方は単純だ。奴らと相対した時に...」

 "それをぶちまけると?"

「口が悪いが、まあそういうことだ」



 実態があるならそれで全体像を把握出来る。弱点も分かるかもしれない。



 "実体がない場合、あるいは実体と霊体を切り替えられる場合はどうします?"

「<光属性>や<聖属性>の<魔技>を使う。と言いたいが、そもそもその可能性は低い。少なくともアンデッドでは無いからな」

 "アンデッドなら、私が当たっただけで消滅しますから"



 アンデッド。霊体や死体などの魔獣、その総称。



 最近だと<召喚(アンデッド)>関連で出現することが多いか。埋葬や水葬、火葬などを行わず死体を分解したり消滅させることで魔獣化が防がれているからな。



 ...ただ、アンデッドでないからといって霊体の可能性がない訳では無い。時に魔獣は常識を上から塗りつぶしてくる。



「確定していないのであれば、神話生物の可能性だってありうる」

 "それは無いでしょう。ヌト...ヌトス=クァンブルとの戦い以降、神話生物と思われる生命体とは戦っていません"



 ヌトス、奴との戦いの時手に入れた本。



 あれは何度も読んだ。あれは魔獣では無い、<神話生物>ではなく神話生物であると、自分に何度も言い聞かせながら。



 異形の怪物、不可思議な現象...こことは別の世界、地球にはこんな存在がいるのかと思ってしまうが、それはあくまでも俺たちの常識で語る場合の話。



 あちらの常識では神話生物なんてものは、ましてや魔獣なんてものもいるはずがない存在。空想の産物。



 ...だからこそ、なぜこの世界に出現できるのか。それが理解できない。



 でもあいつ(<魔王>)が言うには、「そんなことに理由はいらない」。



「さらにあいつは言った。「あいつらの根本、生まれた理由は人間の恐怖であり、それが意味するのはどこにでもいる可能性があるということ」」

 "<魔王>の言葉を鵜呑みにすると?"

「...」



 <勇者>としてはおかしいこと、か。だが、この世界で最も神話生物に詳しいのは、神話生物を除けば<魔王>マリアのみ。



「俺たちは、そうするしかないだろう。あの本ですら、そもそも書いてあることが違っていたこともある」



 例としてクタニドが挙げられる。本来の姿は海に生きる魔獣のような姿であるとあの本では記載されていたが、実際には俺たちが見たような人型だった。



 "クタニドが変身した姿だとしたら?"

「何故変身するのかを<魔王>はわかっているし、俺たちもわかっているはずだ」



 人の目に触れようとするとき、神話生物は簡単に姿を変える。あの本にはそう書いてあった。



 これは本当だろう。バーストがそうだったのだから。



「そもそもクタニドは滅多に人の前に現れないと、あの本には書いてあっただろう。それならなぜ<魔王>につく?大多数の人間が賛成する<勇者>の側ですらなく、だ」

 "奴らは混沌と狂気に満ちています。だからこそ..."

「いや違う。旧神と言われるあの存在達は、ほとんどが中立あるいは人間側に立ちやすい。しかも、<魔王>には最初から敵対していると思われる旧支配者と呼ばれる存在や外なる神と呼ばれる存在が味方となっている」



 あの本を読んだ限り、そして<魔王>マリアの言う通りなのであれば、その状況は限りなくおかしい。



 敵対していても協力する事項があるとすれば、それは共通する敵が、






「っぐ!?」

 "ソルス?"



 頭痛が、頭が、割れるように...!?



「うっ、く、ううっ...!」

 "大丈夫ですか?"



 っ、あああっ!



「はっ、はあ、はあ、はあ...」

 "何が...起きたのですか?"

「わ、わからない...だが、多分...」



 俺が今考えることはそれではない。おそらくは。



「...透明化対策は、ここらで切り上げよう。今は、この<ダンジョン>を攻略する方が先だ...」

 "...ソルスがそう言うのであれば"



 なぜだ?俺が何かを考えていると、突然ひどい頭痛に襲われる時がある。



 しかもそういう時、必ず()()()()()()()()()



「もしや...」

 "どうしました?"

「...いや、なんでもない」



 今は別のことをするべきだ。この<ダンジョン>で動けなくなっているであろう人を助ける。



 そう、今やるべきなのはそれだ。



 <魔王>は...敵だ。少なくとも、その言っていることを真に受ける必要は、ない。



 <ダンジョン>2層目。できれば、透明ではない敵が出てきて欲しいものだが...



 "...ソルス"

「なんだ?」

 "私は、あなたが先ほど考えていたことを覚えています"

「何?」

 "ソルスだけではありますが、心を読めることはソルスも知っているはずです"

「そうだな」

 "なぜ、私に聞かないのですか?"



 そう言われてみれば、確かに...



「では聞かせてくれないか?」

 "拒否します"

「え?」



 それは、なんで...



 "...言ってしまうと、ソルスが変わってしまう気がするんです"

「変わる...」

 "ソルスという名の個人として、また1人の<勇者>として、別人になってしまうような気がします"

「...」



 別人、か。



 "なぜ、頭痛がするのか。なぜ記憶が消えるのか。そしてなぜそれらが特定の状況でのみ発生するのか"

「その様子だと、わかるんだな」

 "私は神が作った武器です。何となく、その意思は汲み取れます"



 神。<聖神信仰教会>が信仰する、俺たちよりも上位の存在。



 実在する、ということはわかっているらしい。この世界のどこかに存在する<ダンジョン>の奥深くにいるらしい。



 ぜひ一度会ってみたいものだが、少なくとも今は無理だろうな。



「今後、話せることか?」

 "いつかは、話せるようになるでしょう"

「ならその時を待つとしよう」

 "(...話せるようになった頃は、私...)"

「何か言ったか?」

 "いいえ、何でもないですよ。ソルス"

話せるようになっている時は、いったい聖剣はどうなっているんでしょうね。

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