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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第八章 ターニングポイント
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幕間(じゃない)御伽噺

意外にお伽話の前のお話を探すのに時間がかかってしまった今日この頃

男の子のおかげで村は救われました。



しかし、同時に危機が訪れていることを皆が知ります。



<グリズベリー>は、この村だけでなく他の村をも襲っていたのです。もちろん倒しましたから、これ以上の被害はありませんでした。



そのはず、でした。



<グリズベリー>という魔獣は単なる始まりでしかなかったのです。



...村は数日をかけて修復されました。



<グリズベリー>の襲来と他の村に対する襲撃、それらを情報として得ていましたから、備えとして物見櫓も設置されました。



この村は平野にあるので、中央に高い場所から周りを見れば、周囲の大体のことはわかります。



ほら、見てください。セル()から大きな土煙が上がっているのも...土煙?



ドドド、という音。が聞こえてきました。たくさんの生物が走る音です。



たまたま登っていた男の子はそれをよく見てみます。



それはどうやら、<パクパクカウカウ>のようでした。温厚な四足歩行の魔獣で、その肉がとても美味しいと評判です。異世界では牛と呼ばれていたそうな。



そんな<パクパクカウカウ>が一目散に村へ走ってきます。まるで、何かから逃げるように。



男の子は村を出て、すぐに<パクパクカウカウ>の元へ走りました。このままでは村がまた壊されてしまうからです。



鍛えた足でとても早く向かうことのできた男の子ですが、その状況に驚愕します。



「...」



そこには、大きな大きな魔獣がいました。



赤い体、透明度の高い鱗。



2つの大きな翼、4つの太く大きな足。



人より大きな口。顎。目。角。



本でしか見たことのないその魔獣は、明らかに<ドラゴン>でした。



「...お前は...?」



そう喋る<ドラゴン>。どうやら男の子に話しかけているようです。



「お、俺はムン!」

「威勢が、いいな...」



男の子は引きません。村がどうなるかわからないからです。



<グリズベリー>は確かに怖かった。でも頑張れました。村のためなので。



この<ドラゴン>に対しても、それは同じ。どこからか勇気が湧いてきます。



「お前は、なんでここにいる!<ドラゴン>!」



男の子は問いかけます。<ドラゴン>にも知能がありますから、当然返事が返ってきます。



「私は厄介者みたいだからな。遠く離れた場所に来た」



どうやら遠い場所から来たようです。



男の子は考えます。あのドラゴンはどこから来たのか。



昔々、おばあさんから聞いたことがあるようです。



ドラゴンが住む山があると。ドラゴンだけがいて、人から離れた場所に全てのドラゴンの家があると。



<龍里>。<ダンジョン>こそ魔獣である彼らの住処でした。



「なぜ追い出された!」



男の子はさらに聞いてみました。<ドラゴン>は仲が良いともおばあさんは言っていたからです。



「追い出されたのではない...自分から出てきたのだ。あのような場所では、のびのびとしていられないのでな」



そう<ドラゴン>がいうと、<インベントリ>から本を取り出して見せました。



どうやら頭のいい<ドラゴン>みたいです。悪い魔獣ではなさそうにも見えます。



「ではすまない!ここから離れてくれないだろうか!<パクパクカウカウ>が俺たちの村の方へ逃げてきているんだ!」



男の子は<ドラゴン>を説得してみました。戦わずにすむのであればそれでよかったのでした。



「確かに、ここから離れることはできるだろう。だが、<パクパクカウカウ>が逃げ出しているのは私のせいではない」

「何!?」



よくよく考えてみるとそれもそのはず。<パクパクカウカウ>は温厚すぎて、誰とでも仲良くなれるのです。



もちろん他の魔獣とも例外ではありません。狩ろうとしてくる狩人でさえ、怖がりはしないそうです。



ドシン...ドシン...



足音が聞こえてきます。目の前の<ドラゴン>からのものではありませんでした。



その奥に、黒い何かが見えます。



真っ黒な真っ黒な、まるで見たことのないそれは。



「私が追っている...<龍里>がおかしくなった原因こそが、その理由だ」



男の子が、彼が今後何度も戦うことになる敵でした。




 ============================================



 目が覚める。そこまで深い眠りではなかったと思うが。



 夢を見ていた気がする。



「ん...」



 今は朝、宿屋の中。



 危険なことはまずない街であるから久しぶりに寝巻きで寝ることができた。おかげでよく眠れたのだろう。



「あ、ソルス。おはようございます」

「おはようカミラ。他のみんなは?」

「まだ寝ています。まだ早朝なので」



 ...だいぶ時間感覚が狂っているか。ずっと<ダンジョン>にいたからだろう。



「はい、お水です」

「ありがとう」



 水を飲み干し、装備を整える。



 とは言っても軽装、街中を散策できるほどでしかない。



「普通ならあり得ないですよね、こんな軽装で外を歩けるなんて」



 そう言っているカミラもまたかなりの軽装だ。



 魔獣と出逢えばまず勝ち目はない...だがそれはあり得ない。



 マウ国。<天と地の狭間>に入ろうとする人間を咎めるために設立された国。



 エル()にあるために<ダンジョン>で現れる魔獣は強力。しかもセルヌル(南北)という点でセル()に位置しているため地上にはかなり強力な魔獣が出てくる。



 元々<天と地の狭間>は<魔王>が建造した<ダンジョン>らしい。最後の地にふさわしい場所だろう。



「ここにいる人たちは俺たちと同じくらいかそれ以上の人しかいない。門の警備は神聖皇国すら超える」

「だからこそ、<天と地の狭間>の関門として機能しているんですね」



 宿の部屋から出て街へ。



 早朝といえどすでに屋台は出ている。むしろこの辺りの時間がメインだ。



 夜の間に<ダンジョン>に潜る人たちは屋台で食事をなんとかすることが多い。実際に自分たちがそうだった。



 早朝はそんな人たちが帰ってくるタイミング。屋台の中を見れば人で賑わっているのがわかる。



「私たちも入りますか?」

「いや、俺たちは食事をしにきたわけじゃない。空気も吸えたし、部屋に...」






「おい、あれ見ろ!」

「!!」



 誰かがそういった。すぐに声の主を探し、その人が指差す方向を見る。



 ...ワル(西)の空。立ちこめる黄色い煙。



 救難信号だ。

あ、<勇者>視点です。

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