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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第七章 狂季愁豪理不
387/403

幕間 少し先の未来では

体調h(ry



今回は<勇者>視点です。

 コンコン



「...入っていいわよ」

「ああ」



 書斎に入り、周りを見渡す。



 山積みの本だらけで何も見えないが...いた。



 本の壁に埋もれているメーノに飲み物を手渡すためにここにきたが、このままでは飲めないな。



「そこに置いといてちょうだい」

「いや無理だ。バランスが悪すぎて、置いたらこれらが崩れる」



 崩れたら当然、メーノは下敷きになる。



「覚醒したからって、研究に没頭しすぎだ。もう何日寝てない?」

「2日位慣れっこよ」

「だとしてもだ...俺のようになりたいのか?」



 自分用の菓子を齧る。



 とても良い甘さだ、さすがカミラ、良い腕をしている。



 菓子作りじゃ、俺に並んでいると言ってもいいかもしれない。



「そういうわけじゃないけど...」

「...[完全文字(パーフェクトスペル)]、だったか。そのスキルがメーノの魔法に革命をもたらしたことは理解している。それによって俺たちの生存率もまた上がることもだ」



 最近の俺たちは、もっぱら危険な<ダンジョン>にしか入っていない。



 それらは全て人工的なものだが、その全てがさまざまな意味での高難易度であり、ギリギリの生還になることだってよくある。



「...もう少しで、一区切りつくから。それまで待って」

「ならそれが終わるまで待とう。まだ渡せていないからな」



 [完全文字]。人工言語というらしいその文字自体が<魔法母体>として扱えるようになり、且つ文字が目にも止まらぬ速さで書けるようになる。



 今まで何小節か喋る、あるいは少しの時間をかけて<魔法陣>を描く。それらだけだった<魔法>に革命を起こすスキル。



 <無詠唱>も<魔眼>も、言ってしまえば<魔道具>も、それぞれデメリットがあった。ゆえに使いやすく、早かった。のにもかかわらずこのスキルは...



「...今の研究は確か」

「<ルーン文字>の研究」

「それだ。確か俺たちでも使えるようになるのだったか」

「<詠唱>並みの速度と事前準備で、<魔法陣>並みの性能を、<魔道具>並みのコストでね」



 メーノが挙げたそれらは全て<魔法母体>の長所。それらを複合したのが<ルーン文字>という、[完全文字]の元となる<魔法母体>。



「なんらかのデメリットがありそうなものだが...」

「あるとするなら正確性程度ね。しっかり文字を描かないと変わってしまうもの」



 厳密にははるか昔にあったらしいが、なんらかの理由で失われた<魔法母体>。



 今の所俺たち以外、使っていない<魔法母体>だ。



「...長いな。これを発表するのか」

「それらはあくまで資料に近いわ。まだまとめには入ってない」

「あと2週間もないぞ」

「2週間...ああ、14日。もちろんわかってるわよ」



 <新魔法発表会>。12日後に行われる、世界中の魔法が集まる会。



 俺たちもまた卒業していないから、会の最中に行われるコンテストで優勝しなくてはならない。



 正直卒業していない人の方が多いと思うが、学校を卒業したことはすなわち誇りになる。



 目指す目標としては高いが、その分目指す価値があるだろう。



「優勝できると思うか」

「全ての<魔法母体>、特に<魔道具>や<詠唱>には革命が起きる。なんか少し威力を高くできた魔法とかと比べれば、絶対に優勝できるわ」



 事実戦闘で使う位やすいことこの上ない。



 この<魔法母体>の優れているところは、文字として宙に書くだけでなく喋ることでもいい点。



 それぞれの文字には読み方があって、それを読めばその効果が得られる。



 戦闘中、片手ないしは両手が埋まってるのにも関わらず使える点が、<詠唱>のいいところだが、<ルーン文字>はその上でさらに早くなる。



 文字の魔法的な意味は全て既にに決まっているものらしく、発展は探すことくらいしかないみたいだが...



「正直研究とかじゃなくて調べ物だけで勝てるんだから、まあ優秀よね」

「本来そこが優秀なわけではないと思うが」



 バフデバフを使用することに始まり、最近見つけた<通話>の<ルーン文字>で短縮した言葉すら使わなくてもすぐに意思疎通ができるようになった。



 頭に思い描くだけで魔法が扱えるのだから、あまりにも強すぎるだろう。



「...ふう」

「終わったか...ん、食べるか?」

「いつもなら食べないけど、今日はいただこうかしら」



 菓子を共に頬張る。袋の中はそろそろ空になるか。



 ここに来るときにいっぱいにしてきたんだが、どうも無意識に食べていたらしい。



「...味は最高ね」

「だろう?カミラは菓子作りに特化しているらしい」

「私は?」

「前にも言ったが、メーノは全てをそつなくこなせる万能型だ」

「...」

「不満か?」

「[料理]のLvをMAXにしたソルスに言われる、料理関連の褒め言葉は限りなく全て嬉しいわよ」

「そりゃよかった」



 俺と問答しつつ、メーノは本を片付けていく。



「。Z」



 それらは全て、たった一言で終わってしまう。



 あまりにも、簡単すぎる。



「ああ、最近一つ弱点を見つけたわ」

「なんだ?」

「文字には意味が複数個あるみたいなの。<魔力>の込め方だけでそれらを区別しなければいけない難しさは、相応の弱点だと思うわね」

「結局正確性か」

「その通り。まあこの問題も<魔眼>なら解決できるんだけど」

「反復動作しかしないからな」

「<魔義肢>の学会もこれでかなり進歩しそうね」



 まさに、魔法の革命が起きようとしている。



 ...だが。



「それでも足りない」

「...ええ。後々戦うことになるであろう<神話生物>に対しては、多分擦り傷一つつかないわ」

「対処できるのか?」

「わからない。今の所は一定の<魔力>で一定の威力が出ている状況だから、その<魔力>の量を増やせれば変わると思うけど...」

「今の所その兆しは見えない、か」



 コクリ、と頷くメーノに飲み物を渡す。



 それを少し口に含んだあと、彼女は話を続けた。



「とっかかりはあるの。文字を増やしてみれば、多分威力が上がると思う」

「だがそれでは...」

「正直、手間や工程が<詠唱>や<魔法陣>のそれと同じになるわね。使い勝手は間違いなく悪くなるわ」

「...まあ、今の所はどうにでもなる。固定値である故の利点もある」



 それに、そもそも今の俺たちは<神話生物>よりも前に考えなければいけないことがある。



 トゥルン!



「<通話>ね」

「ああ。おそらく相手は...」



 ...予想通り、司祭様からだ。



「はい」

「ソルス、至急皆を集め私に<通話>を返しなさい」

「では見つかったんですね」

「ええ。新たな魔王の名は、エル・ヒルド。「耐王の魔王」と名乗っています」

「「耐王の魔王」...」

「詳細は後ほど。では」



 ...やはりか。メーノのスキルが出てきたからもしやと思っていたが。



 そしてそうなれば、やはり<神話生物>は最後か。



「その様子、全員呼ばれたようね」

「ああ。食堂に全員集めてくれ」

「わかったわ」



 こうなれば、俺は一番の足手纏いだ。



 追いつけるよう、より一層力を求め続けなければ、俺に待つのは...



 "ソルスは十二分に役立っています。今朝だって朝食を作っていたでしょう"

「あれらはメーノがいればどうとでもなるそれに...」



 それに、俺が言いたいのは飯ではなく、戦闘だ。



 もっと、もっと力がなければ。



「...とりあえず、食堂には両手だけで向かってみるか」



 少しずつ、確実に難しく。



 俺はまだ伸び代があるはずだ。それをさらに伸ばさなくては。



 俺が、俺であるためにも。

なんだかんだ色々な情報が載ってます。



そろそろ幕間が本編とはあまり関係がないとは言い切れなくなってきましたね。

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