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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第七章 狂季愁豪理不
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対ヴルトゥーム⑦ 草薙剣

まあまあまあ

 一瞬。一瞬の出来事。



「ほう。どうやら大多数の人間の思考とは違うようだ」

「だろうね、僕の1/3はイゴーロナクだもの」



 クタニド様が空を飛んでいく。



 一瞬すらいらず、距離を詰めていく。



「そうか、ならばこの結末もまた一興か」



 触手で縛られた4人の縛りがキツくなる。






 そのはずだった。



「......??」



 なぜか、<ゴブリン>が抜け出していた。



 触手を引き裂いて。



 その手には、荒々しい牙があった。



「な...」

「どうやら、偽装には成功していたようだ」



 今までI(イゴーロナク)N(ネットワーク)に何の反応もなかったのは、どうやらヴルトゥームに自分の存在を隠すためだったらしい。



 そのまま<インベントリ>から巨大な棍棒を取り出すキーゴイ。



 自分の何倍もある棍棒を持つその姿は、まさに>キング・ゴブリン<だ。



 その棍棒が振るわれれば、たちまち触手は根本から切断された。



「ちっ!」



 断面から触手を生やそうとする、が駄目。



 断面には<炎>があった。よく見てみれば、棍棒にもまた<炎>。



 殴る直前に炎の吸血鬼に触っていたらしい。



「1手」

「何を」

「いや、2手か」



 だけどこれはあくまで陽動。本命はクタニド様だ。



 ヴルトゥームはその想定外に対する対応によってクタニドに対する対応を遅らせてしまった。



 故に。



「まず外れない」



 移動しながら<魔法陣>が常に展開されていく。



 一直線のそれは、まるでブースターのようにも見えた。



「さて、久々に使う<魔術>ですが...」



 その瞬間、クタニドが移動した。



 ヴルトゥームの前から、奥へ。



「受け取りなさい。<杭打>」



 いつの間にか、腕は伸ばされていて。



 ついでに一瞬、移動する前に大量の<魔法陣>が1つに集約、いや圧縮されていた。



 多分だけど、あれがパイルバンカーとかいうやつだろう。



 そしてそれならばその威力は桁違いのはずだ。






 その瞬間、音もなくヴルトゥームに大穴が開き。



 バゴン!!



 遅れて音がやってきた。



「■■■■■■■!?」



 叫びが聞こえてくる。そしてそれ以上に暴れている。



 痛みとかそういうのを乗り越えて、おそらく今ヴルトゥームはヤバい状況にある。



 ...ほんと、こういうのを見ているとなんで旧神が旧支配者に負けたのかわからなくなる。



 なんでこんなに強いのにも関わらず負けたのだろう。



「数の差です」



 なるほど納得です。



 とまあそんな話は置いておいて、今は別のことを考えなくてはならない。



 ヴルトゥームは壊滅的な被害を受けた。今はまだ大丈夫だろうけど、治癒には数分かかるだろうし、何よりその前にクトゥグアの攻撃を受ける。



 つまり、ヴルトゥームもまた短期決戦が必要になった。



 たった1度の陽動でこんなことになるとは僕も思わなかったけど、現実に起こっているのだから...



 ではヴルトゥームから見てこの戦いを早めに終わらせる方法とはなんなのか。



 答えは至極単純。



 ザッ!



 氷の壁を這って、根が僕に絡みつく。



「ぐあっ!」



 よく誰にも気づかれずに根を生やしたな。



 早々できるもんじゃない。なんたって僕の近くには母様とアフーム=ザーがいたから。



 うまく動けないようしっかりと腕や羽を押さえつけられているため、このまま壁に引っ張られる。



 どうにもできないのでは、暴れる意味もない。このまま壁に引き摺り込まれる。



 多くの場合、こうやって引きづり込まれたときは地面であるために怪我は少ないだろう。



 理由は単純で、地面から触手が生えてくる場合が多いから。



「...マリア...そう、そういうことなのですね」



 知らない見てない、そういった態度をとる母様。



 ゆうことを聞かないことなんていつものことだからこれくらいはいい。しかし...



 どうしたものか。



 目の前が見えないので今どこにいるかわからないけど、氷から地面の中に変わったのはわかった。



 <流転傷>、こういう時に欲しくなる。やっぱり覚えさせてもらったほうが良かったかもしれない。もう遅いし、この触手



 を離してもらわない限りはまともに動けないけど。



 手の先、指一本動かないこの状況は10秒ほど続き。



 脳がまた光を認識したのはそのすぐ後。



 なんだかいつもより眩しい気がするが、それは幻覚ではない。



 確実に、目の前の<炎>が影響しているんだろう。



 2m。それほどの近さまで、ヴルトゥームの元に来ていた。



「はぁぁぁ...最初から、こうすれば良かったな」

「そうだね、最初から、こうすれば良かった」

「...何?」



 遅らせれば遅らせるほど、対応は難しくなる。



 それが神話生物。なら僕は、命に変えてでも早くこの状況を突破するべきだった。



 リーシャやお姉ちゃんはキーゴイが助けてくれた。でもそれがなかったら?



 反省は尽きないけど...それらは単に、僕が弱い結果だ。



「弱さ、というのは時に強さになる」

「この期に及んで...」

「特にそれは、囮であるときに最も発揮される」






 瞬間、左手が爆発する。



「僕が死ねば終わり、そんなこと僕が一番よくわかっている」



 左手の口の中に入っていた神話生物に<魔力解放>したからだ。



「だから、こうなることくらいは常に想定していた。それが現実になっただけ」



 先ほどまで小さかったミミズは、しかしヴルトゥーム以上の大きさにまで成った。



「なので、安心してください。ヴルトゥーム様は負けたのでなく、僕の予想がたまたま当たっただけです」



 シュド=メル。地面に来たタイミングで呼ぶことができて良かった。



「はっはっは!!傑作だなヴルトゥーム!まさか人間に、いや元人間程度の存在に出し抜かれるとはなあ!あっはっはっは!」

「貴様っ、シュド=メル!」



 ヴルトゥームはそう言いつつもしっかり植物で対処しようとしてくる。



「どういうことだ...なぜだ、イゴーロナク!!」

「そうか、理解していないのか、お前は。なぜ俺がイゴーロナクであることを隠し通せて、マリアが手にシュド=メルを仕込めたのか」

「なら、教えてあげる...僕たちは、というか僕は常に心を読まれることを想定して生きているんだよ」



 その一つが人格分離()()。頭の回らないものは言っていることや行動と心の声が違うだけで理解できなくなるから。



「そして僕がたまにしか使わないのが、思考偽装。特定のパターン、法則性によって得られる情報のみ思考として使って、それ以外をダミーとして思考する」

「そのような荒技」

「できるんだよ、一体あんたはどれだけ昔の人間を見ているんだ?」



 人間は2000年以上生き続けたんだ、脳だって進化している。



 特に僕が生きていた時はサイバネ技術も進化していた。



 脳みそと精密機械を強制接続させられていた僕にとってはお茶のこさいさいだ。



「なんでこの肉体でできているのかは...まあ、どうでもいいか」



 さて、一転攻勢形勢逆転。僕らのターンだ。



「くぅ...!」

「ああ、シュド=メルをなんとかするための水と塩の同時生成は意味をなさないよ」



 だって...






 ガブリ!



「そろそろメェーちゃんが、肉ばかり食べてたせいで胃がもたれて、野菜と水、それから塩分が欲しくなってきたところだからね」

「ぐ、おおおおああああああ!!」



 シュド=メルがヴルトゥームを食い荒らしていく。



 それをクトゥグアが包み込む。



「「<2重狂気(ダブルブレイク)大火球(アシッドボム)>」」



 後に、炸裂した。

ついに、決着です。



長かった...

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