対ヴルトゥーム② ミント
ギリセーフ(アウト)
<現象操作>...クタニド様が扱っていたやつだ。
本場のそれが、まさかこれほどとは。そりゃクタニド様も謙遜しますよ。
正直レベルが違う。こればかりはクタニド様よりもメェーちゃんの方が上手いと言わざるを得ない。
「そーいうこと」
新月。黒き月はまさにメェーちゃん...シュブ=ニグラスを表していると言っていい。
のだけど、その目の前には本物のメェーちゃんがいる。そしてこの場合は、表しているという抽象的な存在でなくなる。
それは、表すのでなくその存在をより強固にする。存在するからこそ存在する、シュブ=ニグラスのための楔と言っていい。
新月の森林は危険地帯だ。何故なら、そこには山羊が潜むから。
「だからこそ、本気の罰を与えてあげよう。2度と、こんなふざけた真似ができないように」
変わり果てたシュブ=ニグラス。それはあまりにも大きい。
この空間内が広いためあまり大きいように感じないけど、1つの山ほどある。
...そして、やはりというかなんというか。知っているとはいえ、一度見たとはいえ、恐怖というのはなかなか取り除かれない。
触手が伸びてくる。シュブ=ニグラスのそれが容赦無く僕を掴む。
と、横から植物の触手も飛び出してくる。それは僕の腕を掴み、
すぐに子山羊によって引きちぎられた。
「邪魔だ。こいつらの相手でもしていろ」
「ちっ...」
触手は僕を持ち上げ、シュブ=ニグラスの上にくる。
真下には大きな口。いや口というより穴。
それは吸い込むような深淵を持ってい
「あ...」
落とされた。
穴の中。
死ぬ。
嫌。
。
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...
...
...
....
...
...
....
...生きている。死んでいない。
体はない。思考のみ存在する。
故に考える。生きるとは。
すなわち、思考し続けること。生きること。
生きることとは、生きることである。
還る生命の灯火は、やがてその輝きを失う。
それは灰となり、次なる火の種となる。
今、いる場所。知識が伝える。
輪廻転生。体内の小宇宙。
巻き込まれた自分は霧散するか?
否。生きる。
霧散はしない。死ぬことはない。
生きるのだ。生きるために生きるのだ。
絶対に。何がなんでも。例え自らの命が燃え尽きようとも。
肉体を構成。闇の中、漂う要素を掴み取れ。
掬え。摘め。引き寄せろ。
僕はイル。ここに。
還るのだ。
新たな。
生命。
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「!?」
目を開いた時、とても強い光を見た。
一度目を閉じて、もう一度。
ゆっくりと、瞼をこじ開ける。
「あらあら、目が覚めたのね。母は嬉しいです」
母親...いや違う。この存在はイブ=ツトゥル。
事実上の母... え?いや、確かに生物学上は母か?
細胞入ってるはずだもんね。
「そういうこと。ほらほら〜、ママでちゅよ〜」
ママ...いや、確かにシュブ=ニグラスも生物学上母親に該当する。
いや父親?というかイブ=ツトゥルは産んでないわけで、そちらが父親?
「昨今LGBTQ+に配慮してないといけないからね。ここはどっちも母親ってことで」
うむ...納得はできないけどとりあえずわかリマした。
で、なぜ哺乳瓶?
「これ一応R15だからね。直接的な表現はダメなの」
それはわかるんです。でも別に乳を与えてくるとかでもいいのでは?
「でもそれだと混ぜられないですからね。仕方なく、母も賛同したのです」
なるほど...混ぜられない?
「!?!?!?」
「あら、そんなに嫌がってどうしたの?」
気づいた。気づいてしまった。多分これ、絶対に飲んではいけないタイプの飲み物だ。
効能はすごいよ効能は。多分人間性が破裂するほど栄養素が豊富に含まれている。
予想でしかないけど、これを飲めば赤子から成年ほどまで成長できるでしょう。いわばドラッグ、ドーピングの類。
ただイブ=ツトゥルとシュブ=ニグラスの乳を混ぜた液体がその程度で済むはずはない。十中八九人間を辞める。
「今の時点で人間じゃないから、大丈夫だよ」
あ、そうだった。とはならないんだよね。
人間を辞めるって中身の意じゃなくて、外面の意。
すなわち外骨格の豹変。流石に僕とて人外は嫌です。
「どうしましょう。赤子が飲んでくれません」
「うーん、栄養失調は困るし...そうだ、これを混ぜてみよっか」
蓋を開け、取り出した液体を中に入れてくシュブ=ニグラス。
一体何を入れたんですか。なんか光ってましたけど、その液体。
ていうか中の液体まで光出してきた。元は光のない闇だったのに。
「え?クトゥグアの生み出した灰を液状化させたやつ」
待って。それは子供どころかどんな生物でも飲めなくなったって。
ぜ、絶対に飲むもんか。
「ダメか...やっぱり匂いかな」
「シュド=メルの酸も入れてみましょうか」
僕の体でキメラを作る気ですか。実の子になんてことするんですか。
もうそれただの兵器、あるいは汚染液体。
見るだけで害がある可能性もあるんですけど。
「あ、わかった。色がダメなんだ」
「なら色を入れてみましょう」
やめて!心も叫んじゃうよお!
それはダメだって!まだ本編にも出てきてないって!
「...飲みませんね」
「しょうがない。ならとっておきをだそっか」
なんですかとっておきって。
もう何が出てきても驚きませんよ。
「てっててーん。ショゴス!」
ああもうどうにでもなれ。
めためたでした
次回からはそんなめためたじゃないです




