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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第七章 狂季愁豪理不
374/402

>狂気なる植物の王<

殺す...殺してやるぞ、低血圧!

 ============================================


 >ملك النبات المجنون<


 211/211


 ============================================


 HPと名前の表記。やはり神話生物特有のものだ。



 いったい、いつから幻覚だったのだろう。ついさっきか?<ダンジョン>に入った時?それとも話しかけられたタイミング?



 あるいは...この村に入った時から?



 いずれにせよ、今の僕たちは相当やばい状況だ。



「え...な、なにがおこって...」

「はるとは下がってください。今の私たちに、あなたを守る余裕はありません」



 これから行われるのは命の取り合い。



 真っ当な、戦闘だ。



「しかし...まさかお前と敵対することになるとはな、イゴーロナク。そもそも弱くなって引きこもったと聞いていたが」

「万年引きこもりだったあなたに言われたくありませんね。私からすれば、火星からわざわざここに来ている理由が分かりません」



 舌戦。ただの煽り。しかし高度な戦い。



 お互いに心が折れることは無い。人間のように弱いわけじゃないから。



「何、お前と同じだぞ。そこにいる...」



 触手が僕を指す。いや、実質イゴーロナクにか?






「マリア、お前を殺すというな」



 ...へ?



「そうでしたか。ではなぜ村に入ってすぐに殺さないのです?」

「それはこちらのセリフだなイゴーロナク。肉体を掌握しているにもかかわらず残り香を消さないのは何故だ?」

 


 完全に味方になるとは思っていませんでしたけど、まさか最初から敵だったんです?



「何、あなたもじきに分かりますよ。彼女は、むしろ庇護しなければならないのだと。もっとも、あなたがそれを理解するのは敗北してからでしょうが」

「余裕そうだな。肉がそれほど弱体化しているのに、よく余裕でいられる」



 でも確かに、召喚されたのはあくまでも本だけだった。



 しかも読んだらダメなやつ。僕が間違いなく読むことを知っていてやった、てことだもんね。



「今の私は完全体だ。この世界に入ってから力を縛られていたが...」



 ゴゴゴ...



 洞窟全体から音が鳴り響く。すでに通路の合流地点であり、とても広かったこの空間がさらに広がっていく。



 まるで洞窟全体が意思を持っているかのように。洞窟の壁が後ろに下がっていく。



「今ではこうして、力を存分に振るうことができる」

「どうせこの空間内だけでしょうに」



 30秒もあれば、空間は2倍以上の広さになった。



「だがお前よりも出せる力に幅がある。今お前が出せる最大の<魔術>はなんだ?ん?」

「そうですね...<時停>」





「...その他多数。さて、勘違いは治せましたか?」



 ぐおっ。急にMPが持ってかれた。



  <時停>って言ってたけど、まさか時間停止か?



 あれ、<時属性>って使える人が限られているやっばい<魔法属性>だったような。そんなもの兵器で使ったら良くないような...



「ふん。たかだかその程度だろう。結局のところ身体能力で負けているのだ、お前はな」

「マリア、<魔力解放>を」



 え、またMP消費するんですか。



 さっきので7割使ってるんでもうほとんど残っていないんですけど...



「いいからいいから」



 そうですか?ならまあ...



  <魔力解放>を自身に行う。そうすれば、体に変化が起こる。



 冴わたる頭、リフレッシュされた肉体。MPと左腕は回復しないけど、それ以外はほぼ回復した。



「...続けますか?いや、返答を聞くことすら煩わしい。もう始めてしまいましょう」

「いや、始めなくていい。すでに決着はついている」

「ほう、降伏の意思です」






「か...」

「だいたいわかった。つまりお前たちは、動くに際しMPあるいは<魔力>を使うんだな」



 倒れ込み、動かなくなるイゴーロナク。確かにMPは消えたけど...



 てかまずい。意識が朦朧としていて、視界が明滅を繰り返している。



 一体、何が起こったんだ?体外から何か接種したとか、文字通り何かされたとかはないみたい。



 となると...環境の変化か?



「鋭いな、その通りだ。まさかこの空間から<魔力>を消しただけで呼吸困難になるとは」



  <魔力>?いや、でもそれは魔法に使うためのエネルギーで...



「ならば少し考えてみろ。確かに人間、というよりそう進化した地球の生命体は酸素を得て二酸化炭素を排出する。だがそれはあくまでマリア、お前の前世の話だ」



 ...地球では、酸素が3割6割が窒素、残り1割に二酸化炭素その他もろもろというのが空気だった。



 確かに、よくよく考えてみればその地球における空気の定義がこの世界に当てはまる道理なんてない。



 確かクタニド様だったかが言ってた。この星には<魔力>が濃く空気中にある。地球とは<魔術>の勝手が違うって。



 それは魔術だけじゃなく、もしかして僕たち人間もだったのか?



 なんで人間がこの世界にいるかなんてこととは一旦置いておいて、<魔力>の濃い場所にずっといる状態で進化したのなら、そりゃその<魔力>を活用するように進化するだろう。それが生物だ。



 そこから色々考えることもできるけど...今必要なことは、いつの間にか人間が<魔力>が必要不可欠になってしまっていたことだ。



 別にクトゥグアやクタニド様は空気中に<魔力>がなくても生きていられるだろう。生命としてその強度が違う。例えるなら、クタニド様は金属であって酸素は必要ない。



 だけどイゴーロナク。この神格は人間の体をベースにする。いや、していなくてもこの世界ではそうだった。少なくとも、それを今の現状が物語っている。



 人間の生きるために必要な要素も引き継いでいる。その可能性は高いし、だからこそ倒れている。



 ...なら。



「ん?」



 MPは底を尽きているけど、まだHPが残ってる。



<魔力解放>の際、代わりにHPが持っていかれることが多々あった。実際、MPをHPで代用することはできるらしい。よくは覚えていないけど、誰かが言っていたような気がする。



 ということは、今から僕がそうすることも可能ではないだろうか。



「...イゴーロナク?」

「ごめんなさい、イゴーロナクではありません」



 これは、僕です。倒れたイゴーロナクを一時的に退かせて、僕が肉体の主導権を握っています。



「そこから、何かをするのか?」

「もちろん僕は生き物ですから、恐怖を覚えます。そして恐怖に対しは抵抗するのが人間です」




 当然。僕は死にたくないからね。



 逃亡はできない。すでに退路はない。なら足掻くのが人間。



 諦めるにはまだ早いんですよ。



「そうか。ではこちらも策を打とう」



 触手が高速でこちらに向かってくる。



 避けられるか?否、避ける。



「ぐっ」



 頬を掠めるぎりぎりで体を捻り、回避に成功し...



 ...まずい。



「あああっ!?」

「気付くのが遅れたな。最初から、お前は狙っていないぞ、マリア。最初から狙いはこの小僧だ」



 しまった。後ろにハルトくんがいることを忘れていた。



 どうする、ハルトくんは助けられるか...?



「...まだ諦めないか。ならもう少し絶望を見せてやろう」



 さらに洞窟が広がっていく。



「うわっ」



 揺れは地面まで伝わり、バランスを崩すくらいには強力になっていく。



「我らが<魔力>がない状態で生きることができるとお前は言ったな。それは間違いだ」

「どういう...」

「我らはむしろ<魔力>を必要とする。なければ生きていけない。ある意味でお前と一緒だな」



 そうだったのか...じゃあ、なんでこの空間内で...



「はて...ところでだが、ありとあらゆる苦しみを快楽へ、その快楽をエネルギーへと変える人間がいたな?」

えっと...ああ、確かにいましたね。

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