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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第七章 狂季愁豪理不
372/402

順路をまっすぐ

#雨を許すな

 ============================================



「というわけで、これが例題だ。では今から本番の問題を出す」



 結局やり直すのに10分を要した。



 これが誰の所為なのかは、という問いは不毛なのでやめておくとして。



「ただし、本番は例題とは勝手がちがう。植物らが襲いくる中で、違う植物を探し出し、正解の道を開け。では諸君、奮闘を期待する」

「ようやくか。待ちくたびれたぜ」

「...まあ、いいでしょう。しかしこの程度なのであれば簡単に進めそうですね」



 実際そう。僕やハルトくんは見えずとも、クタニド様が見えているのであればそれで道は開けるはず。



 けどね、そう簡単にいかないのが神話なんです。



「本当にそう思ってはいないように見えますが」

「あっ、わかります?」



 流石に僕もこれくらいはわかる。その程度の難易度に設定するはずがない。



 ...ドドド



「あれ、なにかおとがきこえてきて,,,」



 ドドド



「聞き間違い...いや、これは...」




 ドドドドド



「...おいおいおい、楽しくなってきたじゃねえか!!」



 すでに全員が警戒をしている。当たり前だ、どんどん音が大きくなっているのだから。



 音は、背後と前方。つまりは挟み撃ちであることを教えてくる。



 そして音は...



「ん?」



 急に、ぴたりと止んだ。まるで何もなかったかのように。



「...一体何g」






 瞬間、壁が一部崩壊し何かがなだれ込んでくる。



 件の植物だ。



「はっはぁ!!!いいねえ、俄然燃えて」

「燃えないでください。見分けられるものも見えません」

「わ、わああ!?」

「絶対にその手を離さないように。離したら死が待っていますよ」



 なだれ込んできているその様子でもわかる通り、数が異常なほど多い。



 数えるのを止めるくらいには多い。とにかく多い。



 神話生物がいなかったら巻き込まれているだろう。それは、言ってしまえば津波と表現しても差し支えないほどの勢いと量だった。



 しかも、



「っ!」



 植物1体1体が確実にこちらを狙ってくる。特に僕、それとハルトくんを。



 弱いやつから削ぎに行くのは、やはり戦術の基本なのだろう。



「クタニド、まだ見つかりませんか?」

「少しくらい待ちなさい...まさか、文字通り本当に全く同じ存在をこうも大量に作ってくるとは」



 ヴルトゥーム、相当クタニド様を困らせたいようで。



「私の目はあくまでも目。見えるものに限定されます。そもここまで多いと見逃しも視野に入れておかなければいけませんね」

「間引くか?」

「名案ですね。あなたが行った場合目的の植物を燃やす可能性が高いことを除けば」



 見えないのなら見えるようにすればいい。シンプルかつ明確な答えだ。



 だけどクトゥグアはだいぶ雑だから全部消しかねない。任せるのは到底無理だろう。



 でもクタニド様は別だ。



「■■■■■■■■■■■■■■」



 出力こそクトゥグアと比べてしまったら出ていない方であるものの、その十分な火力は周りの植物を燃やしていくのに十分だった。



 蠢く生物が少しずつ、確実に減っている...はずだ。



 多すぎて数十体消しても全く響いていないように見えるのは、おそらく気のせいではないのだろう。



「...」



 クタニド様も唖然としちゃってる。神話生物とはいえ、流石に限度というものがなかろうか。



「おいおい、この程度も消せねえのか、よっ!!!」



 待ちかねたクトゥグアが一気に燃やしていく。



 秒間数百体は消えていっているだろう。飛んで火に入るなんとやら、植物たちは自分たちが押す力でそのまま火に飛び込んでいく。



 ...が、消えない。



「...なんだあ?変な感触がする」

「やはり、ですか」



 んん?変な感触とは?



「なんだろうな...燃やせてねえのか?」

「いいえ、燃えてはいます。確実に。出なくては足元の灰に説明が...」



 下を見た瞬間だった。



 前方と後方、両方から同時に植物が飛びかかってくる。


 もちろん対処は容易。指先からのビームで対処。



 したまでは、よかった。



「む」



 同時に、足元から2体。先ほどと同じく前方と後方から1体ずつ。



 どうやって下から...地面には燃え滓となった植物が積もっているけども。



「さしづめ」



 蹴り上げで前方の2体を蹴り飛ばし、後ろは払いのけて対応。



 ショゴスのおかげでリーチが大きいからね。左腕様様だ。



「灰を養分としてそこから生えてきているのでしょう。自分や外敵となる他の植物たちを燃やし、新たな世代の養分とする植物があるのを聞いたことがあります」



 はえーそんな植物が。僕知りませんでした。



 そしてそうなればこれほど多い理由も説明がつく。死んでもそれを糧として新たな植物が生えてくるのなら、いくら殺しても数は減らない。



 同時に全て薙ぎ払っても、結局それと同じ量が生えてくるだけ。意味をなすことはない。



 時間稼ぎにすらなりゃしない。そもそも今の問題は数が多すぎて違っている植物が見えてこないというのが問題で時間を稼ぎたいわけではない。



「全員殺したことで交配が発生し、追加で無意味なDNAの変更があっては困りますからね」

「うっせえ!んなことわかってらあ!!」



 クタニドを見習ってちまちま燃やしてるクトゥグアがキレるくらい、この状況はあまり良いとは言えない。



 あくまでも僕らはここを進みたいだけ。なんだけど物量が凄まじいせいで進めない。



 そしてどちらに、前と後ろどっちに進めば良いのかは、この状況でわかるはずもない。



 わかろうと思っても、その他通常の植物に阻害される。



 さて、この状況をどう突破するか。



「...マリア」



 はい、なんでしょうか。



「ルールに則って攻略するのとチートを使って攻略するの、あなたはどちらを選びますか?」



 おっと急に質問ですか。



 うーん、そうですね。そもそもこうやって神話生物であるクタニド様らが攻略すること自体チートに該当する行為だと思うんですけど...



 まあ、それを抜きにしたらルールには則るべきでしょう。そも、こういうのは穴を突いて攻略するのが一番面白いんです。



「それは則っているというのか...」

「なるほど、ではそうしましょう」



 そう言った瞬間、クタニドの周りに多くの<魔法陣>が現れ...いや。



 あれは1つの<魔法陣>だ。見ただけで直感的な判断だからなんとも言えないけど、かじってしかいない自分でもわかる。



 積層、というのだろうか。<魔法陣>がいくつも重なっているんだけど、それらはまたいくつかの<魔法陣>で繋がっている。



 そしてそれらは個々の<魔法陣>であると同時に全てで1つの<魔法陣>としても機能するように見える。



「だけではありませんね。あの<魔法陣>、互いが互いを補完しあっている」

「つまり...どういうことだ?」

「<魔法陣>の最大の弱点は破壊されやすいこと。しかしあれは破壊しても残った<魔法陣>が破壊された箇所を自動的に修復するようになっているのです。それに加えて、それぞれが特化されていれば良いために出力が通常のそれよりも大きくなるよう設計されています...あいつ、自分で恥になるとか言っておいて、ここまで<魔術>ができるとは」

「一言もできないとは言っていません。やらなくても良いのでやらないだけです」



 徐々に光り始める<魔法陣>。なぜかはわからないけど、それに触れた植物たちはことごとく枯れていく。



 燃えたり粉々になったりするのではなく、枯れる。となると、もしかしてあの<魔法陣>は...



「ヴルトゥーム、どうせ聞いているでしょうし言っておきましょう。私たちは最初から不利だったので、あなた方と戦う時に最初に行ったのは研究です。弱点を発見し、それを突くための対策を行う...」






「もちろん貴様のことも同じく、対策しているのですよ?」



 チャージが完了した<魔法陣>がついに起動する。



「<除草>」



 起動したそれは一気に空間へと霧散していく。



 それと同時に...<魔法陣>に近かった植物からどんどん枯れ始めていった。



 そこにいるだけで、植物はすぐに枯れていく。生えてこようとする芽も、地面に顔を出した途端に枯れる。



 ものすごい力だ。ここまで雑草を枯らす除草剤はこの世に存在しないだろう。



 生えてくることもない...ん?



 1体、残ってる。

殺し漏らしでしょうか

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