道は切り開くもの
5...
「全部見たよー!」
「おお、よくやったぞ我が子らよ」
「ほめてほめてー」
「おーよしよし」
報告しにきた雛から糸、というかロープ位太い...いや、これ、ん?
糸...そうか、糸か。多分血が滴っているのは気のせいでしょう。うん。
確かどこかの神話で迷宮から逃げるのに、入り口までの道のりをわかるようにするのに使ったのが赤い糸だったような記憶がある。まあ実質その赤い糸と同じものと言えるでしょう。うん。
「やった!これで...すてれた!」
「うおおお!また俺が負けた!」
...クトゥグア、勝負は好きだけど駆け引きが苦手らしい。
「顔に出ますからね」
「うるせえ」
チャチャっと机を片付けて出発の準備。
「そうだ、このトランプはあげよう」
「いいの!」
うわ、絶対受け取りたくない。
変な祝福とかついてそう。
「失敬な。特に悪いものはついていないぞ」
「じゃあ何がついてるの」
「<ダンジョン>で迷うことがなくなる」
「つよっ」
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「こっちだよー!」
図書館は、大きい部屋にたくさんの本棚があり、その中を駆け抜ける仕組みの<ダンジョン>になっている。
言ってしまえばただの大部屋でしかなく、だからこそそこまで時間がかからなかったのだろう。
またそこらへんに人型死体がゴロゴロと落ちているのは、おそらく人間ではなくグールのものだ。
人間と比べて少し、というか結構刺々しいというか。何ならナグとイェブが呼び出していたあいつらとおんなじような姿というか。
...図書館でグールっていうと、あの夢の中を思い出す。
ショゴスの眠っていた本、それを拾った場所。
結局あそこは何だったんだろう。夢であることは間違い無いと思うんだけど...そもそも夢自体が何かおかしい。
夢に行くことは何度もある。しかも結構覚えている。全身火傷は大体の傷に対する比較として何度も思い出すくらいには鮮明に覚えている。
そしてもう一つ、なぜか夢の中の時間は少しおかしい。特に一番最初、あの時点で僕は5歳だったにもかかわらずステータスでは6歳だった。
時間だけじゃない、空間もおかしい。あれは夢で、気絶している間に僕の精神が見ている世界にもかかわらず、肉体があって、物を持って行ったり持ち帰ったりすることができる。
明らかに以上だ。時間を超えている可能性も否定できない。
一体...あの世界はどういう世界なのだろうか。それがわかる日が来ることを祈ろう。
多分ずっとわからないんだろうけど。
「なんか...おもっていたのとちがう」
「え?」
ハルト君の独白。ついつい反応してしまう僕。
聞き耳は得意な方だと思います。
「<ダンジョン>は、パパとママはすごくきけんなばしょだって。でもそんなにきけんだとはおもえなくて...」
「あー...はは、確かにそうですね」
確かに危険な場所とは到底言えないだろう。魔獣はいないのだから。
そう、魔獣はいない。いないんだけど、ここが危険かどうかで言うのならものすごく危険だ。
だって神格級の神話生物がこんな狭い場所に集まっているんだ。おそらくこの世のどんなところより危険だろう。
「だけどそれはあくまでもここだけの話です。あなたはまだ他の<ダンジョン>を見ていない、そして<ダンジョン>が危険と言える、その最たる理由こそ...」
「ここが出口!」
扉。大きなその扉を雛達がゆっくりと開ける。
もちろんそこに待っているのは、開けた部屋。
机と椅子が大量に並ぶ、読書をするためのスペース。
そこに一人立つ、人間。
「ようこそ、<ダンジョンボス>の部屋へ。あなたの言うとおり、<ダンジョン>はこの<ダンジョンボス>との戦いこそ危険と言える理由...」
「御託はいい。始めるぞ」




