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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第七章 狂季愁豪理不
351/403

グリッチ

5...

 ではではお久しぶりですが...



  <魔力>を右手に集める。だいたい体内にある分の3割を集める。



 この状態で<魔力撃>をすれば、さすがの僕も被害が大きいだろう。だがそれほど強力な力を当たり前のように吸って、なおも足りないとこちらの<魔力>を持っていく。



 それが神話生物の<魔力解放>だ。



「では頼みますよ」

「うむ、任せておけ」



 溜めた<魔力>をアイホートに流し込む。



「っ!?」



 瞬間、肩にかかる重さが一気に重くなる。



 左腕が一瞬で消滅するほどの重さのそれは、明らかに蜘蛛とは違った姿だった。



 白く丸い、しかし転がるような丸さではない、眼球で立体の楕円形を表現した生物。



 僕の6倍はある巨体に、しかし僕の足と同じくらいの太さと長さの、数多くの場違いな脚。



 知っている姿、とは違うが、それと同時にこの姿をアイホート様と言わずして何とすると、僕は叫びたい。



「ふむ...この姿もまた良いな」



 なおアイホート様が子kまで巨大化しているということで、その子供たちも巨大化している。



「でっかい!」

「がおー!」

「はやーい!」



 その姿もまた蜘蛛とは違ったものである。目玉、と言った方が正しいかもしれない。



「はい、君は見ないようにね」

「う、うーん...」



 ハルト君は少し見ちゃったか。混乱している様子だ。



 でもちょうどいいかもしれない。このタイミングでミニ発狂して貰えば、今後そこまで神話生物で精神が削れることはないだろう。



「さて...それでは始めるか。我の子らよ、行け」



 わしゃわしゃと蠢く雛、その数は誰にもわからない。



 だけど...



「な、何をする気?」

「何って、人海戦術だけど」



  <ダンジョン>、というより迷路の確実な攻略法。



 左手で壁を伝っていくよりもさらに確実な方法。それが人海戦術。



 あるいは総当たりともいうのだけど、まあつまり。



「圧倒的な数の雛で<ダンジョン>中を駆け抜け、正解の道を見つけてから進む」

「は...はあ!?」



 無論だけど、雛一体一体の強さは人間と同レベル以上。



 何なら強すぎて単体でも単純な罠や本型の魔獣程度なら問題なく轢き殺せる。



 そんなのが一面白い海と言えるほどの数いる。当たり前だけど、それだけいればもう破壊の限りを尽くすことができる。



「さて...暇になったな」

「絵本とかないのかしら」



 多分ないだろう。図書館といえど<ダンジョン>になってしまっているのだから、その中にある本のほとんどは魔獣となっている。



 例え絵本だろうが小説だろうが、魔獣になるのは変わりないからね。



「そうだな、ここは一つババ抜きでもするか」



 どこからともなくトランプと思わしき紙束を取り出し、細い脚でシャッフルし出す。



 そしてみんながいつの間にか取り出されていた座卓を囲んでいる。



 最後にカードが配られる...



 ...ヨシヨシ、10と4と6。意外と捨てられたぞ。



「ちょ、ちょっと!何してるのよ!」

「何って...ただのババ抜きだけど?あ、私1上がり」

「あ!俺のところに来やがった!」

「それは言ってはいけないことですよ、クトゥグア」

「っとそうだったか。悪い悪い」



 もしかしなくても...神話生物どうしの読み合いって、結構不毛か?



 だってお互いに心を読めるんですよね。何持ってるのかわかるんでしょ。



 僕が想像できないレベルの読み合いはあるのかもしれないけど、そうでないのなら意味をなさないというか。



「おかしいんじゃないの!?なんで呑気に遊んでるのよ!」

「いや、だって今はもう待つだけだし」



 どれだけ反論しても無駄だ。彼らは人間の言うことなんて聞くわけない。



 慢心せずして何が神話生物か。



「これで大丈夫。目を開けていいよ」

「ん...わあ、まっくろ!」



 お、ハルト君がサングラスをつけてる。ちゃんと似合っているものを母様はつけたようだ。



 そしてあの様子を見るに特別なものだろう。普通に神話生物を見ることができるような、そんなもの。



「それじゃババ抜きの説明をするね。まずこの紙束はトランプって言って...」

「...おおー!すごくおもしろそう!」

「アンタも!何でこの状況で遊ぼうとするのよ!」



 ...そういえば、この世界の娯楽ってすっごく少ない気がする。



 かくれんぼを久しぶりに聞いたくらいには。数年前の僕も遊ぶことはことはほとんどなかった。



 だからハルト君がババ抜きに興奮するのも少しわかる気がする。遊びをあまり知らないのなら、ただのババ抜きがすごく楽しく感じるだろう。



「それじゃあもう一回戦いきましょうか。ハルト君もやってみる?」

「うん!」

「...ああ、せっかく作った<ダンジョン>が」



 うーん少しも可哀想に感じない。



 今後も<ダンジョン>はこの方法で攻略しよう。こっちの方が楽だ。

さーて、今日は忙しいぞー

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