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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第七章 狂季愁豪理不
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未来は大事

久しぶりに短くなった気がします

 外はやはり黄昏時で、空はもうすでにオレンジ色に染まっていた。



 小屋はどうやら路地の中にあったらしく、おそらくこのまま路地を通って図書館に向かうことになるだろう。



「それじゃあハルト君、道案内をよろしくね」

「うん」



 足音を極力消し、影を縫うように移動していく。



 幸いなことにまだ外に出ていないと思われているのかもしれない。地上はどうも警戒が薄く、路地の方まで人が出てきていない。



「あそこをみぎだよ」

「了解」



 ただそうだったとしても最大限の警戒は忘れない。ショゴスが周囲を常に把握しつつ、クトーニアンに地中から大まかな索敵も行ってもらう。



 もちろん自分自身による警戒も含め、どれだけ相手が来ようと問題ない状況にする。



「...来ます。前から2人」

「ハルト君、隠れて」

「う、うん」



 ただ、索敵していたとしても接敵を行わないわけじゃない。それについても迅速に対処していく。



 ハルト君を隠したのなら、まずは住宅の影に隠れるように移動する。



 同時に



 ショゴスを動かして石ころを奥の方へ投擲。



 コツッ



 最近石ころを多用しているけど、実際これが人の注意を逸らす最も簡単な方法だ。



「ん?なんだ?」

「今、音がしたな」



 後ろを向いた、この一瞬。それがチャンスになる。



 すぐに飛び出して足を蹴る。



「おわっ!?」

「何だ!?」



 死角から体勢を崩されたんだ。まず即時の対処は不可能。



 そうしたらすぐに首へ鋭い触手の一撃を叩き込む。この世界の人間はこの程度じゃ死なないしむしろこれくらいしないと気絶しないのでしっかり力を入れる。



 それこそ、骨を折る勢いで。



「「ぐ」」



 倒れ込んだのを見てすぐに拘束する。



 誰でも持っているであろうロープを使って手足を縛り、またそのロープを簡易的な口輪とする。



 これで安易に助けは呼べないはずだ。



 あとは木箱を動かして、その奥の方に押しやって...と。



 よし。さらに見つかり辛くなったぞ。こっちのリスクは最小限に、ほぼ完璧に相手を再起不能にできた。



「ハルト君、出てきていいよ」

「う、うん」



 図書館に向かう道のりを再開する。一応頭を使えば、こうやって神話生物に頼らなくても戦えるんです。



 ショゴスには頼ってるけどね。でも、ショゴスには全幅の信頼を寄せているわけで。



「実際ショゴスはとても頼りになりますよ」

「お褒めに預かり光栄です」



 と、まあやはりというかなんというか。そこまで大きくないこの村は、ただ歩いているだけなのに図書館が見えるようになるまで10分かからなかったか。



 だけどその見える図書館は大通りの先...夕方とはいえ人通りはまだ多い、このまま進むのは危険だろう。



 さてどうするか...



「ハルト君、ここを迂回する道はない?」

「うーん...多分、ないと思う」



 じゃあないな。ここの地理に詳しい君が知らないなら僕がわかるはずがない。



「腹を括りましょう。ばれる可能性は無きにしも非ずですが、しかしやらないよりはマシな方法があります」



 おお、本当かイゴーロナク。



 一体どんな方法なんだい?



 ============================================



 少し暗くなり、肌が寒さを覚え始める頃。



 僕たちは、とある家の屋根の上にいた。



 なおなぜか僕がハルト君を抱えている。ショゴスのおかげで結構余裕を持っていられるけどね。



「ほ、ほんとうにやるの...?」

「もちろん」



 そう言って意思を伝えた後、跳ぶ。



 屋根を伝っていくという方法は、確かに考えてなかった。



 だってそもそも、



「おい、誰かあそこを走ってるぞ!!」



 こうなるもん。



 ドタドタと地面で足音を立てつつ追ってくる村の人々。どうやら予想は正しく、この村の人ほぼ全員が洗脳済みらしい。



 当たり前だけど、この予想は最悪の予想だ。心の片隅ではまだ村の5割ほどしか洗脳が済んでいないのではないのかということを考えていた。



 味方というのは基本的にいればいるほどいい。だけど今の状況ではそれを望めなくなってしまう。



 一種の希望がなくなる。そういうことを人間はあまり考えたくないと思うものだ。



 だけどもう求めることはできない。諦めて、僕たちが今やることである図書館への歩みを進めよう。




次回、図書館前騒動

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