表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第七章 狂季愁豪理不
345/402

ちょっとしたほのぼの回

や さ い せ い か つ



「ようやく出て来れるな」



 鍵を閉めた瞬間、そう声が聞こえた。



 肩を見れば手のひらサイズの蜘蛛がそこにいる。



 それだけじゃない。たくさんの人形生物がそこにいた。



「え、ええ!?どこから出てきたの!?」

「...あらあら、可愛い子もいますね」

「手を出してはいけませんよイブ=ツトゥル。我々とは無関係なのですから」

「わかってるわよ、クタニド」



 ...そういえば、最近はみんな外に出ていなかった。



 そもそも神話生物が出てくるまでもなかったからなんだけど、それは結構悪いことをしていたかもしれない。



「それは悪くないわ。あなたはもっと悪いことがあるもの」



 え、なんかありましたか母様。



「今の私に何か至らない点でも?」

「大アリよ...何で異性の前で服を着ていないのかしら?」



 ああ、そういえば確かに。



 下水道通るのに脱いでから着ていない。<インベントリ>からサッと取り出して着替える。



「全く...母は悲しいです。不純異性交遊ですよ、教育に良くありません」



 その見た目で言われましても。



 淫魔の姿で異性との付き合いを怒られるのはなかなかない経験だけどそれはそれとして、僕にいう前に母様も服を着てください。



「なぜ?人間は着る必要があるでしょうが、母は神話生物、着用する必要はありません」



 ...まあ確かに、神話生物に衣服や鎧の概念はないもんね。



 一部の、例えばミ=ゴなどの比較的弱い部類に入る神話生物が特殊な鎧で身を包むことはあるけど、神格レベルの存在はその肉体で十分。



 存在するだけでほとんどの攻撃を防御できてるんだからね。そりゃ着用の義務なんてものはないでしょうよ。



「しかし、後々外に出るのなら着る必要がありましたね。今のうちにやっておけば忘れることもないでしょう」



 そうだね。後々やることを今やったと考えればいいか。



「...なんの話をしてるの?」

「ああ、君にはあまり関係のない話だから安心して」



 グウゥゥ......



 2人同時にお腹が鳴る。



「...とりあえず、私は食糧庫にいってくるよ」

「そこで何をするの?」

「何をするって...食べ物を持ってくるだけだけど」



 そう言うと、母様は途端に顔をしかめた。



「まさか...生で?」

「まあ、そうなるかな。流石に食べるものは選ぶけど...」

「いけません。あなたは、そしてこの子もまだ成長期でしょう。しっかりと調理された栄養価の高いものを食べるべきです」



 パン、と手を叩けば現れる<夜鬼>。って<夜鬼>!?



「はい、あなたは見ないように」

「わわ!」



 危なっ。クタニド様がハルト君に目隠ししなければ今頃どうなっていたか。



 ほんと、今日はミ=ゴがいなくてよかった。



「しかし生で食べると言うほどです、あなたは料理ができないのでしょう。ここは母が一肌脱ぐとしましょう」



 <夜鬼>が持っているエプロンをつける母様。元々やばかったビジュアルをさらにヤバくしていくのは、おそらく無意識なのだろう。



「...ところで、調理場はどこですか?」

「わかった上で言ったのではないのですね...しかし私も知りません」



 僕も。あれ、なかったっけ。確かお茶を入れていたような気がするんだけど。



「軽いお茶なら<魔術>で代用できます。ですが母は料理をしたいのです」



 うーん、キッチンは無いからなあ。そうなると...できない?



「作れば出来るな」

「キッチンを?...良い案です。早速作りましょう」

「ストップストップ」



 一応ここ僕の所有する家じゃ無いんですよ。どちらかというと賃貸なので。



 ちゃんと所有者に話を聞かないと。



「所有者?」

「今呼びましょうか...サオイキュ!」



 指を鳴らす。すると出入り口が開いて、人が入ってくる。



 厳密には人じゃ無いけど。



「はーい、030-19っす...って何すかこの錚々たるメンツは」

「一般人もいるぜ」

「だからこの姿でいるんすよ。いなかったら堂々と姿晒してるっす。わかった上で言ってるんで、あんま突っ込まないでくださいっす」



 ...なんかサオさん、少し大人びたような気がする。たくさんの苦を経験してきたというか。



 それが顕著に表れているのは、深淵と見間違うほど黒い目の隈だけど。



「最近眠れていないんすよ。急遽<銃>を武器にしたんで...」

「ちょっと待て。その話はこの子にしていいのか?」

「...いや、よく無いっすね。さっさと本題に入るっすよ」



 幸いなことにクタニド様が耳も塞いでいるおかげで何もわかっていないだろうけど。



「この部屋に調理台、一応あるっすよ」

「え、あるの?」

「もちろん。じゃなかったらあんたが生き返った時に食べた飯はどこで作ったんすか?」



 あー、確かに。



 クタニド様に生き返らせてもらってすぐ、そんな時にお腹に入れたご飯は確かに調理されたものだった。



「でもそんな大層なものじゃないっす。まな板と包丁、旧式のガスコンロくらいしか無いんすよ」

「それは...適切な環境とは言えません」

「そう言うと思ってました...社長に聞いたんすけど、ここの改造はOKらしいっす」



 あ、いいんだ。って思ったけどそもそもミ=ゴが手術室作ってたね。



「何なら神話生物の皆様が自由に使っていいとも仰ってたっすよ」



 いいのかそれで。その言葉通りだと誰がどんな改造をしても問題ない、って言ってることになるけど。






「...あれ、みんなは?」

「各々、散って行きましたよ。全く、母と同じように節度を持って動くべきです」



 そう言いつつ結構豪華なキッチン作ってますけどね、母様。



 なんか島できてますよ。お高いマンションとかにあるやつじゃんそれ。



「ああそれと、面倒なのでここと<インベントリ>を繋げておきました。そこの扉、入れば<インベントリ>になってます」



 あ、出入り口の隣に扉が増えていると思ったらそういう扉ね。



 ここの倉庫=<インベントリ>になった、っていうのはちょっと便利だねそれ。



「...ちょっと瞬きしただけなんすけどね。いつの間にか慣れ親しんだ元オフィスが居心地良いリビングみたいになってるっすよ」



 瞬きの間があれば神話生物にとっては十分だ。一つ部屋を増設して魔改造しに行くことなんて容易いことだろう。



「...なんの話をしてるの?」

「つまり、僕たちは今から美味しいご飯が食べられるってことだよ。わかった?」

「わ、わかった...」

次回も少しほのぼのしてるかもしれません

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ