表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第七章 狂季愁豪理不
338/402

謎の人形使い戦③ ~なぜとっておきを一番最初に使わないのか~

正解は...

「...相当な手だれだな、お前。私の邪魔をむしろ受け入れてやがる」

「君の邪魔が下手くそだからね」

「クソがっ!!」



 ...こんなものだろうか。いかんせん久しぶりに<魔法陣>を描くから、これが合っているかどうかわからない。



「<魔術>に正解はありませんよ。術式が同じでも使用者によって異なった結果になる、それこそが<魔術>の本質です」



 OK。それじゃあ遠慮なく...



「その前、にっ」

「ぐうっ!?」



 奴を引き離す。これで<詠唱>の時間稼ぎができたはずだ。



 んじゃ今度こそ...って、よく考えたら肉体の仕事だこれ。



「マリアがしても問題はありませんが、<召喚魔術>を扱う貴重な機会です。僭越ながら私が行いましょう...ご笑覧あれ

 。それは夢の中にて全てを見定し神が1柱


 。魔を生み、育て、人に教え、食べさせる悪夢の母


 。眷属と共に来りて、誘惑と祝福を授けよ、旧き或いは支配者、さもなくば外なる命よ


 来なさい、イブ=ツトゥル」






 ()()は、まるで幻かのように現れた。



  <ネクロノミコン>891ページ第4項における、<夜鬼>の母たる存在は、しかし自分の想像していた姿とは全くの別物として現れた。



 裸なのは言わずもがな。そして裸と形容できると言うことはすなわち、人の姿をして現れた。



 おそらくそれは<魔力解放>後の姿なのだろう。今まで<召喚魔術>に応じてくれた神話生物のほとんどはそうだった...しかし例外は常に存在する。決めつけるのは良くない。



 金髪ショート、ぼっきゅっぼんのスタイルのいい女性器の付いた化身、しかしそれは人と形容するには少し余分なものが付属している。



 羽。普通羽というのは2種類あり、コウモリのような膜のある羽と鳥のような羽毛のある羽根があるが、この存在は前者の羽を持っていた。



 付け加えるなら、そばに在る<夜鬼>と思しき神話生物の羽と一致する。それよりも一回り大きいが。



 また詳しい理由は不明だが、尾骨のあたりから尻尾が生えている。のだが...



 その先端はハートマーク。理由は定かではない、



 と思いきや、それを確認した途端に尾の接続部から黒い艶々とした布が広がっていく。



 それは陰部を強調するかのような卑しいものに仕立てられていく...いつの間にやら、小さな角も生えた。



 リップとネイルも欠かさない。いつの間にやら、イヤリングもつけている。



 ...もはやここまでわかりやすくなると誰だってわかるだろう。



 間違いなく、その姿は淫魔(サキュバス)であった。



 ...言いたいことはたくさんあるけど、まあ、うん。



 とてもいい。目の保養どころか毒そのものというか。



 本当にどうしよう。視線が1点に集中してしまうぞこれ。



「...あなたが、呼んだの?」

「半分正しい。僕は、いや私は手助けをしたまで。本命は、私の中だ」

「ふーん...」



 近づいてくる。もちろんだが虜にされている僕は避けることができない。



 ピトッ



 頭を触られる。本当なら何も起こらないだろう、なぜなら肉体は完全にイゴーロナクなのだから。



 でも。神格相手なら話が変わってしまいっ♡♡



「...なるほどね」



 あっ♡あっ♡あっ♡



 これっ♡ダメっ♡



 たえられないっ♡



「だいたい見えてきた...面倒なことに巻き込まれたかな」



 っあ、はあ、はあ、はあ...



 一瞬だったけど、永遠だった...ウス=異本で絞られている男ってこんな感覚なのだろうか...



 天国って、本当に実在するんだなあ...



「馬鹿らしいことを言っていないで、少しは状況確認をしなさい」



 あっはい。すみませんでした。



 えっと、まずはそうですね。



 ゴホン...ようこそおいで下さいました、イブ=ツトゥル様。



「ええ...まさかこんな姿で顕現するとは思っていなかったけど」

「こうして会うのは初めてか。実在は知っていたが...」

「神格同士が会うのは珍しいことよ、イゴーロナク...ここでは、そうでもないのかもしれないけどね」



 さも当然のように記憶を読まれていると。



 となれば、なぜ僕があなた様を召喚することになったかは...



「わかるわ。本当は手なんて下したくないけど....」



 背を向けるイブ=ツトゥル様。おそらく視線の先は今もなお戦うショゴスと、その相手だろう。



「あれと」



 さらに視線を動かせば、そこにいるのは<ダンジョンボス>。



「っ...」

「あれね」

「おい<夢の守護者>!!目の前のやつじゃなくて、あの女から先に殺れ!!」



 命令は聞き入れられたのだろう。ショゴスをスルーし鎧はこちらに向かってくる。



「ショゴス!そいつは無視していい!こっちに戻ってこい!...さて、お手なみ拝見としましょうか」

「あら、いつ母が力を見せると?」



 指を弾けば、鎧の方に<夜鬼>が向かう。そばにいたのは2体で、うち1体が向かう。



 そしてもう一体は、イブ=ツトゥル様の椅子となった。ちょっと羨ましい。



「...」

「■■■■!!」



 2体が激しくぶつかり合う。剣閃と空を切る音が火花をちらす。



 ただ、その勝負はやはり<夜鬼>有利だった。理由は単純、空を飛んでいるから。



 どうやら遠距離攻撃の類がないらしく、大きな鎌で攻撃することを余儀なくされているらしい。おかげで、比較的スピードタイプである<夜鬼>がヒット&アウェイすることでどんどん傷を増やしている。



 ...普通なら、ここで違和感を覚える。神話生物はこの世界だと弱体化する。バランス調整のためだ。



 そして<夜鬼>もまたその対象であり、<勇者>との戦いでは暗闇と群れという2つのアドバンテージがあってこその戦いだった。



 そして今、<ダンジョンボス>と<夜鬼>が対等どころかもうそろそろ終わるくらいには有利な勝負をしている。



 なぜなのか。それは単純明快、この<夜鬼>が特別製だからだ。



 イブ=ツトゥル様は<夜鬼>の母とされる神話生物。もちろんあの<夜鬼>もイブ=ツトゥル様が産んだ個体だろう。



 であればもちろん、普通の<夜鬼>、この場合は野生の個体を意味するが、それよりも数段強いことは自明の理だ。なんたって、イブ=ツトゥル様の血を引いているのだから。



「オオオ...」



 戦闘時間およそ20秒。なんかあっけなく終わったな。



「な...まさか、そんな...あり」

「えない?そんなわけないでしょうに...」



 イブ=ツトゥル様が立ち上がれば、すぐさま椅子となっていた<夜鬼>が動き、<ダンジョンボス>の前へといく。



「な、お、おい離せ!やめろ!」



 <夜鬼>はそのままこちらに奴を連れてきた。



「これで...()()ができるね?」

「くう...お前たちに話すことなんか、1つも」

「ああ喋らなくていい。勝手に見るから」

「ひぎっ!?」



 爪を突き立て、中を見る...うーん、ほとんど記憶はないな。



「うーん、どうやら何かに記憶を破壊されているみたいだ」

「...残っているものもあるわ。これを見なさい」



 あ、ありがとうございます。



「いいのよ。あなたも母の子供なのですから」



 え?



 ============================================



 お前がなぜ呼ばれたか、わかるな。



「はい、■■■■■■様」



 では行け。我が命、死ぬ気で果たせ。



「了解しました、■■■■■■様」



 ============================================



 発話でだいたい6文字ね。おけい。



「徹底的に破壊し尽くされています...母でもわからないとは」

「不思議か?ここでは良くあることだ」



 えっと、今までのことを整理してみよう。



 人形はおそらく<ダンジョンボス>のものだけど...となればそれ以外だ。



 ヒントは2つ。わざわざログハウスじみたそれであることと、謎の能力。



 人形なのに肉とか骨とか、そのような幻覚又はホログラムが道中の人形にはあった。



 だけど、このボス戦ではそれらが登場することはなかった。



 ともなれば...答えは絞られる。



「...面白い能力ね」

「これが生まれ持った才能というのだから、いやはや恐ろしい」

「どこが?...別に広まるのならいいじゃない」

「マリアの場合、その前提知識からなる対策もまた講じる。無論全てが正しいとは限らないが...」



 ページをめくれば、自ずと答えは見つかる。



 ...あとはその答えが正しいか、確かめるだけだ。



 ショゴス、喰らえ。



「わかりました、マスター」



 <ダンジョンボス>は完全に抵抗する力を失っている。食べるのは容易なことだった。



 ...さてショゴス、検出してほしいことがあるのだけど。



「なんでしょう」



 匂い。その肉に匂いが残っていないかどうかを。



 具体的には、濃ければあらゆる臭いをその匂いに変えてしまうような、とんでもなく強い匂いを。



 近づいただけじゃわからなかった、おそらく洗浄されているのだろう。



 だけど、あれだけ強い匂いだ。おそらく肉体になら微弱であろうと残るはず...



「さて、当たっているかな?」

「当たっているわ...私の目がそう言ってる」



 だそうだが、どうだった?



「...大当たりです。とても強い花の匂い成分が残っています」



 はいビンゴ。

イブ=ツトゥルは、ドリームランドという夢の中の世界に住むと言われる、夜鬼の母たる存在です。



旧支配者とも外神とも言われていますが、この小説ではなぜ旧神との繋がりの可能性を謳っているのか?



それは、彼女が夜鬼の母親であり、ノーデンスという旧神の使い魔が夜鬼だからです。そりゃ疑うよね。



ちなみにその考察に拍車をかける素材としては、ノーデンスは旧神の中での主神、トップの存在であるということが挙げられます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ