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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第七章 狂季愁豪理不
334/402

実質NTR

なんか前回の2倍近くあります。



ご容赦を。

 しかし、待ち侘びていた、というのはどういうことです?イゴーロナク様。



 今、僕の体はちゃんと真っ直ぐ歩いている。長い長い廊下をね。



 何が起こっているのか...何となく想像つきますけど、一応説明して欲しいです。



「呼び捨てで構いません。あなた、いや(マリア)(イゴーロナク)。この存在は、およそ同列のものとなりましたので」



 はあ。なら遠慮なく。



 ...まさかとは思うけど、あなたが引き金で?



「ええ。そうです」



 まじか...いや、別に嫌ではないんだけど...



 とりあえず、一つ聞きたい。ショゴスは?



「奴は肉体意識共々問題なく生きていますよ、封印はしています。が、肉体の僕は私へと成り替わりました」



 でしょうね。さっきから声が違うんだもん。



「...過去の、前世のあなたに対する醜い仕打ち。それが発端となり生まれた、意識の乖離」



 やってくる人形、もう拳の一つで砕いてるね。



 今までの僕だったら、そもそもこんなことできないはずだ。



「およそ20年は付き添った仲です。悲しみでも覚えましたか?」



 え、いや全く。



「ほう」



 むしろ羨ましいと思いますけどね、僕は。



 肉体の意識と精神の意識が混在する状況が必要だったのは前世であって、過去ではない。



 いつか、統合しなきゃいけなかった。でもそれは、片方の意識が消えることを意味する。



「清々したと?」



 違います。僕は羨ましいんですよ。



 こんな状況、イゴーロナクになって(?)からいつかはなると思ってた。



 それくらいは僕の知識が教えてくれている。形がどうあれ、イゴーロナクの性質は変わらないのだから、どこかのタイミングで乗っ取られることくらいはね。



 でもそれがどっちになるかはわからない。正直、肉体面はかなり手厚いサポートをメェーちゃんに貰ってるから、精神である僕が乗っ取られると思ってたんだけど。



「...あの時、マリアが<魔力解放>したタイミングで病を抑え込んだ甲斐がありました。マリアの体内に巣食うショゴスすら気づかないようにするのは少々骨が折れましたが、そのおかげで肉体が弱る隙を見出すことができた」



 念の為聞いておきますか。なぜそんなことまでして肉体を?



 精神の僕にはプロテクトがない。肉体ほど頑丈じゃないどころか、恐らく触れただけで乗っ取れるでしょ。



「あなたは肉体の操作権がない。そんな状態では、裏切られたとしても抑える方法がないでしょう?」



 裏切りませんけどね、僕。



「信仰するにもかかわらず信用していない。そんな信者を信用しますか?」



 ...



「そういうことです」



 ...一応<魔力>の操作はこっち担当なんですけどね。



「みたいですね。前回の<魔力解放>と違い、魔法が使えない。私ごと自爆してみますか?」



 いやいや。むしろ僕はとても嬉しい。肉体が頑丈になったことでより生きやすくなった。



「それは重畳...しかしそれでも決定権は君にあるでしょう」



 いいんですか?



「ええ。何かあったときは私の独断で動く場合もありますが、通常時は変わらず"マリア"として動きます。そうなれば、あなたが代わりに動いたほうが都合がいい」



 可能な限りバレないよう立ち回るのは変わらないんですね。



「...一体何があったのか知りませんが、私のいた時空では、とあるタイミングから誰も快楽を求めないようになった」



 急な自分語り...それで、どうなったんですか?



 僕の記憶が正しければ、イゴーロナクという神格は堕落の神だ。



 もちろん知れば乗っ取られる罠を仕掛けてはいるが、今のあなたのように知識を求めるようなことはほとんどなかったはず。



「調べたんですよ。なぜ快楽を求めなくなったのか...単刀直入に言えば、セ◯◯スが生殖行為になったのです」



 おおう久々のP音。



 でも、それって何も変わっていないのでは?



「変わっているのです!生殖行為でしかない理由は単純で、総人口が減ったから...恐らくその地球では神々によって人間の殺戮が行われていたのでしょう。私の知らない間にね」



 はあ。で、それが何で知識を求める結果に?



「堕落、というのは一口に言っても数多くあります。ただの万引きから始まるそれは、しかし数多くの人間がいたからこそ行えるもの。やり過ぎたものは、捕まるあるいは体力を失い、そして死に至る」



 やる、って2重の意味なのね。



「マリア、あなたも知っているでしょう。私は私を知り得た者に感染する。そうして意識を長らえさせる。肉体を生成する」



 感染したものは、こぞって堕落的な人生を送る...



「感染は、何も本だけで行われるわけではありません。むしろ最も信者を増やす...マリアの言葉に言い換えるとするなら、生きるための道を作る方法が、口頭による情報伝達です」



 堕落っていうとSNSとかネットゲームによくあるコメントとかの情報伝達はできなかったんですか?



「良くも悪くも、情報世界ということです。生物として、進化を忘れた私は文字を足がかりにすることができなかった」



 それが堕落ですからね。それそのものであるあなたも堕落しきっていたと。



「しかしもう一つ...道があります。セ◯◯スは生殖行為、すなわちその後に子供ができる。その子供になら、ほぼ100%感染できる」



 確かに。親になれば感染は容易だ。



 日常的に喋るんだもん。むしろ難しい理由を探せない。



「そう...しかし、セ◯◯スが堕落的行為ではなく、ただの生殖行為になってしまった。私の意思で人間の子供を作れなくなった」



 やろうと思えばできるのでは?それこそ魔術とかで...



「できるでしょうね。ですが堕落しきった私はそれを忘れた。人間社会に馴染み過ぎた結果、人間の悪いところも染み付いてしまったのです」



 堕落って基本的に悪いことだと思うっていうのは一旦置いといて。



 じゃあ魔術を忘れて、子供が、まあ言い方悪いけど生成できなくなって。



「人類は宇宙へと進出した。しかし限りなく、確実に生きるために、人々は隔離を余儀なくされた」



 会話できる環境も無くなって...



 詰みだね。その状況。



「その通り。最悪<グラーキの黙示録>がありますが...私の肉体はそれを理解した時点で、とうに朽ち果てていた」



 待って。神話生物なのに肉体が朽ち果てた?



 老化くらいはあり得るだろうと思ったけど、まさか本当に?



「自然死ではありません...恐らくは、名も知らない旧き神が私を殺したのでしょう。すでに滅んだ地球では、私の力などないに等しいゆえにね」



 まじか、確かに旧神の連中は何気に戦闘力高めの奴らが多いからできなくもないけど...



 よくよく考えてみれば、旧支配者には仲間意識とかないもんね。外神も同じで、人間がそう括っているだけだ。



 だから守られることもなく、守ったところで意味のない肉体は放置された、ってことか。



「流石に焦りましたよ。保険があるとはいえ、この状況は詰み。私には消滅が待っているはずでした」

「だから...だから知識を得た...そうですね、イゴーロナク様」



 お、ショゴス。おかえり。



 なんかすごい状況になってるよ。君が頑張ってる間にね。



「あなたも呼び捨てで結構。私が、この肉体に住まわせてもらうのですから、それで問題ありません」

「はあ...」



 なんかすごい下手に出るね。



 神なんだし、もっと威厳があってもいいものだけど。



「...あのとき、私は知ったのですよ。神というのは、いや私は、誰かが知っているからこそ脅威なのだと。神話生物足り得るのだとね」



 まあどんどん数が増えるのが1番の厄介ポイントだしね。



 身体能力は絶対に人間が勝つことができない、知識も、精神力も。それが神話生物であり、全ての神話生物が持つ脅威。



 差別化はそれ以外の要素だ。



「ですから、私はあなたたちを同格とみなす。神の一個体として、私はあなたたち下等生物と何ら変わらない力しか持たないと」

「威厳のいの時も感じられませんね...」



 うん。これが神の姿か、って感じだ。



「何を言おうと結構。マリア、あなたが生きるのに必死なのと同じように...私も死の直前に思い知っただけです」

「死んだんですか」

「最悪は回避できました。それこそ、こうして知識を求めた結果、ね」



 皮肉なもんだ。チャラけた不良が急にガリ勉になってしまって、そのおかげで生きている。



 しかもそのおかげで、僕たちは生かされているんだ。



「何度となく言いますが、生かされているのは私の方です。特にこの状況に関しては、あなたの自滅を私は止められない」



 だから、対等。恐らくは本当に特別待遇。



「はい。あなたのような生物を扱うには、そうしなければいけないのです」



 確かにね。ある意味で、僕のそれはあまりにも奇妙な関係だった。



「肉体側から精神へ干渉すればよかったのでは?」



 お、いいところに目をつけたね。ショゴス。



 でもそれは多分無理だ。



「え?」

「マリアの言う通りです...私はたとえ分裂しようと同一の個体。本来イレギュラーである2重人格と言うのは、同じ情報をコピーして取っておくことに他ならない。簡単に言えば、あまりにも無駄な行為だ」



 そういうこと。僕はやらなきゃいけなかったから2重人格なわけで、普通はいらないんだよ。2つ目の人格なんてね。



 だから僕らは特別なんだ。互いに潰し合える状況で共存していたからこそ、この不安定な関係を壊せないんだ。



「なるほど...」

「ですからまあ、これからよろしくお願いしますよ。マリア?そしてショゴス?」



 ええ、こちらこそよろしくお願いします。イゴーロナク。



「よろしくお願いします」

「さて。話し合いは終わりです。そろそろ終点も...見えてきましたね」



 あ、人前では一人称を僕にしてくださいね。



 バレるとまずいですから。一部神格は見ただけでわかるでしょうけど。



 あと口調と、声質も。元の僕と同じようにしてくださいよ。



「注文が多いですね」

「しかしショゴス、覚えておきなさい。偽造とはそういうものです......これでいいでしょ?」



 おお完璧だ、イゴーロナク。

ある意味で、成り替わりのスペシャリストですからね。



お茶の子さいさいです。

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