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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第七章 狂季愁豪理不
326/402

食べ物6日、水3日、空気3分

新年あけましておめでとうございます。



三が日を過ぎまして、遅れましたが投稿再開です。

 10年分の食料は、何も神話生物が分け合って均等に食べたわけではない。



 人間がそうであるように、彼らもまた食べる量に差がある。



 例えばアイホート様はあまり食べなかった。もちろん人間が食べる量よりは多いけど、他の神話生物と比べると少ない。



 そもそもサイズの小さい蜘蛛だからね。動くのに必要なエネルギーは少なくなる。最も、アイホート様の雛達を含めた場合はかなり多いけど。



 ナグとイェブもそうだった。「口に合わない」「エナジーなんとか?の方がうまかったぜ」と言って早々に<インベントリ>に帰ったけど、まさかほぼ食べないとは思わなかった。



 メェーちゃん曰く、



「あいつらはカ〇〇ーメ〇〇の食べ過ぎだね」



 らしい。食べなきゃ生きていけないけど、健康に気を遣うことがないのはやはり神話生物らしい。



 いやもしかすると神話生物でもなんとかならない病気とかあるかもだけど、閑話休題。



 やはりというかなんというか、一番食べたのはメェーちゃん。さすがの食いっぷりで、全体の約半分は持っていってたと思う。



 そして予想外だったのは



「空の旅っていうのももなかなか悪くないね」

「<飛行魔法>は皆こぞって研究してるからねえ。誰でもこの感覚が味わえるのもお、そう遠くないかもよお?」



 今僕たちが乗っているドラゴン、もといショゴス。



 メェーちゃんが食べなかった分のさらに半分。どうも僕の再生にかなりエネルギーを使うらしい。



「マスターはよく重体と言える怪我になりますから、こうしてできる時にエネルギーを貯めておかないと」

「あはは...」



 何も反論できなかった自分がさっきいた。



「最初からこうすれば良かったのでは?」

「無茶を言わないでください。私も神話生物の端くれですが、その実あなた方と同程度の強さしか持っていません。故に、この姿になるのもそれ相応のエネルギーを消耗します」

「どれくらい使うの?」

「そうですね、人間30人分くらいは」



 全然わからない例えだけど、かなりエネルギーを消耗することはわかった。



「なので毎回は使えません。基本的には歩いてください」

「持ち運びできる馬車を買うのもありだな」



 それ相応の移動手段を考えることも、今後は必要になりそうだね。



「さて...街が見えてきました」

「え?」



 もう見えるのか。どれどれ...



 ...



 ...何も見えないけども。



「お、あるな。そしたらここらへんで降りないと迎撃されるだろう」

「では地表に近づきます」



 アンジェリアさんには見えるらしい。



「うっそ、全然見えない」

「私もお」



 お姉ちゃんとエリカさんは見えないと。



「ギリギリ...遠くの方に霞んで見えますけど、あれですか?」

「ああ。このあたりはまだ<生存不可区域>のはずだが、まだ魔獣には襲われていないようだな」



 リーシャとキーゴイは見えるんだ。2人ともすごいな。



「マスターも私がいれば見えますよ」

「身体機能はショゴス依存かあ」



 ショゴスに頼り切りなのはまずいけど、そもそも有能なショゴスが悪いとは思う。



 まだまだ弱い僕を補ってくれるわけだからね。これからもじゃんじゃん頼っていこう。



 ...ドシン!!



 木々が揺れて音が鳴り響く。木の中にいたのか鳥型の魔獣が飛んでいく様が見て取れるけど、ドラゴンが近づいてきた時点で逃げなかったのはなんでだろう。



「ギギャース!」



 いや、普通に戻ってきて襲ってくるんだ。



「一応街道沿いに降りましたが、それでもいるものはいますね」

「<生存不可区域>だからな。どこだろうが魔獣は湧く。ほっ」



 すぐに降りて臨戦体制、をとらない。



 まずは全員降りてからだ。



「よっと」

「...これで全員ですね」



 ショゴスが元に戻って、左腕に。



 体力はおかげさまで戻ってる。やっぱり僕もお腹減ってたみたいで、6歳児にあるまじき量を食べてしまった。おそらく成人男性と同等の量ではないだろうか。






 そのおかげもあってかショゴスが戻ってすぐ、前動作抜きで走り出すことも容易だった。



「うおおお!やっぱりみんな速ーい!」

「ちゃんと追いつけてるからマリアも速いですよ!」

「僕が速いのはショゴスのおかげだから!」



 逃げる。そう当たり前のように逃げる。



 魔獣は1匹、いや3匹。こちらは神話生物をカウントしなくても6人。



 戦力差はある。が逃げる。



「ってこれ大丈夫!?どんどん集まってくるけど!」

「大丈夫だ!そもそもこれが目的だからな!」

「メェー!!(応援)」



 頭の上の可愛いメェーちゃんの声援によってさらに頑張れるぜ。



 まあ逃げるのも無理はない。だってここ、戦闘するたびに集まるもん。



 僕たちが空の上を移動していたのは、魔獣との戦闘を避けるため。



 すでに15はいるそいつらは、戦おうものならその音を聞きつけてどんどん集まってくる。



 草むらの上を爆走しているだけで集まってくるのだ。金属をぶつけ合ったらもっと寄ってくる。



 神話生物がいればなんとでもなるけどね、正直ジリ貧になってもおかしくはない。



「やはりすごい湧き方ですね。同じ場所ではないですが、1秒の間に30体は湧いてますよ」



 結構古いゲームなら1フレームに1体に相当する速度。そりゃどれだけ殲滅してもジリ貧になるよね。



 そしてそれが<ダンジョン>から帰ってきてすぐから起こるのだから、それは空に逃げるのも納得というものだろう。



「これ!いつまで逃げたらいいの!」

「街の入り口に着くまでだ!」

「遠くない!?」

「諦めろ!」



 諸行無常。でもやらなきゃ死ぬので必死に逃げる。



「くそ、少し数が多いな。空にいる間にも湧いてたか?」

「可能性は高いかもお!<極大爆発(エクスプロージョン)>!」



 ドゴォォォォ



 お姉ちゃんが走りつつ後ろに広範囲<爆属性>魔法を使って...



 って誰も倒れていない!?



「ちょっと待て!<極大爆発>は(ジン)相当だぞ!?なぜ死なない!?」

「<生存不可区域>を思ったより舐めていたようだな」



 そのようで。



 しかも...こっちの攻撃を見てからというもの、だんだん足が速くなってきているような気がする。



 もしかして、警戒も含めて速度を落として走ってた?そんで攻撃が痛くなかったからゴリ押しでも平気じゃないかと思い、速度を上げた?



 キーゴイだけが、というわけでもないらしい。知能は全体的に高めか。



「チッ、このままだと追いつかれるな。一段階ギアを上げるぞ!」



 だんだんと上がっている魔獣どもの速度は、すでに今の僕たちが出している速度を上回っている。



 ジリ貧を打破するためには速度を上げる必要があるでしょう。



 となると問題は、



「マリア、できそうですか!」



 お荷物である僕が一体どれだけ速度を出せるか、だ。



 どれだけの速度が想定なのかわからない以上なんとも言えないけど...



 ...今の僕が出せる最高速度は、<魔力撃>によるブースト。



 幸いなことに頭の上にいるメェーちゃんのおかげで<魔力>は自動的に回復するから、息切れはまずない。



 だから必要なことは、今の僕がそれに耐えられるか。



「どうでしょうショゴスさん」

「無問題です」

「OKいけるよ!」



 あれはイゴーロナク様だからこそできたところはあるけど、その経験はしっかり肉体が覚えている。



「本当ですか!?」

「もちろん!あの時の速度でいいなら出せるよ!ちゃんとやり方は覚えているからね!」



 ならよし。<魔力>を足に送り続け、<魔力撃>の準備



「行くぞ!皆遅れるなよ!」



 ブン!



 速っ、空気震えた、って違う違う違う。



 すぐに<魔力撃>を解放する。



「よっ」



 ドンッ、ドンッ、と一定間隔で解放して走る。いや低空を駆けているようにも見えるけど、まあいいや。



 スタートダッシュは遅れたけど、その速度はやはり燃費に見合ってるもので、みるみる追いついていく。



 もうね、お姉ちゃんが驚いているものね。本気で逃げてる以上速度が速すぎるので喋ったら舌噛むから喋らないけど。



「いやあ、これいつでもできるようになりたいな」



 ダメでしょ。今できるのはメェーちゃんのスキルあってこそ。



 MPが枯渇したら何もできない通常の僕の場合、やろうと思ったら本気で自分の<魔力>を使わずに魔法を使えるようになるしかない。



「真面目に学ぶかあ」



 にしても、なんでキーゴイとアンジェリアさんに一向に追いつけないんだろう...

本年度も「冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる」を、よろしくお願いします。

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