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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第七章 狂季愁豪理不
325/402

オアシスあるいはピラミッド

同時上映



圧倒的食費

「それじゃ、私たちはこいつから素材剥ぐから」

「食料にはならないだろうが...大概見たことのない魔獣の素材は高く売れるからな」

「アンジェリアさんとエリカあ、よろしくう」



 素材回収をエリカさんとアンジェリアさんに頼み、僕たちは宝物庫へ行く。



 分担していないと時間が足りなくなるからね。<ダンジョンボス>がいなくなった<ダンジョン>に待っているのは崩壊だけだもの。



「それにしてもすごかった。まさか<ダンジョンボス>をあんなに早く倒してしまうなんて」



 もちろん神話生物の戦いと比べたら遅いのだろうけど...それは比べる対象が違う。



 少なくとも僕は<勇者>が>コボルド・オブ・キングウォーリア<にめちゃくちゃ苦戦していたことを覚えている。後ろに動くことができない<制限>あったことは重要だろうけど、だとしても<勇者>でそれなんだからお姉ちゃんたちがいかに強いかわかる。



「マリアの神話生物には勝てないですけど、そこらへんの周回勢には負けないくらいは強いですから」

「私は慣れだねえ。<ダンジョン>ならたくさん落としてきたからあ」



 そういえばお姉ちゃんは問題児だった。



 周回するような<ダンジョン>だとしても関係なく、見境なく攻略していく厄介な人たち。こうやって極限状態になると理解できるけど、この世界で比較的安定して生きることができるって相当すごいことなんだよね。



 どうしても死の危険と隣り合わせなのはしょうがないけど、それを可能な限り少なくすることができるというのは生きるのにかなり大事なこと。



 できるのなら僕もそういう比較的穏やかな生活を送りたいけど...



 まあ、今は無理だよね。そもそも<魔王>だし。命狙われるだろうし。



「着いたぞ。ここは本当に広いな」

「君たちのあのステージくらいがちょうどいいよね」



 と、歩いていたらいつの間にやら着いたらしい。



 キーゴイの言う通り、部屋が100mほどの<ダンジョンボス>に合わせて造られているためかかなり広い都合上、入り口近くで戦ってた僕たちから宝物庫まではまずまずの距離があった。



 と言っても時間がかかった訳じゃない。みんなは強いけど、僕も強くなってるからね。足だって速くなってる。



 若干追いつけなかったけど、多分前世の地球にいたマラソン選手と同じくらいの歩行速度になってると思う。やっぱり生物って生きるためなら結構なんでもできるもんだね。



「開くぞ」

「頼んだよお」

「食べ物が中にありますように...」



 ギイィィィ



 古めかしい音と共に開いた扉。



 そしてその先には...






「こ、これは...」



 まず出てくる感想は、整頓されているということ。



 今までの宝物庫は山のように金貨やら宝やらが置かれているだけだったのに対して、ここは棚やら箱やらがあってその中に収納されている。



 そしてもう一つ、重要なことがある。



「全部食べ物です!」

「こんな奇跡もあるんだねえ」



 文字通り、ここにあるものは全て食べ物だけ。棚には瓶とその中に液体が、箱は<魔道具>で保存しやすくなる<保存(フリドラ)>という魔法によって果物や肉が大量に残されていた。



「ほう、これは珍しい。金銀財宝があると思ったが、違ったか」

「アンジェリアさん!おかえりなさい」

「私も帰ってきたよー。いやあ、巨大でなかなか時間がかかったよ」



 5分と経ってないけどね。僕はそれがどれくらい早いとか遅いとかわかんないけど、できない自分からしたらまず早いよね。



「しかし、これだけ食料があれば10年は問題なく耐えることができるだろうが、なぜこんなところにある?」

「確かに」



 ここは<ダンジョン>の中の、それも宝物庫。



 <ダンジョン>内に点在する宝箱から出てくるのならまだしも、宝物庫から、それも大量に出てくるというのは何かおかしいような気もする。



「皆、ちょっときてください」

「リーシャあ、どうかしたあ?」



 呼ばれたので行ってみると、リーシャは本を読んでいた。



 棚にあったのかな。



「見てください、これ誰かの記述ですよ」



 パラパラと本が捲られていく。



 全体的に古いようなこの本に書かれている内容は...うーん、僕はわからないか。



 知能足りてないっぽい。



「...誰か読めるやついるか?」

「僕は無理だね」

「私も。あんまり言語は勉強してなかったからかな」

「全然わからないかなあ。古い言葉だなあ、っていうことくらいしかあ」

「同じくです。見つけたのに読めなかったので、皆を呼んだんです」



 わあ、誰も読めない



「はあ。なぜ人間であるお前らより俺の方が読めるんだ?」

「むしろなんで読めるの?」

「本を読むのが日課だったからな。読むことに関しては言語学者と同等と自負している」

「じゃあ絶対勝てないよお」



 訳じゃなかった。キーゴイのおかげでこれ自体は解読できそうだ。



「そういえば君、自力で深きものの技術とか使ってたね」

「ああ。機会が多かったのも言葉をよく理解できた理由でもある...さて、この本の内容だが」



 もう読んだんだ。あ、でもある程度読めば大体の理由とかは理解できるか。



「この本の著者はとある富豪だ。名前は意味がないので割愛するが、どうやら滅びの予言とやらを受けて、それから生き延びるための手段としてこの<ダンジョン>を造ったとある」



 へえ、そんな富豪が。



 ということはこの<ダンジョン>、人造かつ意図的なやつ?



「攻略してはいけなかったか?」

「...いや、問題ない。これ以外にも念の為いくつか造ってるとあるからな」

「じゃあ遠慮なく食料が得られるねえ。これで安全に街に向かえるよお」



 ============================================



 ...なんというか。うん。



「ごめんなさい」

「マリアが謝ることじゃないよお。ちょっとメェーちゃんたちのことを見誤ってただけでえ」



 ここに辿り着いてすでに30分。



 少し<ダンジョン>も震えてきてそろそろ崩れて無くなるかといったところだけど、すでに宝物庫の中に食料はない。



 なんとか1ヶ月分は確保したけど...それ以外は全部神話生物のお腹の中だ。



「ふう、久しぶりに食ったぞ。一体どれだけ待たされたのやら」

「すみませんアイホート様」

「謝ることはないぞマリア。お前が食糧を手に入れるのに苦労したのは知っているからな」



 そりゃそうだよね。みんなお腹減ってるからさっき動けなかったんだよ。



 食べれる時に食べなきゃ、ね。



「...すごいな、神話生物は。全員私以上か」

「どうしてこうなった?」

「たくさん召喚してたらね。こうなってた」



 他意はない。本当に。



 正直なんで召喚できるのか気になるけど、まあ聞かないよね。聞いて死んだら本末転倒だもん。



 いや、でも殺されることが確定ならあえて聞くという手も...



「やめてくださいね?」

「流石にわかってるよ」



 今の目的はリーシャをシウズ王国王都に連れ帰ること。それを蔑ろにするのはいけないことだ。



 まともな教育受けてないけど、それくらいはまあ。



「それにしてもすごい食いっぷりだな。食費とかはどうなってるんだ?」

「もちろん高くついてますよ。今まで<ダンジョン>クリアとか<クエスト>クリアで得たお金は全てメェーちゃんたちのお腹の中に消えてますから」

「メェ〜」

「おかげでそれ以外まともに買ったこともないです。服すらも必要最低限だけなので、今着てるこの奴隷服しかないんです」

「街に着いたら買ってあげるからねえ」

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