対ヌトス③ 興味を引けるものであればなんでも
ちょいと遅れましたが今度は前と同じくらい。
キリキリキリ
聞いたことのない音を発しつつ、傷ついたそれは治っていく。いや直っていく。
俺たちの[再生]とはまた違った肉体修復。それを見れば、明らかにその肉体が生命を逸脱していることくらいはわかる。
「<岩斬刃>」
「<氷槍>」
また違った属性で攻撃。
しかし傷はつかない。
「概ね予想通りかな。なかなか骨が折れる作業だったが、<ドラゴンの鱗>を再現して正解だった」
物理及び<魔法属性>もほぼ全て効かない。唯一<爆属性>は少し効く、か。
「しかしどうする?この堅牢な壁を突破すると豪語したのは君だが」
「<爆斬>」
切りつけた傷がさらに爆発し広がることで重傷を与える<魔技>。
本来魔獣相手に使用すると得られる素材が飛んでいき取得できなくなるが...
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>الباحث القديم مجنون<
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「...やはり世界は広い。故に研究しがいがある」
ある程度は、ヌトスに有効らしい。
内側から爆発するこれにより、かなり傷が広がった。
だがそれもすぐに修復されるだろう。
「俺たちが何もしなければな」
「いっくぜえええ!!<完全連携>!」
「ほう...」
広がった傷跡に、さらに傷がついていく。
「確か攻撃した場所に再度攻撃を発生させる<魔技>だったか。それならこの体の五感に反応することはない」
ヌトスの言う通り、肉体は硬化をせず、ひたすらに傷が増していく。
「でもそれを突破できないわけじゃない。そもそもこの硬化は永続でできるしねえ」
そうヌトスが言った時、すでに俺は後ろに回っていた。
どうせ突破されるのは目に見えていること、俺たちはその次を考えなければ勝つことはできない。
「で?この状況はどうやって」
「<爆撃><派生:爆撃><派生:派生:爆撃>」
まさか<魔技>である<派生>を使うとは思わなかったが。
しかし傷口ちょうどで行われる中規模の爆発にそう簡単に耐えるわけではないらしい。
「てて...やるね君t」
「今!」
「<派生:派生:派生:煙幕>」
だがもちろん耐えるであろうこともわかっている。
部屋中に広がっていく煙。その中に紛れることで位置の把握を困難にする。
「これくらいなら...いや、これは」
「<派生:派生:派生:派生:鏡乱>」
「三半規管を狂わせる、か。なるほどねえ」
通常の生物ならまず間違いなくこちらを見失うだろう魔法のコンボ。
そう、通常なら。
「でもわかるよ?微細な音とか、あと君たちの考えていることがどこにいるのかとかでね」
<銃>を撃たれる、が姿が見えないとなると狙いはつけづらいのだろう。
「...もうちょっと練習すればよかったな」
3発、そして4発。おそらく一度に6発が限界であり再装填をしてなお5秒も経たずに放たれる弾。
それはほとんどこちらを捉えることはなかった。
「かもね。でもこれだけ見えれば君たちにも当たるよ?」
時間経過で晴れてきた煙の隙間、そこから覗く銃口。
2発、剣で受ける。見えているし近かったこともあるが、意外と盾も有効か。
「じゃあこっちは...」
当たらないのだからもう一方でまた撃ってくる。
「させねえよ!」
大きな声と共にヌトスに向かっていくマイゲス。
その声に反応できるヌトスは、否応なしに俺に向けていた<銃>をマイゲスに向け2発撃つ。
「<完全連携>」
再度不可視の攻撃がヌトスに降りかかり...
「これくらいは」
「「そこだ!!」」
当たり前のように全身が硬化したヌトス。
それによって生じた一瞬の隙に、俺たちは同時に<銃>に攻撃を行う。
互いに違う<銃>を狙った攻撃は確かにそれを捉え、破壊した。
「へえ!」
「シート!!」
「わかっています!<完全射出>」
遠距離攻撃手段を失った奴に、もうシートを止める手段はない。
放たれる矢は、瘴気と爆発を伴い進み。
「これくらいは避け...られないんだったねえ!」
確実に命中するそれを前に腕を組んで防御したみたいだが、まともに喰らっている。
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>الباحث القديم مجنون<
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<爆撃>などで削られたダメージも含めHPは消し飛んだ。
あの瘴気は、おそらく毒。金属に毒はほとんど効かないはずだが、しかし効くなら使うまでだ。
...まだ、終わっていないしな。
「...まさか、本当に突破されるとは思わなかった。さすがは<勇者>様ってところだね」
HPが完全になくなり体が半壊している様子。
頭もなくなっている。だが声は聞こえる。
「最もその様子を見るに、私たちのことを知っているね。大方バースト戦の時に痛い目でも見させられたかな?」
肉体を修復しつつ、なおも動くそれは軽い絶望を与えるには十分な光景だ。
だが俺たちは絶望したからと言って引くわけにはいかない。
「あなたにもう<銃>はない。それは修復しつつ出さないことからも明確です!」
「ああ...この戦いで勝負を決める!」
各種薬品を飲み直しつつ、構えを維持。
前はバーストに止めを刺すことはできなかった、が今回は違う。
「...へえ」
遠距離攻撃のない以上、あいつはもう近接攻撃をするしかない。
魔法は使えるだろうがカミラがいれば問題なく対処可能。
そして近接攻撃に関して、奴は素人だ。
武器が扱えないのだから格闘になるだろうが、その場合分はリーチの差だけこちらにある。
「...殺れる」
回復だってまだまだある。持久戦も問題ない。
油断はできないが...油断さえしなければ、ここで殺せる。
確実に。
「...そうか。君たちが向けるその感情は、敵意ではなく殺意か」
完全に元通りになった、が歩き方がぎこちない。
毒が回っているのだろう。
「いやはや、殺意を向けられるなんて何億年ぶりかね。あいつらとの戦い以来じゃないか?」
散開。歩いてくるやつから、俺とマイゲスは少し角度をつけ十字に。遠距離組は離れる。
「だけど、そうか。なら本来私が君たちに向けなければいけないのは敵意ではなく...」
「殺意だな」
ヒエッ




