第九十二話~駆除 三~
第九十二話~駆除 三~
かなりの宙賊を討ったことで、通常の依頼も少しずつだが増えてきた。それに伴い、輸送の依頼を受けてみる。コロニーステーションを出ていざハイパードライブをという正にその時、多数の艦船が現れたのであった。
敵からの先制攻撃を凌いだあと、カズサから緊急出撃をした。
初めは十隻ぐらいかと思ったが、小惑星の陰にでもいたようでもう少し敵艦船が増えている。トータルでは、ざっと二十隻ぐらいはあるだろう。構成としては、旗艦と思われる軽巡洋艦クラスが一隻。他に、駆逐艦クラスが三隻ほど軽巡洋艦の周りを固めている。残りは、小型船で構成されていた。
一瞬、本当に軍隊じゃないかと疑ったが、どうやらネルが言ったように違うようだ。何せ、船の形にも兵装にも統一感が全くないのである。はっきり言えば、てんでバラバラなのだ。もし軍隊であれば、こんなことはまずないだろう。普通は同じ兵装を使用するだろうし、外観も似通った船となる筈だ。しかし、目の前に展開している船団にはまるで統一感がない。即ちそれは、個人の集団ということに他ならなかった。
「何だ、こいつら」
「わかりませ……いえ、ネルトゥースより通信。それによりますと、宙賊団だそうです」
「シエ。宙賊団だと?」
「はい」
宙賊団とは、海賊団の宇宙バージョンだと思えばいい。やっていることは、集団で獲物に襲い掛かり金品や人間を攫っていくという輩である。正しく、イメージする海賊そのものなのだ。もっとも、数隻だけで構成された宙賊であってもやっていることはあまり変わらない。しかし宙賊団の場合、規模が大きいので被害も相応に大きくなる傾向があった。
「それで、名前とかあるのか?」
「スカレー宙賊団と名乗っているそうです」
「……本当に名乗ってたのかよ。本気で海賊をリスペクトしているのか?」
「それは何と……攻撃きます!」
「おっと」
シエの警告を受けて、咄嗟に回避する。そして周りの祐樹たちも、問題なく回避している。
どうやら、シエとの会話に気を取られていたみたいだ。これは、反省反省。敵についての推察など、あとで幾らでもできるのだ。取りあえず今は、目の前の敵を排除することに集中しよう。
敵の数だけで言えば、相手の方が圧倒的に上となる。そうなると、オーヴァーロードで敵を蹴散らすのも悪くはない。悪くはないが、今回は別の兵装にしてみるとしようか。
「シエ、ビットを出せ」
「了解です」
その直後、機体の各所に隠された六基のビットが離脱する。そして、キュラシエ・ツヴァイの周囲に展開する。このビットだが、オルや祐樹の乗るキュラシエ・アインスにも搭載されていた。
正式名称はサイコビットといい、パイロットの脳波によってコントロールされる。とはいえ、一々指示するといったことはしない。機体の搭乗者の出す大体の思考を、キュラシエに搭載されているコンピューターが読み取って操作する武器なのだ。
また、ビット同士がエネルギーラインを結ぶことで、エネルギーシールドを形成することもできる。しかしながら、実行するにはビットが四基必要だった。だがアインスには四基しか積んでいないこともあって、エネルギーシールドを形成すると攻撃には使用できなくなる。これは間違いなくデメリットであるが、従来の兵装は普通に使えるので実は問題になっていない。寧ろ防御力がより上がるので、装備自体は喜ばれていた。
因みに、俺のツヴァイはエネルギーシールドを形成したあとでも攻撃できる。前述したように、全部で六基積んでいるからだった。
無人機となるキュラシャーにカズサと駆逐艦の護衛を任せると、ビットによるエネルギーシールドを展開した上で敵船団へ吶喊する。残念ながらファルケⅡにはビットを積んでいないので、こちらに関してはできるだけ大型魔力キャノン二門によるアウトレンジ攻撃を徹底させていた。しかも最高速度の関係上、どうやっても俺が先頭を切ることになる。足並みを揃えればいいのだろうが、別に防衛ラインを引いているわけでもないのでそれをやってもあまり意味はない……多分。
何であれ先に宙賊に近づいた俺に対し、小型の宇宙船から攻撃を受ける。しかしその攻撃は、ビットが展開したエネルギーシールドによって全て防いていた。小型宇宙船が擁する程度の一般的な武装なら、何ら問題がないからである。そして宙賊の小型宇宙船の武装は、変に改造とかはしていないようだった。
さらに小型の機体によって完全に防がれるとは思っていなかったのか、宙賊の動きがおかしくなる。多分、動揺でもしたのだろう。何せキュラシエシリーズは、多少の差こそあるが大体二十メートルを少し越えるぐらいの大きさしかない。翻って相手の宇宙船は、小型とはいえ倍以上の大きさがある。その攻撃が、半分以下の機体の持つエネルギーシールドによって無効化されたのだ。
それは、動揺するだろう。
ならば旗艦と思われる軽巡洋艦で攻撃すればいいかと言えば、それはそれで問題となる。軽とはいえ巡洋艦の持つ砲では大きすぎて、小さい上に小回りの利くキュラシエを捕らえきれないからだ。かといって近接防衛用の武装では、威力が低すぎてエネルギーシールドが抜けない。軽巡洋艦といっても武装は対艦攻撃が主であり、キュラシエのような小さい相手にはその威力ゆえに持て余してしまうのだ。
何より、既に接近しているのでなおさら攻撃はしづらいだろう。下手に攻撃すれば、味方に当たるからだ。そうなればこちらとしては、大歓迎である。フレンドリーファイアーで勝手に、自前の兵力を減らしてくれるからだ。しかし、流石に宙賊と言え味方は撃ちたくないらしい。軽巡洋艦からこちらへ、攻撃がくることはなかった。
代わりにというわけでもないのだろうが、カズサが攻撃を受けている。だが、その攻撃が効かないのは既に証明している。それはシュネも分かっているようで、僚艦となる大型駆逐艦の前にカズサを出して全部の攻撃を防いでいた。
幾らかの小型宇宙船が近づいているが、そちらはキュラシャーに任せればいい。廉価版ということで多少は武器の種類や装甲を減らしているが、武装の威力までは落としていない。だから、俺たちが持つ武装で落とせる小型の宇宙船をキュラシャーが落とせないということはないのである。
「さて、こっちはこっちで暴れるか」
「了解」
飛行形態から人型形態へ変わると、手当たり次第に攻撃していく。標的には困らないし、何より俺のライフルを一射すれば小型宇宙船など簡単に落とせるのだ。無論、それは祐樹たちが乗る機体であっても変わりはない。遅れて到着したアインスたちも、次々と攻撃していた。
「そこっ!」
また一隻、俺の駆るツヴァイが持つレバンティライフルによって撃ち抜かれる。同時に反対側から接近していた宇宙船に対してビットによる攻撃を行い、轟沈させた。何せ俺たちの持つライフルは、魔力を弾丸の材料にしているので、実質無限である。勿論、撃てば銃身が摩耗するので整備が必要となる。だから永遠に撃つことなどできないのだが、弾丸の残弾数を計算しないで打ち続けられるのは大きい。何より残弾数を気にする必要がないので、実に楽だった。
なおライフルだけではなく、実体弾以外は同じく魔力を元としている。カズサなどの艦船や俺たちが操っている機体の動力源も、同じく魔力を基にしている。だが、惑星上や宇宙には魔力が全くない領域が存在している。そこで、魔力を使用しないエンジンも搭載していた。実はキュラシエとファルケは、二種類のエンジンを積んでいるのである。それは勿論、カズサや大型駆逐艦も同様であり、二種類のエンジンを搭載して設計されていた。
ただ艦船の場合、動力源そのものが大型化しているので総じて出力が高い。さらにはキュラシエと違って幾つもエンジンを積んでいるので、なおさらに出力は高くなっていた。
おっと、話がそれたな。
さて、敵船だが既に半数が消えている。その分だけ余裕が生まれて、戦場を観察できるぐらいになっていた。
「うん。敵も大分減ったな」
「はい。もう、小型艦船は祐樹様たちに任せて問題ないかと思われます」
「だな……シエ! 飛行形態へ変形後、オーヴァーロード起動!!」
「了解」
次の瞬間、動力源となっているエンジンがフル稼働して過剰なまでのエネルギーを生成する。そのエネルギーによって機体の周囲に展開したエネルギーフィールドを纏いながら飛行形態に代わると、敵旗艦の周囲に展開する駆逐艦へ突撃した。
その途中にいた小型の宇宙船など、鎧袖一触とばかりに蹴散らしていく。すると、近付かせない為だろう。俺の標的とならなかった宙賊の宇宙船から攻撃される。だが、機体周囲に展開しているエネルギーフィールドで事実上無効化した。
そして俺は立ちはだかった全ての敵を排除して、最寄りの駆逐艦艦橋へそのまま吶喊する。一撃で粉砕すると、勢いを殺さずに次へと標的を変えた。
「おーおー。動揺してる、動揺してる」
まぁ、それはそうだろう。
実質、敵の駆逐艦と俺のツヴァイでは十倍近く大きさが違う。まさか十分の一ぐらいの大きさしかない機体による一撃で落とされたのだから気持ちは分からないでもない。だからといって、手加減する気もない。残った駆逐艦二隻のうち一隻も、撃沈する。その時、シュネから通信が入った。
≪どきなさい。魔術陣砲を撃つわ!≫
「マジか、シュネ!」
≪ええ!!≫
カズサには通常撃っている砲と違って、艦首から一方向にしか打てない砲がある。艦首そのすぐ前に巨大な魔術陣を展開した上で、そこから魔術陣によって収束された魔力弾を放つのだ。その威力は、非常に高い。何せ、カズサでも防ぎきれないぐらい高出力を誇っているのだ。
そんな砲撃を、シュネは駆逐艦に目掛けて撃つつもりらしい。慌てて俺たちが砲撃の軸線上から移動すると、ほぼ間髪入れずといったタイミングで魔術陣砲が放たれた。すると軸線上にいた全ての敵艦船を、その攻撃が薙ぎ払う。小型宇宙船も駆逐艦も、等しくその攻撃によって撃沈したのだ。
ここで降伏させる、というのも悪い話ではない。まだ、惑星系から出ているわけではないからだ。しかしそうなれば、鹵獲した軽巡洋艦の販売やら宙賊の引き渡しやらと段取りを踏まねばならなくなる。これが何も仕事を受けていないときならそれでもいいが、今は依頼の途中である。余計な荷物を抱えて、時間を掛けるわけにもいかない。ゆえにここは、撃破してサルベージするぐらいでいいだろう。それにどうせ宙賊は、デットオアアライブである。必ずしも、生きて引き渡す必要などないのだ。
「よって、全てを撃沈する。シエ、行くぞ!」
「了解です」
まだ維持しているオーヴァーロードのまま、俺はツヴァイで敵旗艦の艦橋へ目掛けて吶喊する。慌てて迎撃しようとしているが、前述したように軽巡洋艦クラスの武装が標的とするにはツヴァイは小さすぎるし何より早い。標準を付けられる前に肉薄し、そのまま艦橋を一撃で貫いた。
これにより、軽巡洋艦と駆逐艦三隻が轟沈し、残るは小型宇宙船しかない。士気など残っている筈もなく、彼らは逃げへと転じていた。だが、ここで逃がす気などない。下手にお残しをしてしまうと、変なところでリベンジをしてこないとも限らないからだ。
こうして俺たちは、全員で掃討戦へと入る。ここまでくればもういらないだろうと、味方の護衛に回しているキュラシャーの一部を使ってまで落ち武者狩りをおこなっていった。生き残った敵船の大半を沈めたところで、追撃戦も終了。流石に全滅させることはできなかったが、生き残った宙賊に反撃する力はないだろう。もし反撃してくれば、たいしたものだ。その時は全力を持って、返り討ちにしてくれよう。
≪終わったみたいね≫
「ああ。あとはサルベージして、ここから離れよう」
≪そうね≫
俺が通信越しにそういって間もなく、カズサや大型駆逐艦から回収用のドローンが放出される。戦場のサルベージは彼らに任せ、俺たちはカズサに帰還したのであった。
わーい。
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