第九十一話~要撃~
第九十一話~要撃~
報酬二重取りの為、そしてギルドでの依頼を増やす為。とはいえ、こちらはついでではある。何はともあれ、跳梁跋扈している宙賊を討つべく惑星系内を動き回るのであった。
コロニーステーションでの整備と補給をしたあとで出発した俺たちは、次の得物を狩るべく宇宙を進んで行く。やり方は、基本的に変えていない。視覚や電子的に存在が認識されてしまうと間違いなく警戒される可能性が高いだろう戦艦のカズサを隠しながら、見た目には大型駆逐艦に見えない僚艦に随伴している状態となる。そして撒き餌と言っていい大型駆逐艦にパクっと食らいついてきた宙賊を狩り、鹵獲した宇宙船は業者に売るという行為を繰り返していた。
何といっても、今が稼ぎ時である。時がたてば、俺たちに続いてギルド所属の者たちや本来の賞金稼ぎが出張ってくるからだ。なぜかと言えば、鹵獲した元宙賊の宇宙船を業者に売っているからだったりする。宙賊に襲われて持ち船を壊されたことで活動できないギルドに所属しているメンバーなどは、俺たちが売り払った宇宙船を手に入れれば当然だがギルドでの活動を再開するのは間違いない。そうなればどうなるか、推して知るべしとなる。
それでなくても俺たちが鹵獲して売却した宇宙船は、シュネや整備チームを率いるマウノたちによって整備されたものだ。そのレベルは相当なものだったようで、鹵獲した宇宙船を売り払った業者でもそのクオリティに驚いていたぐらいである。そのできは、業者が手を入れなくてもすぐに売り出すことができるぐらいだからだ。
勿論、宇宙船を取り扱う業者もそんなことはしない。商品として売り出す以上は、自分のところで整備はする。しかし実際は、殆どその必要がないレベルになっている。その為だろう、売りに出されるまでに時間が短かったのだ。
だが、何でそのようなことが分かったのか。それは、シュネが勘付いたからである。何でも彼女に言わせると、自身が整備したものだから、多少手が入ったところで分かるかららしい。
「あら。もう売りに出されたのね」
「シュネ、何かだ」
「私たちが売り払った宇宙船よ」
「分かるのか?」
「ええ。外観的には手を入れているみたいだけど、隠しきれていない私の癖があるから」
「はー。そうなんだな。何か、スゲーな」
「そうでもないわよ」
感心した俺が漏らした言葉に、シュネは小さく微笑みながら答えていた。
何はともあれ、中古とはいえ宇宙船が流通し始めたことによって報酬の二重取りが難しくなる。活動する宇宙船が多少とは言え増えたことに伴い、商人から出ている宙賊討伐の依頼が減るからだ。報酬の二重取りというチャンスが減るのは残念だが、実は鹵獲した宇宙船の売却はそれを狙っていたとも言える。それは宙賊が減れば、相対的に通常の依頼が増えるからだった。
「で、何これ」
「ギルドからの報奨金といいますか、お礼みたいなものですね」
偶然、ギルドに出向いた際に窓口で呼ばれたので何かと思っていると、渡されたのがこれである。まさかそんなものをギルドから貰えるなど全く思っていなかったのだけに、俺は驚いたのだ。
「いや。別に、ギルドの為だからとやったわけじゃないけどな」
「それでも、助かったことは否めませんから」
「まぁ、貰えるのなら貰うけど」
こうしてよく分からないうちに、ギルドから金一封が渡されたのである。だが、渡されたのは大した金額でもない。ギルドからしてみれば、評価したということを示しておきたかったのだろう。
しかしここは、はっきり言わせて貰う。
渋ちんかギルド!! 幾ら金一封とはいえ、安いわ!
まぁ、兎にも角にも、まだ正常とはまだ言いづらいがそれでもギルドにいつもの状態が少しでも戻ってきたと言えるのだろう。実際こうして、数は少ないが輸送のような仕事が出てきたのだから間違いないのだ。
もっとも、俺たちはすぐに仕事を受けなければならないという状態にはない。このところ、宙賊の報奨金と依頼の完遂という報酬の二重取りで散々に荒稼ぎをしていたので懐は中々に暖かいのだ。
「どうすっかなー」
「何がかしら?」
「いや。ギルドでの仕事。すぐに受けるか、それとも暫く休むか。はたまた、未確認宙域にでも行ってみるかどうしようかと思ってさ」
未確認宙域とは、国などからまだ調査の手が入っていない宙域の総称となる……らしい。この銀河内であっても、生物が存在できる惑星というのは、どうやっても散らばってしまうのだ。たとえば活動していたラトル共和国を例に上げると、彼の国内となると流石にないとなる。だが、国外なればその限りではないのだ。
そもそも国自体が積極的に拡張路線をとっていないので、なおさらに調査が及んでいない場所の方が多くなる。つまるところ宇宙では、隙間の方が多いのだ。
「もしくは、オオヤシマに戻ってみるのもいいかも知れないわね」
「あー、様子見か……それもいいのか? ま、もう少し考えみるさ」
「そうね。慌てて結論を出す話でもないしね」
「そういうこったな」
手をひらひらさせながら、ブリッジから俺は出て行くのであった。
結局選んだのは、ギルドの仕事だったりする。前述したように、少しずつではあるが輸送等の依頼は増えてきている。しかしながら、まだ稼働している宇宙船の数が少ないこともあって、依頼を受ける者が少ないのだ。
まだ俺たちがフィルリーアにいた頃は、曲がりなりにも行商人であった。その経験から、流通が滞っているというのが経済的にあまりよくないということぐらいはわかる。それゆえに、輸送の依頼を受けているのだ。まぁ、ギルドの方からも雰囲気的に受けて欲しいみたいな空気が醸し出されていたということもあったので、受けたのだが。
もっとも、暇潰しという面がないとは言わない。やはり何もせずにだらだらと過ごすより、ましだろうと考えてのことだ。今回の依頼に関して言えば、別に宙賊を釣り出そうとかする気はない。その為、カズサを隠して航行するなどといったことをしない。僚艦の大型駆逐艦、それと元はクルドの持ち船だった小型艦という三隻体制で宇宙を航行していた。
そんな俺たちが向かう先は、二つ先の惑星系となる。しかもその手前にある惑星系では、中々に見応えがあるものが見られるという話も聞いているので、少し楽しみにしていた。
出発したコロニーステーションからも十分離れたので、ハイパードライブを使おうかと思った矢先、なぜかネルから警告が入った。その内容は、レーダーに艦船を示す反応がでているというものとなる。しかもそれは、一隻や二隻などという数ではない。十隻以上という、かなりの数に上るのだ。通常、これだけの数の船が纏まって行動することはない。それだけに、十分異常なのだ
「ネル! 何で気付かなかった!」
「申し訳ありません、シーグヴァルド様。小惑星帯に紛れていたようです」
太陽系のアステロイドベルトほど惑星軌道の全周に渡っているわけではないが、この惑星系にも小惑星帯が局所的に存在している。その小惑星帯の中に、隠れていたらしい。確かにこれでは、事前にレーダーなどが反応するわけがない。小惑星が数多く存在しているので、その陰に隠れられてしまえば見付かりっこないからだ。
「ネル。戦闘準備!」
「了解しました」
すぐに、重力魔術が発動する。船の装甲もあるので、攻撃を受けたとしてもすぐに撃沈するなどということはない。しかし、船体が受ける損傷などないに越したことはないので発動させたのだ。
だがその直後、念の為が幸いする。それは、相手からの攻撃を受けた為だ。しかしその攻撃は、展開していた重力魔術によって敵の攻撃は曲げられ直撃しなかった。そのお陰もあって、船体には損傷が全く出ていない。何せこの銀河で航行している宇宙船に搭載されている武器は基本的にレーザーなどの光学系武器が主となるので、重力魔術によって重力を強めれば直撃することはほぼないのだ。
とはいえ、こちらの重力魔術が作り出す重力に打ち勝てる攻撃であればその限りではない。しかし、カズサの重力魔術を最大まで強めれば、既存の兵器では直撃を受けないことが分かっている。だが、軍事機密など隠されていた場合は別である。あくまで、一般に公開されている限りという注釈が付くのだ。
しかし、大型駆逐艦となるとまた別な話となる。出力の関係で、カズサより重力魔術の効果が落ちるからだ。相手が格上の重巡洋艦クラスであった場合だと、流石に防御しきれないのである。
「ネル。先の攻撃から、相手の船のクラスを予測できるか!?」
「仮に主砲だと想定した場合、巡洋艦クラスであると思われます」
「巡洋艦だと? おいおい、まさか正規軍とか言わないよな」
「お待ちください……いえ、違います。ラトル共和国が採用している巡洋艦とは、明らかに違いがあります」
「だが、巡洋艦クラスであることは間違いないと」
「はい」
誰だ。巡洋艦クラスの船を持っている奴なんて。そんな奴がいたら、ギルドで話ぐらい聞けると思う。だが残念なことに、聞いたことはなかった。
ともあれ、攻撃してきた以上は敵には違いない。ならば、後悔させてやるとしよう。
誰に喧嘩を売ったのかを!
「シュネ! 船は任せる」
「ええ」
「残りは出るぞ!!」
『了解』
シュネに船を任せた俺は、声を掛けたオルたちや祐樹たちの返答を聞きつつ、ブリッジから出て愛機がある格納庫へ向かったのであった。
ただただ、夢の報酬二重取りに邁進していただけなのに~
ご一読いただき、あいがとうございました。




