第八十九話~膺懲~
第八十九話~膺懲~
無事に荷物を届け、ついでに襲ってきた宙賊を返り討ちとした俺たち。その後、女性陣のショッピングのお伴という修練をやり遂げたのであった。
到着したコロニーステーションで息抜きという名の修練をこなした俺たちは、もう一つの依頼を果たす為に出発した。目的地はというと、あまり使われていない航路の先にある惑星系である。有り体に言えば、さびれている。その為というわけでもないのだろうが、宙賊に遭遇することはなかった。
特に問題なく目的地に到着し、もう一つの依頼を完了させたあとで惑星に降り立ったが、これというものもない。要するに、田舎なのだ。多少は自然もあるが、逆に言えばそれぐらいでしかない。取り立てて何かがあるわけでもなく、このまま留まる理由は見いだせなかった。
そこで二日ほど留まり、休みを入れる。それからギルドへ向かい依頼を探すが、これはというものもない。ゆえに俺たちは、その惑星系から出発し、再び緊急依頼の届け先であった星系に戻ってきたのだった。
早速ギルドに出向いたのだが、なぜかこちらでも輸送などの仕事が見付からない。しかし代わりにあったのが、宙賊の掃討であった。賞金首を狙うというのは、珍しいわけではない。しかし、ギルドで正式に掃討の依頼が出ているというのはあまりなかった。
では、なぜに賞金首の掃討などという依頼があるのか。それはどうやら、俺が受けた緊急依頼にも関係しているようだ。現在、この惑星家の主要航路では宙賊の動きが活発化しているらしい。その為、本来流通を担当する艦船が不足気味となっていて、影響が出ているというのだ。その原因は、言うまでもなく宙賊にある。ゆえに宙賊を、さっさと排除したい商人などが依頼を出しているのだ。
賞金首は国が指定するので、当然だが報奨金を出すのも国となる。だが今回の場合、国の指定した賞金の他に有志の商人がギルドに討伐依頼を掛けていたのである。
「これってつまり、夢の報酬二重取りが発生しているというわけか」
「そう言うことだよな、シーグ!」
「ああ!! そういうことだ、祐樹!」
俺の言葉に乗った祐樹と、いい笑顔を浮かべながらがっちりと握手する。流石は祐樹、俺の思いを分かってくれるとは思っていたが、正にその通りだった。
片手で握手を続けながら、俺たちはお互いに肩を組む。騙しでも何でもない、公的な報酬二重取りが発生しているのだ。これを喜ばずして、何を喜べというのだろうか。その上、この星系にはギルドのメンバーが少なくなっている。これはギルドメンバーが少なくなっているわけではなく、宇宙船を失い簡単に宇宙に出られない状況に陥っているメンバーが多くなっている為だ。
その理由も、やはり宙賊にある。俺たちが受けた襲撃のように、ハイパードライブが終了した直後に奇襲を受けて、命からがら脱出艇で逃げたと話すギルドメンバーが多かったのだ。
なお当然だが、彼らは新しい宇宙船を発注中である。中には懐がかつかつのせいで発注できないメンバーもいたりするが、それはそれであった。つまり宇宙船を発注中であろうが、懐事情で新しく宇宙船を調達できなかろうが、宇宙に出られないという点ではどちらも変わらないのである。
「競争相手が少ない今こそ、好機だよな」
「そうだよな祐樹(兄弟)!」
『あんたたち……誰が、兄弟なのよ……』
俺たちの後ろでは、シュネと舞華の二人が頭押さえているように見えるような気がする。しかし、気にすることではないので気にはしなかった。
宇宙を航行する二隻の船、それと周囲に展開しる一機の航宙機がそこにあった。
「と、いうわけで賞金首を狩りに出てきました」
「シーグ。誰に話しているのかしら」
「え? あ、いや。何となくこうした方がいい気がして」
「何を言っているのよ。はぁ……まぁ、いいけどね」
思い立ったら吉日というわけでもないが、俺たちは賞金首を狩る為に宇宙へと出てきたのである。とは言うもの、すぐに見付けることができるのかは分からない。言うまでもなく、宇宙は広いのだ。そこで俺たちは、カズサや駆逐艦の見た目を利用することにした。
前述したようにカズサの外観からは、戦艦とすぐに判断するのは難しい。これは僚艦となる大型駆逐艦も同様であり、はっきり言ってしまえばどのようなカテゴリーに入るのか判断に迷う代物となっているのだ。
しかも、目立つような武装などは見当たらない。正確には武装が見えないだけでしかないのだが、目に見える武装が乏しいだけに大抵の場合は輸送艦と判断されてしまうのだ。これは通常、武装が貧弱となれば大抵は輸送艦となるので、その判断も間違いではないのだ。
なお、囮云々は、俺の考えではなくてシュネからの提案だったことを明記しておく。
そして構成だが、前述の通りとなる。一隻は大型駆逐艦であり、もう一隻はクルドがコールドスリープをしていた宇宙船である。当初は大型駆逐船だけで、囮の役目を果たす気であった。しかし、シュネによって指摘を受けてしまう。彼女曰く、流石に最低限の武装しかしていない宇宙船が宙賊の跳梁している宙域を単独で航行しているなどおかしいだろうとのことだった。
しかし、確かに言われてみればその通りである。そこで、以前はクルド所有であった宇宙船に出張って貰ったというわけであった。この宇宙船だが、見た目こそ宇宙文明圏で言えば古臭い型となる。しかし中身は、最新モデルと何ら遜色ないぐらいにまでシュネたちによって改造されている。その戦闘力は、同クラスとなる最新式の宇宙船を向こうに回しても一対一なら勝てるだけの実力を持っているのだ。
その元はクルドの船であった宇宙船と、大きさ的には航宙機にカテゴライズされるファルケⅡを囮の周りを展開させて、さも護衛をしていますという雰囲気を醸し出させているのである。
因みにカズサはどうしているのかというと、少し離れているがちゃんと追随している。カズサは現在、重力魔術の応用で電波的に見えていない。原理的には重力で電波を曲げて、感知させないようにしているとのことだった。それだけではなく重力魔術によって光も曲げられているので、視覚的にも捕らえられなくなっている……らしい。
以上、シュネからの受け売りであった。
「暇だー。なぁ、俊」
「祐樹。基本的に受け身だ、仕方がないだろう」
「それは、そうだけどさ。暇だから、しょうがないだろ」
暇を持て余していた祐樹が話し掛けた俊が言った通り、基本は待つしかない。こちらから探すという手もなくはないが、現在の俺たちは民間輸送船の皮を被った状態なので積極的に宙賊の探査を行うとかおかしいにも程がある。ここは大人しく、宙賊が出るのを待つ方が無難なのだ。
その時、シュネ―リアが艦内のモニター上に警報を示す。どうやら、お待ちかねのお客さんの登場のようだった。
「気合入れろ。お客さんだぞ」
『りょーかい』
「それと今回からは、出来れば撃破ではなく鹵獲だぞ鹵獲。いいな」
『おう』
『はい』
そう返答してから、祐樹たちやオルたちが出て行く。その後ろ姿を、俺は見送っていた。実は今回、俺は出ない。たまには、トップらしく後ろで構えているのもいいかなと思っていたのだ。
どうせ、相手は宙賊である。彼らは、身を守れるぐらいの武装しかしていない民間用の小型宇宙船を無理矢理改造して過剰に武装をしている場合が多い。普通、軍艦などが売られることはないからだ。
かなり型落ちした軍艦ならば、手に入る可能性は少ないがないとは言わない。しかし元とはいえ軍艦を民間に売り払う場合、大抵は既に払い下げられた軍艦の性能を超える宇宙船が市場に出回っている。それならば、元は軍艦であっても購入は躊躇う。それは至極短銃な理由で、古い船より新しい船の方がいいからである。これは、一般市民であっても宙賊であって同じなのだ。
「さて、どうなるかね」
「さぁ。でも、問題はないと思うわよ」
「それは同意見だな」
そして案の定、鎮圧に成功していた。
基本的にキュラシエより足が速いファルケⅡに合体した状態で接近した祐樹たちは敵船の近くで分離すると、今度はキュラシエという小回りが利く機体で牽制して逃げ辛くする。無論、合間には攻撃しているので、相手が動き辛いのはなおさらだった。その隙に敵後方に回ったファルケⅡが、大型魔力カノンで噴射口を攻撃する。これで大体は、航行不能にすることができるのだ。
万が一、航行不能にまで追い込めなくても速度は間違いなく遅くなる。そうなれば、あとは七面鳥撃ちと変わらない。結局、大した時間を掛けずに祐樹たちは宇宙船を足止めし、降伏させていた。あとは、艦内制圧用に人員を送り込めばそれで終わりとなるのだが……これぐらいなら問題なくできていた。
「予想通りね」
「まぁな」
「あら、シーグ。何やら、つまらなそうだけど。どうしたの?」
「シュネ。分かっているくせに、聞くのか?」
「あら、何のことかしら」
小さく首を傾げて、さも分かりませんという雰囲気を醸し出しながらシュネが聞いてきた。
はっきりいえば、退屈なのだ。後方に控えて指示を出すというのは、やはり性に合わない。それでも、一回は経験してみようと思って控えてみたのだ。その結果が、これである。やっぱり俺は、前線で体を動かしている方が似合うということなのだろう。
「性に合わんわ。こんなことは」
「確かに、シーグの性分には合わないでしょうね」
「分かっていたのかよ、シュネ」
「ええ。だけど、何ごとも経験よ。それより、ほら。さっさと指示を出しなさい」
「わーったよ。さてと、ネル。準備はできているのか?」
≪いつでも行けます≫
「では、行ってこい」
≪了解です≫
間もなくカズサから、ネルに率いられ敵船制圧用の人員が乗る連絡艇が発進していた。都合三隻の連絡艇だが、一隻ずつ敵船にとりついていくことになる。各々が、責任をもって敵艦内を制圧するのだ。全員がアンドロイドやガイノイドで、しかも戦闘用として初めから設計されている。ただ、なぜかアンドロイドは執事服であり、ガイノイドはメイド服となっていた。
本当に、何でなんだ?
「なぁ、シュネ。何であいつらは執事服かメイド服を着ている?」
「うーん……えっと、何となくかなぁ?」
「そうかぁ。何となくかぁ」
なぜか、その言葉に俺も納得してしまったのだ。
まぁ、今さらでしかないか。
夢の報酬二重取りの為、バウンティハンター化しました。
いつもとどう違うのか? という突込みはナッシングの方向で。
ご一読いただき、ありがとうございます。




