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第八十四話~辞別~


第八十四話~辞別~



 共にフィルリーアから旅だった悪魔たち、彼らの移住先となる筈だった惑星。その惑星は公式上、移住者などはいない筈であった。しかし念の為にと惑星を調べていた矢先、攻撃を受けてしまう。事情は兎も角、攻撃を受けた以上は黙っている理由もない。すぐに反撃して、返り討ちにしたのであった。





 敵対勢力の拠点制圧を完了した俺たちは、ネルトゥースに惑星上にまだあるかも知れない敵拠点の調査、及び今いる拠点周辺の警戒を命じる。するとガイノイドやアンドロイドたちを使い、すぐに履行していた。その後、俺たちは捕らえた敵のトップたちと顔を合わせる。実は俺たち捕らえた者たちが、正しくそうだったからだ。

 因みに相対して捕らえた者は全員、賞金首でもある。それも、要警戒対象であったらしい。とはいえ、今は関係ないので置いておくとしよう。

 それはそれとして、よく分からないこともある。彼らは基本的に、別々で行動している筈である。少なくとも、徒党を組んでいるという情報はギルドでは全くなかった。かといって、ギルドが賞金首の情報を隠蔽していたとも考えづらい。賞金首になっているやからは、ギルドにとっても邪魔になる。そんな相手を、隠す理由も庇い立てする理由はギルドにないからだ。


「というわけで、あんたらには色々いろいろと謳って貰おうか」

「ふん! 誰が、貴様のように若造に。舐めるな、ガキ」


 その言葉と共に、賞金首の一人が唾を吐いてくる。だが俺は、軽く首を傾げることでその唾を避けてみせた。まさか、避けられると思っていなかったのだろう。唾を吐いた男は、驚いきの表情を浮かべていた。

 しかし、随分と舐めた真似をしてくれる。確かに俺は若いだろう、少なくとも肉体年齢で言えばまだ二十にはなっていないのだからだ。一転、俺が声を掛けた相手は五十前後といったところだろうか。だからこその態度だろうが、それを受け入れてやる必要はない。何より、この唾を吐くという仕草に俺も少々むかついたのだ。相応の対応は、させてもらうとする。

 本当、オルとキャスを連れてこなくてよかったよ。


「しゃべりたくないか。なら、言いたくなるようにしてやるよ」

「はっ! ガキが何を……ガハッ!!」


 俺はゆっくりと足を上げると、正面からまともに胸を蹴りつける。当然だが男は吹き飛び、壁へしたたかに叩きつけられていた。呻いているその男に近づくと、片手で胸倉を掴み上げてから男の足がつかない高さにまで持ち上げる。そこで手を離すと、再度胸の辺りへ蹴りを放ち壁まで吹き飛ばした。

 立て続けに胸へダメージを受けた男は、痛みからだろうただ蹲っている。すると残りの賞金首の四人が、俺に対して文句をつけてくるがその言葉には答えない。代わりにそいつらへ不敵な笑みを浮かべてから、まだ蹲っている男に近づいた。

 また攻撃をするとでも思ったのか、四人が口々くちぐちにわめいている。しかし今度は顔をそちらへ向けず、男の近くに立った俺はうずまっているそいつに治癒魔術を使った。すると当然だが、俺が蹴った男の怪我が治る。いつの間にか痛みが消えたことが分かったのだろう、男は不思議そうに俺が蹴った胸の辺りを見ていた。


「では、第二ラウンドだ」


 そう言うと、不思議そうにしながらもまだ腰を降ろしていた男の顎を蹴り上げる。すると足の甲に顎の骨が割れた感触があったが、全く気にしない。そして空中に蹴り上げた男の腕を掴むと、勢いをつけてから部屋の反対側の壁へと投げ飛ばした。

 まともに背中からぶつかった男は、呻き声と共に肺から息を吐き出す。そのまま壁を滑り落ちて膝をつき咳込んでいる男の腕を掴んで、強制的に立たせる。いまだダメージが抜けきっていないのか、足をふらつかせる。そいつの足を力任せに払ったあと、俺は男の腹に組んだ両手を叩き落とした。

 先程の壁にぶつかったことに続いて、またしても背中へダメージを負ったその男は、文字通り血反吐を吐いた。しかし俺は、またしても治癒魔術をつかって治療を行う。間もなく痛みが消えたからだろう不思議そうな雰囲気を這いつくばりながらも放っている男に対して、俺は見下ろしながら不敵なまでの笑みを浮かべていた。


「安心しろ。何度でも治し……いや、直してやるから」

「ま、まさか……てめぇが、やったのか」

「さあな」


 男の言葉に対して、惚けながらもにやりと笑みを浮かべる。すると俺を見た男の表情には、間違いなく怯えの色が見てとれた。しかしてそれは、他の四人も同じでありとても顔色が悪くなっている。だが、与えた機会を潰したのはお前たちだ。せいぜい、自己責任をとってもらうとしよう。


「じゃあ、第三ラウンドの開始だ」


 とてもいい笑顔を浮かべながら、俺はそう宣言したのだ。

 すると本気で言っていると分かったからか、それから間もなく賞金首たちはこちらの問いに対してとても素直になって洗いざらい話してくれたのである。残念だが、欲しい情報が得られた以上は聞くことはない。お礼とばかりに全員を気絶させると、ネルに後始末を任せてみんなと共に部屋から出る。そのまま通路に出たのだが、そこでシュネが話し掛けてきた。

 

「シーグ。それにしても、またえげつないことをしたわね」

「自業自得だ。それに、むかつくこともしていたからな」


 これはここを制圧してから分かったことだが、賞金首たちはこの惑星を拠点として徒党を組んで色々いろいろと行っていたのだ。

 元はそれぞれが単独で行っていたらしいが、それだと手広くやるのは難しい。そこで賞金首たちは、手を組んだというわけである。つまりこいつらは、いわゆる犯罪シンジケートを作り上げたのだ。そんな賞金首どもが拠点として選んだのが、この惑星系だったのである。この惑星系はどこの国にも属していない上に、近くの国からそれなりに距離がある。隠れ蓑としては、都合がいい位置だと判断したらしいのだ。

 それにもまして、この惑星系が銀河でも辺境地域にあるということが、なおさら拍車を掛けていたのだろう。


「居住可能な惑星が放置された弊害、そうとも言えるわね。結果としては、それなりの施設付きとなったのだけれど」

「運がよかったとするべきか?」

「何とも言えないわね」


 それは……そうだな。

 賞金首がいなければそもそも戦闘など起きなかったし、悪魔たちも問題なく惑星へ移住できたかも知れないのだ。そう考えれば、運が悪いのだろう。だが、こいつらがいたお陰で思いのほか頑丈な施設が手に入ったとも言える。建築する時間と費用が浮いたという点で言えば、運がいいとも言えるのだ。


「まぁ、どう考えるかは斗真たちだ。使いたくないというなら、壊して資材にしてもいいわけだしな」

「それも、そうね。いずれ別れることになるわたくしたちが心配するより、この制圧した施設に関しては斗真クンたちに任せるべきだわ」

「そういうことだな」


 そう言ったあと、俺とシュネは視線を斗真へと向ける。その視線を受けた斗真たちだが、その様子は普段とあまり変わりがない。どうやら、特に気にしている様子はないようだった。


「利用できるのなら、何でも利用するさ」


 淡々とそういう斗真へ、俺は頷いていた。

 因みに捕らえた奴らだが、全員星の養分になって貰うつもりである。そもそも俺たちは誰も、捕らえた賞金首を助けるとは一言も口にしていない。勝手に向うがしゃべったのだから、汲んでやる必要もないのだ。



 制圧した拠点を一度きれいに掃除してから、星へ悪魔たちを降ろす。しかし惑星の衛星軌道上にカズサと駆逐艦一隻はそのまま残して、念の為に警戒に当てる。もうないとは思うが、絶対にないとは言い切れないからだ。

 その後、残りの重巡洋艦と移民船と駆逐艦二隻を大気圏内に突入させる。しかし制圧した施設近くへそのまま着陸させると、船が大きいだけに影響が出かねない。そこで、施設から離れたところへ宇宙船を降ろす。そこから静かに施設近くに移動させてから、そこで着陸させることにした。

 惑星自体は、人工衛星からも監視しているので、もし逃げおおせた奴らがいても見付けられるだろう。もっとも、あれだけ痛めつけられて惑星内に残っている奴がいるとは思えない。逃げることができるならば、さっさと逃げ出すだろう。少なくとも、俺があいつらの立場ならばそうする筈だ。

 もっとも、逃げずに残っていたとしてもその数は僅かしかいないだろう。だからあとは、惑星に移住する斗真たち任せるつもりだった。


「しかし、船や設計図を貰って本当にいいのか?」

「そもそも、その約束だろう。それに……」

「それに?」

「こんな宇宙船が飛び交っている世界で、宇宙船が一隻もないというほうが問題だろう? ここはもう、宇宙を認識していなかったフィルリーアとは違うんだから」

「それも、そうか。じゃあ、ありがたく頂戴する」


 紆余曲折があったが、漸く移住をすることができる斗真たちから安心したような気配が感じられる。これによりフィルリーアで斗真たちとした約束も完遂したわけだが、ここでハイさよならというわけにもいかない。もう少し、手助けが必要なのはわかる。特に通商などに関しては、確立しておく必要があった。

 とはいえ人数が人数なので、惑星上で生活するだけなら何とかなるかも知れない。だが斗真たちは、そんな鎖国みたいなことはする気はないらしい。だからこそ、手助けは必要だった。

 幸いと言っていいのかは分からないが、俺たちもフィルリーアで行商人をやっていたノウハウがある。さらに言えば、ガイノイドやアンドロイドたちだけでも行商人をしていたのだ。それだけに最低限は、商売をできるのだ。その商売に関するノウハウ伝えて、その後は自分たちでどうにかして貰う。流石に、それ以上の面倒はみられない。俺たちは、悪魔たちのようにこの惑星に骨を埋める気はないのだ。

 こうして、フィルリーアで培った経験を伝え終えた俺たちは、いよいよ惑星から旅立つ日を迎えたのである。


「本当に、世話になった」

「気にするなよ、斗真。同じ日本出身だった、そのよしみだ」

「それでもだ。恩は、忘れない。それと、気が向いたらでいい。いつでもきてくれ」

「ああ」


 最後に、惑星に残る斗真や悠莉とおれたちは拳を軽くぶつけ合う。それからカズサに乗り込むと、いよいよ大気圏を離脱して星の海へ戻ったのであった。


この話で、悪魔編は終了です。


ご一読いただき、ありがとうございました。



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