第八十三話~制圧~
第八十三話~制圧~
ラトル共和国の西、国外にある惑星を移住先にしようと調査をしてから暫く、なぜか攻撃を受けてしまう。武装の統一性のなさから、軍とは違うだろうと俺たちは反撃を開始。そして、返り討ちにしたのであった。
惑星に到着した時には見当たらなかった筈の宇宙船がいるということは、どこかから出撃してきたということになる。それは即ち、その地点にこそ敵のアジトがあるということなのだ。幸いなことに壊されていなかった調査用の人工衛星を使って、宇宙船の出撃地点を調査する。だが、その地点の映像には何もなく自然だけである。不思議に思っていると、シュネが人工衛星を操作し始める。するとモニター上に、先ほどまでとは違う映像が出ていた。
「これは建物……いや構造物か?」
「そうよ、シーグ」
「だけど、何もないよな」
実際、地上を映している別のモニター上には何もないのだ。あるのは手付かずの自然、ただそれだけ。少なくとも、建築物や構造物などは全く見られない。それであるにも関わらず、もう一つのモニターには明らかに人工的な構造物が映っている。これには俺も、首を傾げるしかなかった。
「……もしかして、地下にあるのか?」
「クルド。その通りよ」
ああ! そういうことか。
シュネは鉱脈など探査するときに使ったシステムを使って、地下を探った。その結果、彼女が当たりをつけた通りに地下に何かがあったというわけか。だが、流石はシュネだな。地上に見付からなかったら、すぐに地下とか思い付くとか。俺だったら、すぐには無理だろう。実際、思い付いてもいなかったし。
ま、それは兎も角として、だ。シュネのお陰で、敵の拠点とその内部構造はあらかた把握できたのである。あとは、こちらから乗り込んで制圧するだけだ。
「さて、と。では、最後の仕上げに行きますか。船の方は任せるぞ、シュネ」
「わかったわ、シーグも皆も気を付けてね」
「ああ。では、制圧に行こうか」
『おう!』
『ええ』
『はい』
俺や祐樹のように愛用の機体がある者は、機体に乗り込んで惑星に降下する。そして専用の機体がない者、殆どがガイノイドやアンドロイドとなるが。そんな彼らは、クルドがコールドスリープしていた宇宙船に乗り込んで惑星に降下した。
なお、連絡艇だとやや小型となるので、連絡艇より大きいクルドの修理した宇宙船を使ったのである。この宇宙船自体は、クルドから俺たちに提供されているので問題はない。そもそもクルドは、宇宙船を修理するような技能を身に着けていない。もっとも、貴族の嫡子だったのだから、それは当然かも知れないが。
何より、宇宙船に搭載されているメインコンピューターさえあればある程度はメンテナンスできる機能を有している。なので、普通に動かすにはそれでも問題なかったらしい。だが、本格的な修理や整備となると、メインコンピューターでも手に余る。つまり、このまま持ち続けても宝の持ち腐れにしかならない上に、何れは壊れてしまう。それなら、どうせ仲間となったからと言うこともあって、譲渡されたというわけだった。
そのクルドから譲渡された宇宙船を中心に、周囲を俺たちの機体が展開して大気圏に投入する。敵の拠点から少し離れたところから大気圏突入をしたこともあってだろう、敵と目される相手から攻撃されることはなかった。
そのまま目標地点の近くまで移動すると、ついに迎撃部隊が出てくる。さっきの戦闘で一方的にボコられたにしては、まだ戦力があったのかと少し驚いた。
しかし、戦力差は先の戦闘で分かっている筈なのに、諦めない辺り往生際が悪い連中だな。
俺はツヴァイを飛行形態から機動形態に代わると、先手必勝とばかりにライフルを撃つ。狙いを定めた軸線上の敵機を撃ち抜き、そのまま虚空へと消えていった。その直後、敵に動揺が走ったのか機体がぶれる。そればかりか、慌てて俺の正面から避けていく。しかし機体に乗り込んでいるのは、俺だけというわけじゃない。何せ、祐樹たちも乗るキュラシエもある。急遽避けた敵などカモでしかなく、撃たれて墜落していった。
「このまま押し切るぞ!」
『了解!!』
仲間からの力強い返答に、俺は勝ちを予想する。そしてそれは、間もなくその通りになるのだった。
上空に展開していた敵をあらかた駆除した俺たちは、そのまま敵拠点と思われる地下施設の制圧へと向かう。俺たちが警戒する中、着陸した宇宙船よりネル率いる武装したアンドロイドたちが展開していった。
だが、その突入部隊のメンバーとなるガイノイドはメイド姿であり、アンドロイドは執事姿なのだ。とは言え、正直もう慣れた。寧ろ、彼や彼女たちが別の格好をしている方が違和感を覚えてしまうかも知れない。
それはいいとして、拠点から敵が出てくる気配はあったので、その入り口近くをライフルで銃撃する。いかに拠点といえども、ツヴァイの持つライフルの威力は止められない。余波だけで、入り口とその周辺が壊れていった。
その崩壊に巻き込まれている敵の姿が多くある。普通ならば危険を感じたのならば止まるなりする筈なので不思議に思ったが、ツヴァイのカメラに捕らえられた映像を見て納得する。出てきたのが、人ではなく人ぐらいの背丈を持つロボットだったからだ。
恐らくだが、命令された通りに動くタイプなのだろう。だからこそ、銃撃を受けようとも恐れることなく命令を遂行しようとしたのだ。その結果が、銃撃に巻き込まれた上での破壊とは少し同情してしまう。
その状況を好機と思ったのか、ネルの部隊が突入を開始している。部隊はあっという間に入り口を占拠すると、次々と敵の拠点内へ雪崩れ込んでいった。こうなれば、俺たちも続くだけである。ツヴァイの操縦は機体に搭載されているコンピューターのシエに任せて機体から降りると、拠点内へ侵入した。
敵の拠点内に入ると、そこかしこからあまり大きくないものの戦闘音が聞こえてくる。意外かもしれないが基本的に兵器は光学兵器なので、銃火器と違ってあまり音がしないのだ。これがパワードスーツでも出てくれば話は別だろうが、どうやら敵は持っていないようだな。
因みに、シュネーリアにいた頃は、俺たちも実弾を併用した兵器が主だった。しかし、宇宙に出てからは専ら光学兵器である。これは宇宙というか銀河での常識に合わせているのと、物資の節約の為だった。
元々、俺たちが使用していた武器は実弾を魔力でコートする仕様となっている。コートをしなくても撃てるが、コートした方が魔術全盛のフィルリーアでは色々と干渉できるのでそうしていたのだ。
しかし宇宙に出た辺りからその武器を改造して、従来の方法とは別に純粋に魔力だけで弾丸を構成して放つ仕様を追加している。これにより、魔力による光学兵装か実弾を伴った兵装。もしくは実弾だけの物理というどれかを選ぶことが可能な武器となっていたのだ。
俺たちは途中で遭遇する敵を蹴散らしながら、ある地点へと到着する。そこは、拠点内に存在する幾つかの重要地点の一つへと至る扉の前だった。しかしながら、扉が開く様子がない。普通ならば自動で開く筈なのだが、まるで反応しない。かといって、拠点内が停電になっているなどということもない。確かに通路の明かりは非常灯なってはいるが、今まで確認した幾つかの部屋に入る際は問題なく扉が開いていたのだ。
ということは、何かの事故か意図的に開かなくしている可能性が高い。ならば、躊躇するだけ時間の無駄でしかない。そう判断した俺は扉から少し距離を取ると、祐樹たちに扉の近くから離れるように指示を出した。
俺の声を聞いて全員がその声に従って距離をとると、そこでジャンプする。そのままスラスターを吹かして一気に加速する。そしてその勢いのまま、渾身の蹴りを扉に叩き込んだ。
「ら〇だーきーーっく!」
『って、おい!』
渾身の蹴りと共に出た俺の掛け声を聞いた直後、二人から……具体的には祐樹と俊と言う地球出身で世代も近い二人である。その祐樹と俊に突っ込まれつつ放った蹴りは、標的とした扉を向こう側へと吹き飛ばす。それだけでなく吹き飛んだ扉は、何人かを巻き込んでいる可能性があった。
何で分かったのかと言うと、扉を蹴り飛ばしてまもなく、野太い悲鳴が複数重なって聞こえたからだ。
かなり厚い扉であったので、質量としても相当なのは間違いない。そんな扉がいきなり自分たちの方へ飛んできたのだから、避ける暇もなかっただろう。それに、どうせ巻き込まれたのは敵だと考えられる。それならば寧ろ、数が減ってラッキーなのだ。ゆえに、俺は気にしない。
そして蹴った勢いのまま中に投入すると、部屋となっている。その部屋の奥では、数名が固まってこちらを見ている。そしてその手間には、俺の蹴り飛ばした扉に巻き込まれて倒れている複数の人影があった。
やっぱり、巻き込まれていたか。
ともあれその様子は、部下を使って時間稼ぎをしている間に逃げようとしているようにしか見えない。この状況でそんなことをできるということは、この拠点内でかなり上の人物たちに間違いはないだろう。ならば、逃がすなど言語道断だ。
「逃がすか!」
『ひぃ』
スラスターを改めて噴出させて一気に近づくと、一人の男の首へクロスさせた腕を叩き込む。奇襲ということもあってまともに食らったその男は、声すら上げられず吹き飛んでいった。着地と同時に踏み込んでもう一人に接近すると、顎を肘でかちあげる。その一撃で足元がふらついた男を両手でリフトアップした。
「な、何をする!」
「短時間だけどな、飛行を楽しんでこい!」
「ひゃああー」
そのまま、持ち上げた男を逃げようとしていた男の一人に投げつけた。
まさか人間が飛んでくるとは思っていなかったのだろう、標的にした男は避けることもなくぶつかっている。そのまま二人とも壁にぶつかり、倒れ込んでいた。
流石にここまでやられれば、相手も反撃に出てくる。その証拠に、一人の男が銃を抜いていた。しかしその銃は、光が走った直後に吹き飛ばされる。味方の誰か、多分ビルギッタだろう。彼女が銃で狙い撃って、吹き飛ばしたようだ。そこに素早くオルが飛び込んでくると、銃を飛ばされたことで蹲っている男の頭を蹴り飛ばす。そして残った最後の一人はと言うと、俊が魔術で拘束していた。
どうやら麻痺の効果がある魔術を使用したらしく、術を掛けられた男は硬直して動けなくなっている。やはり対人では、魔術も十分使えるな。
「さて。ここは制圧したが、他はどうなっているのやら」
「シーグヴァルド様。つい先ほど連絡が入りまして、制圧が完了したとのことにございます」
「そうか。了解した」
襲撃部隊を統括しているネルが、ビルキッダに連絡したのだろうな。
その彼女に声を掛けたあと俺は、ロープと麻痺の魔術で拘束された敵を眺めていたのであった。
制圧完了です。
ついでにボスらしき人物たちも捕らえました。
ご一読いただき、ありがとうございました。




