第八十二話~駆除~
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第八十二話~駆除~
移住先の第一候補として挙げた惑星がある惑星系内に存在する小惑星帯に到着して間もなく、斗真から緊急の知らせが入る。正体不明の相手から攻撃を受けているというその知らせを聞いて、俺たちは惑星へと取って返すのであった。
さて小惑星帯から惑星へと戻る方法だが、ハイパードライブとは違う別の航法で戻る。と言うのも俺たちは、ハイパードライブとは違う遠距離移動用の航行法を既に確立させている。それはシュネが考えて完成させた方法であり、ハイパードライブとは全く違う方法なのだ。
そもそもからして、宇宙という広大な海を旅する以上、超光速方法は必須となる。少なくとも、俺とシュネはそう考えていた。そこでシュネが理論を展開し、それを実践させたのである。
ならば何で、その航法ではなくわざわざハイパードライブを使用していたのか。それは、先ほども述べたように理論が全く違うからなのだ。ハイパードライブ航法は、いわゆるハイパースペース(超空間)と言う専用の空間を通ることで超光速を実現させている。一方でシュネが確立させた航法は、瞬間的にだがワームホールを人工的に作りそこを通過して移動することで超光速を実現させている航法なのだ。
一種のワープなのだが、実はワープ航法がこの銀河では実践されていないのである。理論上は存在しているようなのだが、実現には程遠いらしいのだ。まさかシュネも、いきなり見つかった銀河文明でも、確立どころか理論上のものだったとは思ってもみなかったらしく驚きを隠せていなかったようである。そこで、急遽実験も兼ねて既に銀河内で確立されているハイパードライブ航法を使用したというわけなのだ。
まぁ、同じ惑星系なので、ハイパードライブでも大して時間は掛からないだろう。だが、多数の一般人……悪魔を一般人と考えていいかは微妙だがそこは気にしないでおく……を抱えているので、早いに越したことはない。そこで、ワープを使用することにしたのだ。
なにせこの航法なら、殆どタイムラグなしで移動できる。それが、長距離であってもだ。しかも今回は、同じ惑星系である。それこそ、一瞬で移動できるのだ。
「ワープ使うぞ! 目標惑星……そういえば名前はなかったな」
「いや、シーグ!! それは、あとでもいいでしょ!」
「ま、そうだけどさ」
シュネからの突っ込みに対して、一つ咳払いして気分を変える。それから間もなくしてできたワームホールを通り、小惑星帯から移動する。次の瞬間、カズサは惑星近くへ現れるとその先では、戦闘が展開されていた。
斗真が乗る重巡洋艦と護衛として残した二隻の駆逐艦は、悪魔たちの乗る移民船を守ることに重点を置いているようだ。勿論、移民船にも武装は積んである。だが、元が戦闘を目的とした船ではないので自衛程度の武装しかない。相手がまともに戦闘能力を持っていた場合、とても対抗などできはしないのだ。
だからこそ斗真は重巡洋艦と駆逐艦で守り、自動操縦のキュラシエ・ヌルや飛行ユニットでもあるキュラシエ・ファルケに対応させているのだろう。しかし相手には、駆逐艦クラスの船も数隻だが見受けられる。この状況では、移民船を抱えているシュネたちが優勢にならない理由も理解できた。
「だけど、ネル。あれって、改造しているのか?」
「……恐らくは、そうかと思われます。元の艦種は分かりませんが、装甲を厚くして過度に武装をすることで重武装を可能にしているものかと」
俺の疑問に答えたネルに対して、頷くことで返答としておいた。
と言うのも、相手の戦力の中に妙な船が混じっているのだ。大きさは駆逐艦クラスなのだが、その武装は同型艦を超えていると思われる。しかもモニターに映っている船影を見る限り、いわゆる軍艦ではなく無茶な改造の結果だというのが分かる。
となると、この時点で相手は軍ではないことが判明した。だとすれば、相手は民間と言うことになる。しかし民間船、これはギルド所属の船であっても同じだが、余程のことでもない限り違法と一目でわかる無茶な改造などしない。そんな改造をするのは、法をクソとも思っていない奴らしかいなかった。
「つまり、相手はまともではないのか」
「この時点で考えられるのは、賞金首か非合法暴力組織と言うことになるよな」
「いや、クルド。素直に、宙賊とかマフィアとか言えよ」
兎も角、相手が健全な相手ではないと言うなら遠慮する必要はない。早々に、排除をした方がいいのだ。それにどのみち、攻撃してきた以上は容赦する気もないのだ。
「撃てー!」
間もなく、カズサの船体間近から魔力を元としたエネルギー弾が放たれた。
実はカズサだが、見た目には戦艦と思えない。何せ、どこにも砲門などがないからだ。それならばなぜにエネルギー弾を放てるのかというと、そこは魔術の応用だったりする。実は俺たちの使っている魔術だが、視界が効く範囲なら任意の場所から発動できるのだ。しかしながら魔術の発動点が術者から離れれば離れるほど、制御が難しくなるというデメリットが存在している。敵を倒すつもりで使用した魔術が暴走し、術者側がピンチにでもなったら意味がない。だからこそフィルリーアの魔術師は、自分のすぐ近くで魔術を発動させていたのだ。
つまり魔術は、魔力などと並んで座標が重要になると言い変えてもいいだろう。その点、ネルトゥースのようなコンピューターならば、座標の把握は人より容易い。何せ彼女は、高性能計算機なのだ。
その計算機という有利さを利用して、カズサの船体表層からエネルギー弾を放てる仕様となっている。しかも船体外部には、対光学兵装をも兼ねた重力魔術が展開されている。その重力を使ってエネルギーを屈折させることで、防御するのだ。
この重力魔術だが、こちらからエネルギー弾にも応用させている。だからこそ、本来ならば真っ直ぐしか進まない筈のエネルギー弾……これは魔力で構成されても同じである……を屈折させることができるのだ。このおかげで、基本的に真っ直ぐにしか放つことができないエネルギー弾の死角を失くしているのだ。
そしてこの一連のシステム自体、一種の魔道具である。こうすることで、ネルトゥースやアンドロイドなどが魔術を使用できない現実を覆しているのだ。
カズサから放たれた魔力で構成されたエネルギー弾は、標的となった敵艦と、その軸線上にいた幾つかの小型宇宙船を纏めて撃墜していた。まさかいきなり現れただけでなく一斉射でいきなり撃沈させたことによる為か、敵に動揺が走っているように見える。ならばと、さらにもう違う艦へ斉射した。
だが奇襲だった一回目と違い、敵もまともには食らってくれない。それでも爆発は起きているので、中破ぐらいの損傷は与えたようだった。
「シュネ、頼むぞ」
「分かったわ」
その時、祐樹たちが愛機で出撃している。それを見て、俺も船はシュネに預けることにした。急いでブリッジから出ると格納庫に向かい、そのまま用意されていたツヴァイに乗り込んで出撃をした。飛行形態のまま加速して、まずは斗真たちとの合流を目指す。と言うのも、斗真たちがいささか不利な状況に陥っているからだ。
実は中破している敵の宇宙船ともう一隻の宇宙船が、カズサと移民船が重なる位置に移動している。どうやら中破したとはいえ、敵艦はエンジン部分には大きな損傷は受けなかったらしい。何とも残念だが、それを言ったところで始まらない。今は戦力を厚くして、移民船を守る必要があったのだ。
だが、合流さえ果たせれば、それも問題はなくなるだろう。その状況を確立する為に、どうせだからツヴァイの武装も試してみるつもりである。実はツヴァイには、アインスやヌルにはない武装が搭載されている。この武装を使うにはエンジンをフル稼働させる必要があり、それだけに過剰ともいえる力を宿している。どうせだからここで使って、実戦データを得ようと考えたのだ。
その旨は既にシュネにも伝えてあるし、彼女からもゴーサインが出ている。ゆえに、躊躇う気も逡巡する気も全然なかった。
「……シエ。リミッター、解除。オーヴァーロード、起動」
「了解」
シエが返事をした直後、機体の動力炉がフル稼働を開始。間もなく、機体のあちらこちらから過剰なエネルギーが噴き出した。この噴出するエネルギーの為に、ツヴァイの周辺には普通では考えられないエネルギーフィールドが形成される。また過剰なまでに上がったエンジン回転数により、機体が出せる速度が飛躍的に上がるのだ。
しかしながら、引き換えに負荷もかかる。だが、俺が憑依したこの肉体の持つポテンシャルと強化魔術。さらにはデュエルテクターもあるので、意識を失うことはない。もしデュエルテクターや魔術がなかった場合は、推して知るべしだけどな!
圧倒的な速度と、二十メートルぐらいしかない機体が出すとは到底思えないエネルギーを周囲に纏いつつ、敵のど真ん中へ突っ込んでいく。当たり前のように攻撃されるが、速度の違いからまず当たらない。勿論、全く当たらないということなどないが、当たったとしても全て機体の周囲に纏ったエネルギーに阻まれて見当違いの方向へと弾かれていく。そのお陰で、敵の中でフレンドリーファイアーが発生するが、それも込みで考えられた攻撃システムなのだ。
しかも過剰なエネルギーに触れれば、相対速度もあって敵は耐えられない。これがたとえ戦艦クラスの装甲でも、一発で打ち抜ける。そんな戦艦よりも装甲が薄い艦船が、耐えられる筈もなかった。
「どけ! 雑魚ども!!」
当たると幸いに、悉くを蹴散らしていく。動けるとはいっても中破していることで速度が落ちている敵の艦船、それから周囲に展開していた小型艦船を纏めて沈めて見せる。最後の締めとして、まだ小破程度の損傷しか負っていなかった敵艦船のエンジンを破壊したのだ。
「シーグヴァルド様。敵機影沈黙、周囲に脅威となる敵は存在しません」
「そうか……シエ、オーヴァーロード終了」
「了解しました。強制排出、開始します」
オーヴァーロードを止めたことで、まだ機内に残っている余剰分のエネルギーを強制的に排出する。こうしないと、純粋に機体へ過負荷が掛かってしまうのだ。その状況を回避する為に行われるエネルギーの強制排出を見ながら、念のためにセンサーで索敵する。だが先にシエの言った通り、周囲に敵の船影は全く確認されないのであった。
というわけで、敵を蹴散らしました。
もっとも、あくまで宇宙まで出てきた敵だけですが。
ご一読いただき、ありがとうございました。




