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第四十話~旅程~


第四十話~旅程~



 立ち寄ったエイムズ男爵領内の町となるエイムで、名も知らない冒険者四人組になぜか因縁を吹っかけられる。その四人組を撃退したあと、エイムの町を離れたのであった。





 エイムの町で受けた依頼を果たしながら、エリド王国の西部へ入った。

 元々もともと、エイムの町で受けた依頼は、次の町へ移動したからといって果たせるたぐいのものではない。街道沿いにある町全てではないが、それでも幾つかの町に存在する冒険者ギルドの支部へ荷物を届けることになっているからである。目的地こそ複数となるが、魔物の討伐などと違って街道から離れて進むというわけでもないので、やはり危険度は低めとなるのだ。

 最終的には、西部辺境伯となるオーデン辺境伯爵領内にある町へ届けることとなっている。だが、そう易々と依頼完了とはならない。幾ら街道沿いを進むからといって、脅威が全くないというわけではないからだった。

 それは、エイド王国の北部地域と西部地域の境目当たりに差し掛かった時のことである。そこで、野盗からの襲撃を受けたのだ。この辺りは地域の境目ということもあってか、領地持ちの貴族から敬遠されている領域でもある。下手をすると、お互いの地域に領地を持つ貴族の間で小競り合いとなりかねないからである。それだけに、治安へ力を入れていないともいえた。

 かといって、比較的治安がいいとされている別の街道を通ると、今度は酷く大回りとなる。各町への届け物への期限が決まっているわけではないが、届け物を届けるのは早い方がいいに決まっていた。

 それに迂回した場合、追加で必要経費が貰えるわけでもない。ゆえに、このまま最短距離となる街道を進むことにしたのだ。そして案の定、野盗に襲われたというわけである。

 だが、女子供が多いとはいえ、こちらは悪魔や魔物との戦いをこなしてきたという実績があるのだ。それに、敵の拠点で捕らえられていたセレンにしても、相手が悪かっただけでしかない。彼女もシルバーランクの冒険者であり、強さという意味では相応にあるのだから。

 つまり、子供となるキャスを含めて、そこら辺の盗賊ごときが襲撃を成功させられる相手ではないということだ。そして実際、俺たちは野盗を返り討ちにしていた。こいつらの首を持って町まで行けば、幾許かの金は貰えるだろう。まさか、昨日今日になって盗賊家業を始めたとは思えないからだ。

 とはいうものの、わざわざ生首を持っていきたいとも思わない。無論、何名かだけだがまだ何とか生き残っている盗賊を引き連れて次の町まで行くという手もある。だが、そこまでする必要も感じられなかった。

 これが金に困っているならまだ考えないでもないが、そういったわけでもない。そこで、返り討ちにした野盗全員の命を討った上で穴を掘り、そこに遺体を運んで火葬にして埋めることにした。

 戦闘の跡は幾らか残っているその場を離れ、街道を進む。途中にある町で冒険者ギルドに寄りつつ、やがて西部辺境伯の爵位を持つオーデン辺境伯の領内にある最初の町へと到着した。ここが依頼の最終目的地であり、この町の冒険者ギルドの支部へ残っている届け物を届ければ依頼は完了となる。さっそく冒険者ギルドへ赴いて、品物を届けることで依頼を完遂させた。

 その後、冒険者ギルド内で依頼を確認したが、これといったものはない。既に昼過ぎであり、時間的な意味でも目ぼしい依頼が残っている筈がないのだ。それだけに、誰も落胆していなかった。

 それから、冒険者ギルドで聞いた宿屋へ向かう。到着した宿屋で空き部屋について聞くと、問題なく確保することができた。

 その日は町を歩き、観光がてら情報を集めることにする。しかし、町にはこれといった観光施設があるでもない。そして、情報に至っても目ぼしいものはなかったのである。明けて翌日、早めに冒険者ギルドへ向かうとて建物内は混雑していた。

 これには当然だが、理由があった。基本的に、時間が朝の方が依頼は多い。つまり彼らは、少しでも条件のいい依頼を探す為にこうして集っているのだ。


「つまり、早い者勝ちと」

「そういうことね。それにいい依頼を受けられれば、報酬もよくなるし」

「なるほど」


 それでなくても冒険者は、死と隣り合わせという危険な職業だ。

 たとえ依頼の最中さいちゅうに死ななかったとしても、大怪我を負ってしまえば治療代が掛かる。そして怪我が治るまでは、依頼を受けることも難しい。それはつまり、収入が激減するどころか最悪の場合、途絶えてしまうと同義なのだ。

 そこで、万が一にもそういった事態になってしまった場合に備えるという意味でも、手元にお金がある方がいいに決まっている。世知辛いといえば世知辛いが、それが現実なのだ。


「さて。依頼を探しますか」

「シュネ、受けるの?」

「稼がないといけないのは、私たちも同じでしょセレン」

「それもそうね」


 とはいえ、条件は厳しい。何せ、俺たちは殆どがカッパークラスとなる。唯一、セレンだけがシルバークラスだが、カッパークラスのメンバーが多ければ、やはり全体的に低いランクの集団だと見られてしまうからだ。

 別に、報酬の額を考えないのならば依頼がないわけでもない。だが、ある程度の稼ぎを得る為にも、ずっとカッパークラスのままというわけにもいかない。そこで、通常依頼は諦めて恒常的に出ている討伐依頼をこなすことにした。

 戦闘能力を有するということは、冒険者ギルドも戦力に数えられるというメリットに繋がるので、ランク上げを推奨する。特に能力を有しつつも対象が低ランクの場合、なおさらなのだ。

 その後、冒険者ギルドで、ゴブリンやオークなどといった魔物の生息地域についての情報を仕入れた上で、町を出る。その提示された場所だが、町から半日ほど離れたところにある。そこには森があって、ゴブリンが多く生息しているらしい。どうも森の奥には大規模な集落があるという話だが、だからといって冒険者ギルドが何かをすることはない。そのようなことは、領主の仕事だからだ。

 しかし、依頼があれば冒険者ギルドも動くだろう。だが冒険者ギルドには、討伐以外の依頼は出ていない。だから冒険者ギルドも、討伐以外することはしないのであった。

 他にも、町から数日ぐらい掛かるが、最近になってだがオークを複数見つけたという情報も得られた。

 もっとも、情報を聞いた冒険者ギルドの職員からはオークの方はやめておけと忠告されてしまう。それはオークが、カッパークラスの冒険者では対抗できるほど弱くないことにある。これが中堅、要するにセレンのようなシルバークラス以上なら別となる。中堅以上の力を持つならば、大体勝つことができるからだ。


「折角の配慮だから、ここは従っておこう」

「だけど、実力詐欺よね。あたしより、シーグやシュネの方が強いのだから」

「それは仕方がないだろ。ギルドのルールで、そうなっているんだ」

「それは、そうだけどね」


 その後、町を出るとゴブリン討伐へ向かった。しかし、いざ到着してみるとたいした数は倒せない。これは、他にもゴブリン退治をしている冒険者がいるからだ。


「当然といえば、当然か」

「そうよねぇ……と」


 その時、ゴブリンをシュネが魔術で倒していた。

 それから、討伐した証明の部位を切り取ってから魔石をゴブリンから回収する。それから数体ほど倒したところで、日が暮れ始めた。そこで、森の外周部に停めてある馬車まで戻る。馬車自体は結界に包まれているので、襲われる心配も盗まれる心配もない。それでも一応、番としてビルギッタは残しておいたのだ。


「お帰りなさいませ」

「おう。食事、頼むな」

「お任せください」


 暫くしたのち、ビルギッタの用意した食事をとる。その後、念の為に人数を分けて夜番を決めてから就寝した。途中で夜番を変わったがその間に二回、ゴブリンの襲撃を受ける。最初夜番にたったシュネも一回襲われたそうだと夜番を変わる際に報告を受けたので、都合三回襲われたわけである。しかし結界がある以上、ゴブリン程度ではどうすることもできず俺たちに討伐されていた。

 翌日、午前中はゴブリンを狩り、昼食後には森を離れて町へ戻ることにした。夕刻までには到着し、そのまま冒険者ギルドの支部へ向かう。そこで討伐証明を渡して、狩った分の報酬を得ていた。

 また、報酬とは別に魔石の売却益も得る。たいした額でもないが、ないよりもましだ。このあとは、宿に戻り夜食をとってから眠り、次の日には宿をチェックアウトすると冒険者ギルドへ向かう。それはエイムの町にあったような、届け物の依頼があるかもと考えてであったが、残念ながらこの町にはなかったのでそのまま町を出ていくことにした。

 しかし、既にオーデン辺境伯の領内である。流石は、辺境伯領内だと言えるのだろう。たいした問題も発生せず、領都となるオデンへ到着していた。



 さてエリド王国西部だが、かなり活気がある地域となる。その理由は、隣国となるルドア王国との交易にあった。当然、交易の中心となるのは、西部地域に領地を持つ貴族の中で一番国境に近い位置に領地を持つオーデン辺境伯である。その辺境伯の領都となるのが、今いるオデンの町となる。そのような立地であるから、町に活気がない筈がなかった。

 そのオデンの町には、観光名所が二つある。一つは温泉であり、もう一つは間欠泉であった。この町から離れた場所に火山があるので、その影響らしい。しかし、ここ百数十年のあいだ、噴火したという事実はない。だが、それ以上に時をさかのぼれば何度か噴火した記録がある山でもあった。

 そしてこれは、幸いだと言えるだろう。どれだけ過去に遡っても、オデンの町へ大きな被害が出たという記録もない火山でもあった。

 

「しかし、このフィルリーアで、温泉というか温泉プールに入れるとは思わなかった」

「そうね。オルとキャスは、楽しかった?」

『うん!』


 そう。

 オデンの町にある温泉は、いわゆる温泉プールとして観光事業に利用されていた。その温泉プールで俺たちは、午前中から夕方前までのんびりと過ごしていたのだ。だが、オルとキャスの兄妹もそうであったかといえば違う。特にキャスが、それこそ全力で遊んでいたのだ。

 その為かキャスは今眠りこけており、俺が背負っている。その眠っているキャスの顔も、シュネが言うには楽しそうであるらしい。

 残念ながら、背負っているので見えないのだが。

 因みにメンバーのうちでただ一人、セレンだけは温泉プールに同行していない。彼女は冒険者ギルドに知らせたあと、一人で亡くなったかつての仲間の知り合いなどと会っていたからである。初めは、温泉プールに行くのを一日延ばそうかと言ったのだが、セレンは首を振って断っていた。


「気にしないで楽しんで。それにあたしが二人の行く末を告げること、それがけじめだと思うから」

「そうか」

「それに、時間がどれくらい掛かるか分からない。その意味でも、別行動の方がいいでしょう?」

「分かった」


 もし早く終れば合流すると言っていたが、結局のところセレンとは合流できず、彼女と再会したのは確保した宿でであった。その表情には、疲れが見える。だが、浮かべている表情に、うれいはなかった。


「セレン、どうだったの?」

「うん。一通り終わったわよ」

「それは何よりね」

「ええ。ところで、間欠泉は行った? もしまだなら、明日はあたしが案内するわ」


 翌日、宿屋で朝食をとってから、セレンの案内で間欠泉へと向かう。その際には、馬車に乗った。実は観光名所となっている関係からか、直行の馬車があるのだという。大体町の各地域から出ているその馬車に乗り、間欠泉へと向かった。


「しかし、警備に力を入れているなぁ」

「重要な観光地らしいからね」


 思ったよりも、警備が厳しいのだ。しかし立地条件を考えれば、不思議ではないとも言えるだろう。何せ、柵に囲まれた上に警備の兵がいるが、間欠泉がある場所自体は町の外であるのだ。

 間欠泉の観光事業が町の、ひいてはオーデン辺境伯の財政に寄与しているのだから、観光をする者の安全を確保する必要があったのだろう。だからこそ、厳重警備というわけだ。

 もっとも、騒ぎを起こしたいわけでもないので、警備が厳重であろうが気にもならないのだが。

 やがて到着してから三十分ほどたっただろうが。間欠泉より熱湯を噴き出しているところが見学できた。おおよその目測だが、二十メートルは吹き上がっているので、中々なかなかの迫力がある。これにはキャスよりも、オルの方が興味津々きょうみしんしんであった。


「すっごいなぁ」

「気に入ったか。オル」

「勿論だよ、シーグ兄貴!」


 間欠泉から噴出している熱水を嬉しそうに見ているオルの頭を、俺はゆっくりと撫でる。だが、オル自身は気付いていない。完全に、間欠泉へ釘付けだったからだろう。それから何度か、間欠泉が吹き上がるのを見たあとで、その場をあとにする。宿屋へと戻る途中食堂に入り、地元の料理で夕食をとる。その食事の間も、オルは少し興奮気味であった。

 それだけ、間欠泉が気にいったのだろう。実に微笑ましい。

 その後、食事を終えると宿屋へ戻ってきたのだった。


タイトル通り、ですかね。

何気に初の討伐依頼ですけど。


ご一読いただき、ありがとうございました。

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