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第9話「背中を押す言葉」

第9話です。


ふたばが奈緒と再会し、自分の気持ちと向き合っていきます。

少しだけ、物語が深く動き出す回になります。


ぜひ最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

次の日。


 ふたばは、大学近くのカフェにいた。


 窓際の席。


 見慣れた景色。


 でも、心の中は落ち着かない。


⸻


「で?」


 向かいに座る奈緒が、ストローをくわえながら言う。


「何があったの」


⸻


「……別に」


「いや絶対なんかあるでしょ、その顔」


 即答だった。


⸻


「昨日さ、打ち上げで」


 ぽつりと話し始める。


 美月のこと。


 れいじとの距離。


 自分の中のモヤモヤ。


⸻


 奈緒は途中で一度も口を挟まず、最後まで聞いていた。


⸻


「……で?」


「でって?」


「それで、どう思ったの」


⸻


 言葉に詰まる。


⸻


「……なんか、変な感じで」


「変って?」


⸻


「……嫌だった」


⸻


 口にした瞬間、自分でも驚く。


⸻


「ふーん」


 奈緒は少しだけ口元を緩める。


⸻


「それさ」


 一拍置いて。


⸻


「好きなんじゃないの?」


⸻


「……え」


⸻


 心臓が跳ねる。


⸻


「いや、でも……」


「いやでもじゃないでしょ」


 奈緒はあっさり言う。


⸻


「わかりやすいよ、ふたば」


⸻


 何も言えない。


⸻


「気になる人が、他の女の子と仲良くしてたら嫌」


 指を折りながら言う。


「それ、もう答えじゃん」


⸻


「……」


⸻


 昨日、気づいたはずの気持ち。


 でも、誰かに言われると――


⸻


 逃げられない。


⸻


「……好き、なのかな」


 小さく呟く。


⸻


「“かな”じゃなくて、好きでしょ」


⸻


 奈緒は迷いなく言った。


⸻


 その一言で、はっきりする。


⸻


 ああ。


⸻


 やっぱり、そうなんだ。


⸻


「……そっか」


 ふたばは少しだけ笑った。


⸻


 でも。


⸻


 すぐに、表情が曇る。


⸻


「でもさ」


「ん?」


⸻


「どうすればいいのかわかんない」


⸻


 正直な気持ちだった。


⸻


「それに……」


 少し迷ってから続ける。


⸻


「就職も、まだちゃんと決めてなくて」


⸻


 奈緒が少しだけ真剣な顔になる。


⸻


「まだ迷ってるの?」


「……うん」


⸻


「バンド、でしょ?」


⸻


 図星だった。


⸻


「……やりたい」


 はっきりと言う。


⸻


「でも、怖い」


⸻


 将来。


 不安。


 全部、見えてしまう。


⸻


「そっか」


 奈緒は少しだけ笑った。


⸻


「じゃあさ」


⸻


 ふたばを見る。


⸻


「どっち選んでもいいよ」


⸻


「え?」


⸻


「正解なんてないし」


⸻


 ストローを回しながら続ける。


⸻


「でもさ」


⸻


 一瞬だけ、優しい顔になる。


⸻


「後悔しない方、選びなよ」


⸻


「……後悔」


⸻


「ふたばさ」


 奈緒は少しだけ笑う。


⸻


「今の顔、めっちゃ楽しそうだよ」


⸻


「……え?」


⸻


「バンドの話してるとき」


⸻


 ドキッとする。


⸻


 そんな顔、してたんだ。


⸻


「好きなことも、好きな人も」


⸻


 奈緒は立ち上がる。


⸻


「どっちも中途半端にするのが、一番もったいないよ」


⸻


 その言葉が、まっすぐ胸に刺さる。


⸻


「……うん」


⸻


 ふたばは、小さく頷いた。


⸻


 まだ答えは出ていない。


⸻


 でも。


⸻


 進む方向は、少しだけ見えた気がした。


⸻


⸻


 カフェを出る。


⸻


 空は、少しだけ明るかった。


⸻


⸻


 昨日とは違う。


⸻


 確実に、何かが変わっている。


⸻


⸻


 恋も。


⸻


 音楽も。


⸻


 全部が、動き出している。


⸻


⸻


 今日もまた、選ぶ日になる。


第9話を読んでいただき、ありがとうございます。


ふたばが自分の気持ちに向き合い、恋と進路という大きなテーマが動き始めました。

奈緒の言葉が、これからの選択にどう影響していくのかも大きなポイントになっていきます。


ここからはバンドだけでなく、それぞれの想いや関係性も大きく変化していきますので、ぜひ引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです。


よろしければ、感想や評価もいただけると励みになります。

引き続きよろしくお願いします。


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