第5話「最初のステージ」
第5話です。
バンドとしての最初の大きな一歩、初ライブが決まります。
不安と期待が入り混じる中で、それぞれの想いが動き出していきます。
ぜひ最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
「で、いつライブやる?」
はじめの一言で、空気が止まった。
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「……は?」
ふたばは思わず聞き返す。
「いや、バンド組んだんだし、出るでしょライブ」
当たり前のように言う。
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「まだ早いだろ」
れいじが淡々と返す。
「えー?でもさ、やらないと始まんなくない?」
「それはそうだけど……」
はじめの言葉に、美月も少し考えるように視線を落とす。
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「……出るなら、早い方がいい」
ぽつりと、美月が言った。
「え?」
「どうせやるなら、さっさとやった方がいいでしょ」
ベースを軽く鳴らしながら続ける。
「今のままでも、どこまで通用するか知りたいし」
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「……確かに」
れいじが短く答える。
「じゃあ、決まりだな」
「え!?」
ふたばだけが取り残される。
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「ちょ、ちょっと待ってください!」
「何」
「私、まだ全然……!」
言いながら、自分でもわかっていた。
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「だから出るんだろ」
れいじはあっさり言った。
「え……?」
「できてから出るんじゃ遅い」
その言葉は、冷たいようで――
どこか真っ直ぐだった。
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「大丈夫大丈夫!」
はじめが笑う。
「最初なんてみんなそんなもんだって!」
「いやでも……」
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「怖い?」
美月がふたばを見る。
「……はい」
正直に答える。
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「じゃあ、ちょうどいいじゃん」
「え?」
「そのまま出れば」
少しだけ口角を上げる。
「変に慣れてるより、そっちの方が刺さることもあるし」
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その言葉で、胸が少し軽くなる。
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「……やります」
気づけば、そう言っていた。
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「決まり!」
はじめが手を叩く。
「よし、初ライブだ!」
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「日程は任せろ」
店長がカウンターから顔を出す。
「来週、ちょうど空いてる枠あるぞ」
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「来週!?」
ふたばの声が裏返る。
「ちょうどいいだろ」
れいじが言う。
「準備する時間はある」
「いや、全然足りないです!」
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「足りないくらいがいいんだよ」
美月がぼそっと言う。
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少しの沈黙。
れいじがギターに手をかける。
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「……1曲目は決まってる」
「え?」
ふたばが顔を上げる。
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「“今日が吉日”」
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静かに言った。
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「俺がずっとあたためてた曲だ」
ぽつりと続ける。
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「これでいく」
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その言葉に、空気が変わる。
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曲名。
バンドの核。
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“今日が吉日”
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それは、ただのタイトルじゃない。
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ここから始まる、自分たちの音。
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「……やります」
ふたばはもう一度、はっきりと言った。
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心臓がうるさい。
怖い。
でも――
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この曲を、歌いたい。
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最初のステージ。
まだ何者でもない自分たち。
それでも。
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この一歩が、すべてを変える。
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今日が、吉日になる。
第5話を読んでいただき、ありがとうございます。
ついに初ライブが決定しました。
そして、れいじがあたためてきた楽曲「今日が吉日」が、物語の核として動き出します。
次話はいよいよライブ本番。
ふたばがどんなステージを見せるのか、ぜひ楽しみにしていただけたら嬉しいです。
よろしければ、感想や評価もいただけると励みになります。
引き続きよろしくお願いします。




