第4話「FirstDay」
第4話です。
少しずつ形になってきた四人の関係。
今回は、バンドとしての“名前”が決まる大事な回になります。
ぜひ最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
四人で音を出した、あの日から数日。
ふたばは、ライブハウスに隣接した練習スタジオに通っていた。
扉を開けると、少しこもった音と機材の匂いが広がる。
ここが、今の自分の居場所になり始めていた。
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「そこ、もう一回」
れいじの声が飛ぶ。
「……はい!」
何度も繰り返す。
息が続かない。
音程も安定しない。
悔しい。
でも――
少しずつ、前に進んでいる感覚があった。
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「いい感じじゃん」
ドラムの後ろから、はじめが笑う。
「最初より全然いいよ」
「ほんと?」
「ほんとほんと」
その一言で、少しだけ力が抜ける。
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「……まあ、悪くない」
美月がベースを鳴らしながら言う。
「まだ荒いけど」
「うっ……」
「でも、ちゃんと前に出てきてる」
素直じゃない言い方。
でも、ちゃんと見てくれているのがわかる。
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「……そろそろ決めるか」
れいじがギターを置いて言った。
「何を?」
はじめが首をかしげる。
「名前」
一瞬、空気が止まる。
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「バンド名?」
ふたばが聞き返す。
「ああ」
「確かに、そろそろ欲しいよな」
はじめが頷く。
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「なんかある?」
「急に言われてもなぁ」
「美月は?」
「……別に」
興味なさそうに肩をすくめる。
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「ふたばは?」
「え、私!?」
突然の指名に戸惑う。
でも――
頭の中に浮かんだのは、あの日のことだった。
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全部が終わったと思った日。
でも――
あの歌で、すべてが動き出した日。
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「……“はじまりの日”って、どうですか」
小さく、でもはっきりと口にする。
「私にとって、あの日が……その……」
少し照れながら続ける。
「全部が変わった日だったので」
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一瞬の沈黙。
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「……いいじゃん」
最初に笑ったのは、はじめだった。
「めっちゃいい!」
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「英語にするか」
れいじが呟く。
「……First Day」
その響きが、部屋に静かに広がる。
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「いいね」
美月が小さく頷く。
「シンプルで、覚えやすい」
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「決まりだな」
れいじが言う。
「FirstDay」
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その瞬間。
ただの集まりだった四人が――
ひとつのバンドになった気がした。
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「よろしくな、FirstDay」
はじめが笑う。
「なんか実感わいてきた!」
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ふたばは、胸の奥がじんわりと熱くなるのを感じていた。
最悪だったはずの日。
でも――
それが、すべての始まりだった。
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この場所で、音を重ねて。
何度もぶつかって。
少しずつ、前に進んでいく。
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まだ何者でもない。
でも――
確かに、ここから始まる。
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今日という日が、特別になっていく。
第4話を読んでいただき、ありがとうございます。
ついにバンド名「FirstDay」が決まりました。
ここから四人は、本当の意味で一つのバンドとして動き出していきます。
まだ始まったばかりですが、これからどんな音を作り、どんな景色を見ていくのか、ぜひ楽しみにしていただけたら嬉しいです。
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引き続きよろしくお願いします。




