第18話「選ばなかった道」
第18話です。
れいじの過去に触れ、これまで見えていなかった一面が明らかになります。
物語の大きな転換点となる回です。
ぜひ最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
ライブから数日後。
ふたばは、どこか落ち着かない日々を過ごしていた。
AIDAレコードの名刺。
あの場での、れいじの反応。
「……なんで断ったんだろう」
気になって仕方がなかった。
その日も、スタジオで練習が始まる。
音を出している間は忘れられる。
でも、ふとした瞬間に思い出してしまう。
「……どうした?」
れいじの声。
「え?」
「今日、集中してない」
図星だった。
「……すみません」
「別にいいけど」
一瞬、迷う。
でも――聞きたい。
「……あの」
「なんで、断ったんですか」
空気が少し止まる。
「AIDAレコードの話」
れいじは少し視線を外した。
「……興味ないから」
短い答え。
でも、それだけじゃないとすぐにわかる。
「……本当ですか」
思わず聞き返す。
少しの沈黙。
「……前に、やってた」
「え?」
「デビュー」
言葉の意味を理解するのに、少し時間がかかる。
「……え?」
「一回だけな。AIDAで」
頭が真っ白になる。
「でも、やめた」
「なんで……?」
自然と、言葉が出る。
「……つまんなかった」
あまりにもあっさりした一言。
「用意された曲。用意された音。用意された言葉」
「全部、決まってた」
少しだけ表情が変わる。
「俺の音じゃなかった」
その言葉に、息をのむ。
「……だから、やめた」
静かな声。
でも、はっきりとした意志があった。
「……すごいですね」
思わず口にする。
「え?」
「普通、できないと思います」
チャンスも、安定も、全部捨てるなんて。
「……別に」
れいじは少し目を細める。
「やりたくないことやっても、意味ないだろ」
シンプルだけど、重い言葉。
ふたばは少しだけ下を向く。
(……私は)
まだ迷っている。
でも、れいじはもう決めている。
自分の道を。
「……かっこいいです」
ぽつりと呟く。
「……は?」
「自分の音、ちゃんと選んでるところ」
れいじは少し黙る。
「……当たり前だろ」
少しだけ照れたように視線を逸らす。
その仕草に、胸が少し高鳴る。
「……でも」
ふたばは顔を上げる。
「今の音、好きです」
一瞬、れいじの目が止まる。
「FirstDayの音」
まっすぐに言う。
「すごく好きです」
ほんの少しの沈黙。
「……そっか」
短い返事。
でも、その声は少しだけ柔らかかった。
過去の話。知らなかった一面。
少しだけ距離を感じた。
でも同時に、少し近づけた気がした。
音楽も、想いも、まだ途中。
それでも、確かに同じ方向を見ている。
それだけで、十分だった。
選ばなかった道が、今の自分を作っていた。
第18話を読んでいただき、ありがとうございます。
れいじが選ばなかった道と、その理由が明らかになりました。
彼の音楽に対する考え方や覚悟が、少しでも伝わっていれば嬉しいです。
ふたばにとっても、この出来事は大きな意味を持つものになっていきます。
ここから二人の関係や、バンドとしての進む道も少しずつ変わっていきます。
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引き続きよろしくお願いします。




