第14話「声にした想い」
第14話です。
ふたばの想いが形になり、楽曲として完成していきます。
これまで積み重ねてきたものが、一気に動き出す回です。
ぜひ最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
スタジオに、四人が揃う。
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「で?」
はじめがニヤニヤしながら言う。
「できたの?」
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ふたばは、小さく頷いた。
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「……一応」
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手には、書き込まれたノート。
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何度も消して、何度も書き直した跡が残っている。
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「見せて」
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れいじが手を差し出す。
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少しだけ迷ってから、ノートを渡す。
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れいじは黙って読み始める。
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時間が、やけに長く感じる。
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(……やっぱりダメかも)
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心臓がうるさい。
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「……いいじゃん」
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「え?」
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「そのままでいい」
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顔を上げる。
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「ちゃんと“自分の言葉”になってる」
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その一言で、胸が一気に軽くなる。
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「ほんとですか……」
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「嘘言う理由ないだろ」
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少しだけ笑う。
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「よし、合わせるか」
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れいじがギターを持つ。
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はじめがスティックを構える。
美月がベースを肩にかける。
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空気が変わる。
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音が鳴る。
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何度も聴いたはずのメロディ。
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でも。
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今日は違う。
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そこに。
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自分の言葉がある。
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ふたばは、マイクを握る。
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一瞬、怖くなる。
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でも。
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目を閉じる。
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思い出す。
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書いた言葉。
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自分の気持ち。
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全部。
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そのまま。
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声にする。
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歌い出す。
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“あなたの何気ない一言で――”
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声が、震える。
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でも。
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止まらない。
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“こんなにも嬉しくなるなんて――”
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言葉が、胸の奥から溢れてくる。
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ごまかせない。
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飾れない。
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全部、本音だった。
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“気づかないふりしてた想いが――”
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歌うほどに、感情が強くなる。
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れいじの顔が浮かぶ。
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美月の曲が、頭をよぎる。
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全部が繋がる。
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“もう隠せないほど 大きくなってた――”
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「……っ」
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気づけば、涙が滲んでいた。
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でも。
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止めない。
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最後まで、歌い切る。
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音が止まる。
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静寂。
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「……やば」
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はじめがぽつりと呟く。
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「めっちゃいいじゃん」
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「……うん」
美月も小さく頷く。
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れいじは、何も言わない。
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ただ、じっと見ている。
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「……どうでしたか」
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声が少し震える。
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一番、聞きたい人の答え。
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「……いい」
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短く。
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でも、はっきりと。
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「ちゃんと届く」
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その言葉で。
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全部、報われた気がした。
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「……ありがとうございます」
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ふたばは、強くマイクを握る。
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怖かった。
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でも。
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言葉にしてよかった。
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伝えてよかった。
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音楽に乗せて。
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想いを声にして。
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初めて。
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本当の意味で、歌えた気がした。
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そして。
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もう一つ、気づいてしまう。
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この気持ちは。
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もう、戻れない。
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前に進むしかない。
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音と一緒に。
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心も。
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大きく、動き出していた。
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それはもう、止められない想いだった。
第14話を読んでいただき、ありがとうございます。
ふたばの言葉が音に乗り、ひとつの楽曲として形になりました。
音楽と想いが重なったことで、彼女自身も大きく前に進んだ回になったと思います。
ここからはイベントに向けて、さらに物語が動いていきます。
バンドとしても、そしてそれぞれの関係も、どう変わっていくのかぜひ楽しみにしていただけたら嬉しいです。
よろしければ、感想や評価もいただけると励みになります。
引き続きよろしくお願いします。




