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第4話 10才/序盤

第4話となります。

ご意見ご感想などお待ちしております。


※サブタイを修正しました。

その日、私は執事のピエールに連れられてペラック・ベルドリッチ氏の屋敷を訪問した。


玄関先にはベルドリッチ家の使用人が私たちを応対してくれた。


使用人はどこかの騎士だったのか隻眼で強面の男性だった。


「失礼します。私はペパリッチ家の執事ピエールと申します。本日は我が主でありますファブリツィオ・ペパリッチが子息、グヤコールス様よりペラック・ベルドリッチ様へお目通りをお願いしたく参上しました」


「お待ちしておりました。お話は伺っております。こちらへどうぞ」


私たちは使用人に案内されて応接室へ移動した。


「先生をお呼びしますのでしばしお待ちを」


使用人はそう言うと応接室から退室した。


私はペラック氏が来るまで彼のことを考え込むことに費やした。


両親曰く、ペラック・ベルドリッチと言う人は偏屈で有名だそうだ。


それでいて両親はお祖母様がペラック氏と接点があると知らなかったそうで、


「お祖母様は変わってらっしゃるのよね」


母はいつものように比較的落ち着いた口調で話したが私も時戻りの前の記憶で覚えている限りではそれほど有名な剣術使いではなかった。


何が言いたいかと言うとべラック氏に印象がないのだ。


時戻りの影響ではない。


本当に知らない人だった。


そんなペラック氏を紹介してくれたお祖母様は何を思って私に彼を紹介してくれたのか。


それはすぐに理解することになる。


「やあ、お待たせした」


しばらくして応接室にべラック氏が入室すると私に軽く挨拶をした。


微笑みながら挨拶するべラック氏。


見た目は黒の短髪に黒目でそれなりの身長の持ち主であるべラック氏の軽さに私は驚く。


この人は本当に強い剣術使いなのか疑問に思ってしまう。


「君がグヤコールス・ペパリッチ君だね」


「は、はい」


私は立ち上がると彼に頭を下げる。


「ボヴァリー様の親類の方と聞いてるけど、今日はどのような要件で来たんだい?」


「お話の前にまずこちらに目を通して頂けますか?」


私はそう言うとお祖母様の手紙をペラック氏に渡した。


「おやおや大層なものじゃないか」


お祖母様の手紙を受け取ったべラック氏はすぐに封を開けると内容を確認した。


手紙を読みながら時より「うんうん」や「なるほどね」と言いながら一人呟く姿が何故か面白い。


「なるほどね」


手紙を読み終えたべラック氏は手紙をテーブルに置く。


「ボヴァリー様のお話は理解したよ」


「ありがとうございます」


「でもね、問題があるだよね」


べラック氏は困った顔をする。


「実は君のような年齢の子を教えたことはないんだよね」


「そうなんですか?」


「そうそう」


べラック氏がけろりと話ものだから私はなんとも言えない状態になる。


本当にこの人で大丈夫なのか不安だ、


「それに僕の剣術は特殊なのだよ」


「はぁ」


私は何と言ったらいいか分からなかった。


そもそも剣術に特殊とはどんなものか想像もつかない。


「話だけじゃわからないよね。そうなるとさっさと見せた方がいいか」


そんな私が理解が追いつかないでいるとべラック氏はまた独り言を呟いた。


「じゃあ、鍛錬場まで案内するから僕について来なさい」


私は言われるままにべラック氏に鍛錬場まで案内された。


驚いたことに鍛錬場とは名ばかりの運動場であり、隣には廊下のような細い建物に訓練で使う武器が置かれているだけだった。


「驚くのは無理ないさ。これが僕が弟子に教える際に使う鍛錬場。周りを見てごらん」


私は言われるままに周囲を見回す。


鍛錬場の周りは森や山々が見える。


耳元では川があるのか水が流れる音が聞こえる。


「僕はね、実戦を主とした剣術を教えているんだ。剣術を主体に短剣術や馬術に至るまで幅広い武術を扱えるようにしている。そのためにこの場所全てを鍛錬場にしているんだ」


「この場所全てをですか?」


「ああ。時には昼夜通して山野で修行を行なったりするので生半可の体力や気力では到底こなせないので入門した者たちの多くは辞めていくんだ」


「昼夜通して・・・」


「おかげ様でなかなか貧乏この上ないものさ」


自虐的に笑うべラック氏の話を聞いた私は思わず身震いした。


その理由は半分は不安と恐怖、もう半分は未知なるものへの興味。


昼夜通して山野で修行とはどんなものなのか。


想像すると自然と鼓動が高まっている。


そして、お祖母様が何故べラック氏を紹介したのかもなんとなく理解した。


要はお祖母様曰く、実戦に裏打ちされた剣術を覚えれば今後何があっても対応できると言う考えなのだと。


「入門するかしないかは君次第だがどうするかね?」


「入門します」


私は迷いなく答えた。


それは胸の鼓動がすべてを物語ってくれている。


「さすがボヴァリー様の親類の方だね。無理だと思ったら辞めれてもいいからね」


べラック氏はそう言うと最後まで私に気遣ってくれた。


こうして私はべラック氏、いや、べラック先生のの弟子となった。



翌日より私はべラック先生の指導を受けることになる、


べラック先生の指導はわかりやすかった。


「まず、この剣を毎日100回振りなさい」


べラック先生から渡された木剣は九歳の子供には少し重いものだった。


「実戦の時にもっとも大切なことは何かわかるかい?」


「いえ」


「剣を握り続けることだ。戦っている時に剣を手放せばそれで終わり。一方で剣を握り締めていれば追い詰められようとも何か道筋が現れるものだ」


そのためにも剣を沢山振ることが大切なのだとべラック先生は教えてくれた。


その話に私は頷いて納得した。


私はこの日より剣を毎日振り続けることになる。


最初はべラック先生の指示通りに剣を100回振る。


最初は問題なく剣を振れていたが、三日目になると筋肉痛のためか100回振り終える時間が遅くなっていった。


握力も衰えてくるのを我慢しながら私はひたすら剣を振り続けた。


訓練のたびに屋敷に戻るとすぐに私は食事のままならない状態になり疲れのあまりベットに横になって眠った。


そうなると両親も兄も心配してくる。


家族団らんの食事に参加しないのだから心配するのも無理はない。


だが、私にとってはこの訓練はとても充実したものだった。


時戻りの前に経験したことのないものだったからだ。


記憶の限りだと私は剣術などあまり得意ではなかったし、剣を振れる同級生や知り合いが羨ましい気持ちになったこともあった。


もしかすると私の見た目がそのために弱弱しく見えてあのようなことになったのかもしれない。


やがて剣を振ることに慣れてくると私は疲れや筋肉痛はなくなり握力も衰えることがなくなる。


その様子に満足したべラック先生は剣を振る回数を増やしていった。


100回だった素振りが三か月後には200回、さらにその三か月後には300回と回数が増えてゆく。


これが九歳の間、ひたすら続いたが私は文句も言わず剣を振り続けた。



この九歳の時期は私の日常での変化はなかった。


婚約者になるエミーナ・・ナイトレイとの出会いはなかったし、元凶たるパルダビュー・アリンガローサ王子と邂逅することはなかった。


お祖母様からは月に1度だが手紙が届いた。


その内容はもちろん時戻りの話が主な内容だった。


過去のペンダントの持ち主を調べているとのことだったが、ペンダントを購入した宝石商がすでに亡くなっているため調査に時間がかかっていると言う。


無理もないことだった。


お祖母様が若い頃に購入してから長い年月が経過している。


それまでに幾人もの持ち主を変えているだけでも足枷になっているのだ。


私はお祖母様にべラック先生の元で剣術を習っている旨を伝えながらペンダントの件は待ちますので無理せずにお願いしますと感謝の返信した。


また、お祖母様はペンダントのこと以外で王都の近況を教えてくれた。


私の婚約者だったエミーナ・・ナイトレイ嬢やすべての元凶であるパルダビュー・アリンガローサ王子のことも手紙の中で何度か登場していた。


二人とも私同様にまだ幼いこともあり何も噂などなかったのだが、王家の中で王妃派と側妃派などの権力闘争が行われいることを教えてくれた。


・・・そうだった。


時戻りの前もそんなお家騒動があったと思い出した。


この時は王妃派が勝利してパルダビュー王子が後継者となった。


その後だ。


王子が私に接触してきたのは。


何かにつけて私に絡んできた。


もし王妃派の勝利がきっかけになったのなら、今回は逆に負けてもらいたいと願う。


何より今の私は時より悪夢を見る時があるが、そのすべてがパルダビュー王子に口づけをされたあの光景なのが気に食わない。


「一番いい方法は彼らに会わないことがいいんだけどね」


そのためにも私は自身の人生を変える戦いを続けるのだ。


そして、十歳になった私に変化が訪れた。


べラック先生の教えのおかげで私の体格に変わったのだ。


肩幅は広くなり両腕には筋肉がついた。


なにより身長が時戻りの前より一気に伸びた。


私は自身の成長に嬉しくなった。


私は確実に成長している。


そして、嬉しさで弾む私にべラック先生はこう告げた。


「そろそろ次のステップに行こうか。そうだね、今度は本格的に打ち込みをしよう」


こうして私は剣術使いへの道をさらに歩んでいった。


私が断罪されるまで残されたのは10年。


この時もまだ時間があるかどうかさえわからなかった。


だが、時間は確実に経過を続けていることに変わりなかった。


〇登場人物


グヤコールス・ペパリッチ

この物語の主人公です。九歳になりべラック先生に入門しました。

この1年はひたすら剣を振る日々でしたが体格が成長し凛々しくなってきています。



ペラック・ベルドリッチ

元騎士で優秀な剣術使いです。ざっくばらんな性格でグヤコールスに剣術を教えています。

実戦向きの剣術を教えているので後にこの剣術はとても役に立つことになります。



ボヴァリー・ペパリッチ

グヤコールスの祖母です。ペンダントの秘密を調べてくれています。

孫のグヤコールスの事が気に入っているようです。



ピエール・エステバン

ペパリッチ家に長年勤める執事です。グヤコールスのことをいつも優しく見守ってくれています。



パルダビュー・アリンガローサ王子

グヤコールスの人生を不幸にしたです。今でも悪夢として出てきます。

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