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ワールドロード  作者: オメガ
一章・I trust you forever
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仲間

「何の因果か、また此処へ来る事になるとはなぁ……」


 出発前に琴音から渡された世界地図を見る。ヴォール王国やアルファ村等が在るナトゥーア大陸から、北へ進んだ先に在る大陸へ今、船が停泊する。

 魔法を使い高速で海を駆ける船・魔法船から降り、誰の同伴も無しに足を着けたこの場所は──忘れる筈もない。トリスティス大陸だ。

 今回は何処かから紅貴紀様、と指名した依頼書が伝書鳩経由で舞い込んだ。アナメやシュッツ達はこの時代には居ない、ならば誰か? その疑問を確かめるべく、この依頼を受けた。

 当時と地形に変わりはない。イブリース撃破後の、緑が戻った大地のままだ。脚に魔力を込めハイジャンプで跳躍を繰り返す内、例の祠に虹色の亀裂を発見した。


「これは──次元穴?」


 自分達が『次元穴』と呼ぶモノが宙に浮かんでおり、一応データ収集も含めて左手に持った携帯でスキャン。

 結果報告として西暦四千十六年・四月三日と出たが、これは……一体? 不思議に思い、無用心と分かっていながらも、恐る恐る右手を亀裂へと伸ばす。

 すると──ペンダントの石と右手の甲が眩しいまでに光輝き、少しすると亀裂共々収まった。何が起きているのかサッパリ分からず、困惑していたら誰かがやって来た。


「貴紀殿? おぉ、貴紀殿じゃないか!」


「シュッツ!? お前、どうして……」


「どうしても何も。祠を直して、これからは生け贄なんか使わず祀る為さ」


 目の前へスコップ片手に現れたのは、蜥蜴人(リザードマン)の勇者・シュッツ。此方の言葉が悪かったんだろう。噛み合ってそうで噛み合ってない、そんな印象を受ける会話だ。

 何はともあれ、詳しい話を訊く為。穴の中にある祠の掘り返しと引き上げ、穴の埋め直しを手伝い、情報の擦り合わせも含めて話をすると。


「どうやら貴紀殿と関係性を持った者達だけが、この時代に飛ばされたらしい」


「ディザイア達ドワーフや北の集落連中も? 一体どう言う事だ……」


 話し合い、情報の擦り合わせをしても全く訳が分からなかった。ただ、遺跡の壁画に変化があり、奥に隠し通路が在ったと言う事や。

 何故か自分と関わりがあった者達だけが助かり、現在に飛ばされたとも分かった。いやまあ、だからどうした? って話なんだがな。


「コレを見てくれ。壁画を真似てリーベが描いてくれたんだが、分かるか?」


 腰に巻き付ける革製の小さな鞄から、一枚の洋紙を取り出し見せてくれた。現物と見比べてないから上手い下手云々は判らないが、個人的には上手い。

 内容に関しては──うん、何となくだけど分かる。えぇっと……世界を闇が覆う時、赤き光の使者何処(いずこ)より現れ終焉の闇、払わん。

 されど汝ら、ゆめゆめ安心する事なかれ。闇と光は表裏一体。我らと汝ら次第で光は闇へ呑まれ堕ち、闇は光に取り込まれ輝く。彼の者、決して神に在らず。

 惑星(ほし)の守護者でもない。終焉の破壊者、それは『終わりを破壊する者』なり。故に終焉をもたらす我々さえも、破壊対象となる諸刃の刃と心得よ。

 ってな感じに書かれていると、シュッツに教えた。すると何やら俯いて考え始め、顔を上げて口を開いた。


「コレは貴紀殿の事ではないのか?」


「だろうな。けどそんな能力、取り戻してたっけか?」


 思い出す為、それらしいのがなかったかと考える。あの時かな? と思ったのは、二度目のファウスト戦で負けた後じゃなかろうか?

 左手の甲が光り出したあの時。結局使える様になったと確信しつつも、ソレっぽいスキルなり能力は使っていなかったしな。何の力かさえ今も不明だし。


「そうだ。新しくなった集落へ行かないか。貴紀殿が来たとなれば、兄者やリーベ達も喜ぶ」


「いや、今回は依頼人不明の依頼を受けて来たんだ。此処の現状確認も含めてね」


「内容もトリスティス大陸へ来られたし、だけだな。なら寧ろ、一緒に行って聞き回った方が早い」


 そんな事より! ってな感じの嬉しそうな表情でほぼ壊滅状態だった人間の集落・フールへ一緒に行こうと誘われたが、差出人不明とは言え依頼は依頼。

 事情を説明すると、それなら尚更と言われ、提案に乗り南方にある集落・フールへと向かった。インサニアの襲撃があったまま……と思いきや、綺麗になっている。


「三種族の集落・トラストへようこそ。此処は旧集落・フールを三種族で作り直した場所」


「トラスト?」


「遥か昔に存在した異国の言葉で信頼を意味するとか。あの悪夢を未来永劫語り続ける為、中央の石碑に刻みそう名付け……お!」


 新しく生まれ変わった集落・トラストを案内して貰うと、住民達が此方を見ては小声で何かを話している様子が見えた。まあ、気にしたってしゃーない。

 集落の中央部に三メートル台はある六枚の石碑が、円を描く様に突き刺さっていた。シュッツが話してくれた様に、遺跡の壁画を真似て悪夢の出来事が書いてある。

 語ってくれる最中、離れた場所から三人が此方へ向かって大きく手を振り、走って来る。


「あ、本当に貴紀さんだ!」


「いやはや全く。来るなら来るで連絡の一つでも寄越せば良いモノを。歓迎の準備も出来んではないか」


「やっぱり……君は来てくれたね。私達、トリスティス大陸の英雄(ヒーロー)


「え、まっ、まさか……いや、そんな!」


 目の前に集まった人物に、話し掛けてくる声に、目と耳を疑わざるを得なかった。夢を見ているにしても、もう少しで昼頃だ。空腹感なら兎も角……幻覚と幻聴とは。

 北の集落に居た青年ムート君に、西に在るドワーフ族の集落で王様を努めるディザイア。そして……君は、本当に本物なのか?


「まだ信じられない? 君に助けられて~、三人でルナ鉱石を発掘したり──そう、魔人として君と戦った。それも三度!」


 自身が夢幻ではないと証明しようと、経緯を数えながら右手の指を曲げる。その合間に一々此方へ対し可愛らしくアクションを取る為。

 驚きもあってか少し下がってしまうと、此方の手を両手で包む様に掴み、元気に微笑んだ。女性の手──としては少し固く思った。

 変わらない容姿・顔・声、どれも間違いじゃない。包まれた手から感じる体温、彼女は……あの時救えなかった、助けたかった人の一人。


「それじゃあ、改めまして──私は大山家の長女、大山アナメ。ね、思い出した?」


 尋ねて呼び掛ける度、次々と涙が溢れ出して止まらない。何故とか、どうして? なんて理由を訊く言葉よりも、目の前の現実にただただ感謝した。

 あの戦いは、冒険は……無駄じゃなかったんだんだと痛感する余り、涙で前が見えず泣き崩れてしまった。大の大人が情けない、と思われてもいい。今は素直に、泣きたい。


「スッキリした?」


「ごめん。再会した直後から泣いてしまって。でも、本当にどうして?」


「実はね、私達もよく分からなくて混乱してたんだ。覚えてる事と言えば……『彼方なるもの』って名乗る少女が、くそげー? のご褒美だって」


 何分か泣き続け、漸く気持ちが収まり話せる位まで傍で待ってくれたアナメに謝り、何故この時代で生き返ったのか尋ねたら──予想外の名前が出た。

 『彼方なるもの』、それは自分達で遊び・眺め・時には干渉して来る副王が持つ名前の一つ。てか、ご褒美って夢の中にまで持ち込んで来たクソゲーのクリア報酬かよ。


「あぁ……ソイツは自分の知り合いだわ」


「そうであったか。実は儂らに恩返しとして、貴紀殿に協力せよ。と言われてな」


「だから、って訳じゃないんですけど……俺、もっと強くて、勇気のある男になりたいんです!!」


「と言う訳だ。貴紀殿、俺達を貴殿の仲間に加えてはくれないだろうか?」


 成る程。少しは仲間を増やして、物語を楽しませろって訳か。信頼出来ない仲間はどんな敵よりも厄介とは言うが、アナメ達なら信じられる。


「分かった。でも、敵はイブリースよりも遥かに強い連中が何人もいる。死ぬ危険だって──」


 死ぬ危険だって十分ある。そう言い出そうとしたら、四人は左右から自分の手を掴み取り、ギュッと強く握り締め小さく頷く。

 その肯定とも取れる頷きから、覚悟の上だと。永遠に終わらない悪夢の中で終わる筈だった命を、救ってくれた相手に恩返しとして使えるんだと。

 身勝手な解釈ながら、自分はそう思った。真意に関しては本人に訊けば良いんだろうが、訊ける様な空気に思えず言い出せなかったのが本音。


「俺とアナメは幸か不幸か、魔人化の力が残っている。戦力としては申し分無い筈だ」


「今の私は君から奪った魔力を使って、になるけどね」


 ほう……それはそれは。確かにナイトメアゼノシリーズにも通用するであろう戦力は、願ってもない申し出だ。

 寧ろ有り難いとさえ言える。悪夢の異形共は今現在はヴォール王国へ襲って来てないが、周辺の村に襲い来る可能性もあるからな。

 ゲート先へ行っている間の防衛力、強力な手札が手に入るなら是非とも欲しい。強者が一人居たって、守れるモノは少ない。


「って、シュッツさん。リーベさんとの結婚式が始まっちゃいますよ!?」


「しまった!! もうそんな時間なのか!」


「アナメさんも、鍛冶の途中でしょ?」


「やっば……また父さんに怒られちゃう!」


 おいおい……本当に大丈夫なのか? そんな心配をしつつ、ドタバタ気味な二人を見送り外まで響く怒鳴り声がする方へ向かえば、和人さんや蓮華さん、ウズナちゃんとも再会。

 そのまま蜥蜴人(リザードマン)であるシュッツとリーベの結婚式に参加。投げられた色鮮やかなブーケを取ったのは──途中参加したアナメ。結婚……結婚ねぇ。

 一応聞き回ったが、依頼書の主は結局見付からず。単なる悪戯って事で報告する事に決めた。用事を終わらせ船に戻り、ナトゥーア大陸へ戻る最中。


「ウズナもお兄ちゃん、お姉ちゃんに付いて行くって、お父さんとお母さんに言って来たよ」


「とは言えな~……ウズナちゃんに頼める仕事、なんかあるかなぁ?」


「給仕とか、任せてみますか?」


「まあ、そこら辺は戻ってから決めるよ。色々と準備もあるしさ」


 ヴォール王国へ付いて来る仲間は──人間とドワーフのハーフ……だかクォーターのどっちかの大山アナメとウズナちゃん。蜥蜴人(リザードマン)の勇者・シュッツと妻になったリーベ。

 人間の青年ムート君。ドワーフ族の王であるディザイア……と、男女五組のドワーフ族。何気に人数が大きく増えた為、今後の行動は報連相が大変そうだ。




一章・完結

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