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ワールドロード  作者: オメガ
一章・I trust you forever
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I trust you forever

 副王のクソゲー攻略に付き合わされ、時間を巻き戻してくれたとは言え一週間、寝ても覚めてもずっとクソゲーは流石にキツい。

 休憩がてらセーブして電源を切り、再び点けてロードしたら百パーセントの再現率で全セーブデータ消滅、一からやり直しの苦行。続けてやってもバグとフリーズで強制的にやり直し。

 漸くクリア出来た時ゃあ、発狂してゲーム本体とディスクを腹いせに破壊してやった。救助と討伐の依頼を終えて今は二月十日の昼下がり……

 アルファ村に居る依頼主と別れ、ヴォール王国へ戻りギルドでクエスト報告をし、仕事を終えた直後。やっぱりと言うかなんと言うか、道端で琴姉とシオリに見付かった。


「ほら、坊や。さっさと行くわよ」


「いや、あの……精密検査は」


「違うって。君が逃げ回る程大層嫌がるから、調査隊や防衛隊を集めて遅い祝賀会をしようってさ」


 けど、強制的に連れて行こうとする気配は無く、一応申し訳程度に精密検査云々かと思い話してみるも──どうやら違うらしい。

 国王、つまり紅心からのお祝い。付け足す様に「別に普段着で構わないから、早く行こ」と言い自分の手を何の躊躇いもなく引っ張るシオリに、何故か近所の仲が良い幼馴染みって感じがする。

 連れられた先は城の大食堂──ではなく、冒険者ギルド・二階にある複数大勢用の席。既に心やベビド達が座り、思い思いの祝賀会を楽しんでいる様だ。


「では改めて……遅くながらも始める祝賀会、楽しんでくれ。乾杯!」


 国王が直々に誘い、支払いを持つ。と言う理由もあってか、自分が連れて来られる前に行ったであろう乾杯の言葉に皆。

 各々グラスやコップを手に、高々と掲げ勝利を喜ぶ。自分はお酒が飲めない上、酔っ払いは苦手な為、こう言う席では必ず人気の少ない隅っこで一人寂しく座る。


「貴紀殿。隣、座っても良いか?」


「ベビド……あぁ、構わないよ」


 左側へ座ったベビドは祝賀会だと言うのにお酒では無く水を飲み、鎧も脱がない。何故なのかと興味本意で訊くと──

 万が一の危機的状況に備えて酒は控え、何時でも戦場へ赴ける様、オフの日以外は鎧を着ているらしい。


「すまぬ。儂も共に行き、戦えれば良かったんじゃが」


「何言ってんのさ。ベビド達防衛隊が国を守ってくれるからこそ、自分達や国民は安心して動けるのに」


「そうか……やはり、御主は変わっておらんな」


「それはお互い様だ」


 寧達にも送った報告書を読んだのだろう。だから哀愁漂うって言うのか、申し訳なさそうな顔で、そう言う言葉が出るんだろうな。

 けど防衛隊や自衛隊が国を影ながら守り、助けるからこそ、国民は安心して暮らせる。例え日頃から感謝されなくとも、非難罵倒を浴びせられようと。

 誰しも『失って初めて』無くしたモノの価値を、有り難みを知る。だから自分はベビドを信頼し、ヴォール王国の守りを任せて今回の旅に行ける。

 変わらない──って言うのは、きっと。まだ機都が在った頃、自分がスレイヤーとして衛兵隊に対し言ったコメントの事だろう。本当、変わってないのはお互い様だ。


「貴紀、もっと自分から周りに話し掛けて行かないと駄目だぞ? 人間関係は広く深く……」


「やった結果、家族や仲間が殺されたんだけど?」


 酔っ払ってるのか、少し顔が赤い紅心が此方へ寄って来ては人間関係に就いて話して来たので、実体験で返してやったら黙って俯いた。

 分かってる。こう言う席では言葉を選べって事位は。営業スマイルを貼り付け、心にもない言葉で嘘を吐くのは懲り懲りなんだ。自分の本心が、本当は何なのかすら分からなくなるから。


「それに。人間関係は狭く深く、が自分のモットーだ」


「儂も一時期は広く深く。じゃったが、一人娘との時間を無くしてしまったからのぅ……」


「……余計な口出しをして悪かった。それはそれとして、貴紀はそろそろ結婚しないのか?」


「おい。今さっき、自分で余計な口出しをした事に謝ったばっかりだろ!?」


 人間関係は個人の自由だ。交遊関係を多く深く持ち、自分自身や家族の時間を失くすのも。自分は一番大切な家族を重視し、信頼関係を構築したい。

 で──まだ酔っ払ってんな、こりゃ。少しは頭が冷めたと思ったんだが。さてはて、どうしたもんかねぇ。


「領土拡大を狙う三勢力の登場、今回の件。僕個人としても、少しでも幸せになって欲しくてね」


 前言撤回。表面上は酔っ払いだけど、頭ん中は凄い冷静だわ。親が子を思うが故に……か。そもそも結婚願望が無い為、どうすれば上手く言葉を返したもんか、悩む。

 結局上手い返答は出来ないまま時間は流れ、ギルド前で解散した頃──外は既に暗くなっていた。夜空を見上げれば、赤と白の双子月が並んで浮かんでいる。


「はぁ……結局飯、殆んど食えなかったな。しゃーない、どっかで飯食って帰るか」


 会社勤めで働いてた頃も、新年会・忘年会では酒注ぎで顔を売り、上司やら部下の愚痴を聞かされ余り食えなかった。結局スーパーとかコンビニで半額弁当買って帰ってたな。

 誰か忘れ物でもしたんだろうか? 受付嬢の巴が慌てた様子でギルドから出て来て辺りを見渡す。此方に気付くと表情が明るくなった為、自分が何か忘れたのか疑問に思っていると。


「坊や。これから時間、良いかしら?」


「ん? あぁ、別に構わないが……」


 城へ戻ったと思っていた琴姉に横から話し掛けられ、特に何も用事は無いので承諾。巴は表情が暗くなり、ギルドの中へと戻って行く。

 ……明日にでも時間を作って、会いに行こう。自分も告白やら報告の時、勇気が出ず言い出せなくて後々後悔してたからな。話す切っ掛けを作るか。

 それはそれとして。琴音に付いて行き、到着した場所は──和風感全開なヴォール王国城の屋根上。左右を見れば金のシャチホコが、前を見れば町並みが見える。


「アタシね。昔、坊やに似た雰囲気の人をある連中から匿ってたのよ」


 屋根上に少し距離を空けて座っていたら、突然昔話を始めた。こう言う時は~……うん、余計な口出しはせずに黙ったり、頷き返答するのが正解だ。

 共感する心構えで言葉も、否定やアドバイスは余計、寧ろ会話に食い付く方が良い。

 どっちの服が似合うか訊かれても女性側は既に答えが決まっていて、背中を押して欲しいから訊くんだと痛感したからな。


「匿ってた……?」


「えぇ。終焉の闇と言う組織からね。本人曰く、信頼される右腕的立場だったそうよ」


 あ……何となくだけど、匿ってた相手が誰か理解出来た気がする。予想通りなら、と思い匿った相手の名前を言ってみる。

 もしかして、ディストラクション……略してデトラって名前じゃない? と。すると琴姉は少し驚いた様子で「良く分かったわね」と返した。


「リーダーとの約束を守り、果たす為、組織と同僚達を裏切り抜け出して来た。そう言うボロボロの彼を、隠居してたアタシが匿ってたの」


「リーダーの名前とか、約束の内容は話してくれなかったの?」


「そう。幾ら訊いても約束を守り、果たすまで誰にも言えない。の一点張りでね」


 そう簡単に分かる程、甘くはないか。もしかしたらトリスティス大陸・最後の魔人戦で妙な事を口走ってた内容や。

 アナメのスキルで見た夢と何か関係があると思ってたが。確かその組織ならリーダーは終焉の闇No.01・α(アルファ)、だった筈。名前は……駄目だ、思い出せん。


「千年、二千年と共に暮らす内にアタシが惚れちゃってね。部下の魔族に背中を押されて告白する日、彼は姿を消した」


 その姿を消した御本人が貴女の目の前に居ますよ。なんて言ったら……頭を心配されるわな。第一、記憶や力も欠如した現状じゃ、姿を消した理由や真意は判らんし。


「それから深く意気消沈して、大切な部下はそんなアタシに愛想を尽かして……みんな、離れて……」


「それ、は……」


 昔を思い出して辛くなり、涙をポロポロ溢しながら話す琴姉を見て思わず、言葉に詰まった。好きな人に告白して振られたり、想像以上の不幸があれば大抵は意気消沈するさ。そう共感は出来るんだが。

 そう言う状態の相手に掛ける言葉は……パッと出ない。何を言っても受け取る側の心に余裕が無い以上、元気付ける言葉や行動は悪手にしかならないと体験済み。

 だからか──辛かったね、苦しかったよね。としか、喉から言葉が出なかった。抱き締めるのも一手か? と思ったが、傷心に漬け込む様で嫌だった。


「ありがとう。でもね、ある男が魔王城に単身乗り込んでアタシにこう言ったの」


「なんて、言ったの?」


「信愛なる我が友は幻想が薄れ行く世で再び、汝の前に必ず現れる。故に我が友を常に信じてやってくれ。って」


 その時の琴姉は生気も無く、俯いてたから男の姿は見てなく声から成人した若い男性だと判断しているらしい。

 けど……その男性、一体何者? 別に琴姉の命を奪いに来た訳でも無い様だし、わざわざ預言だか助言を言いに魔王城へ行く理由も不明だ。


「そして──信じ続けた結果、貴方は再びアタシの前に現れてくれた。ねぇ、ディストラクション?」


 優しく微笑み掛ける琴姉の顔を見て、柔らかな物言いで言い当てられた事から、不覚にも二重の意味でドキッとした。

 クッソ、琴姉は美人だ。って判ってたが、ギャップとかこう言う不意打ちは何時まで経っても慣れない。うん……まだドキドキしてる。


「何時から、判ってたの?」


「貴方が薄れ行く幻想の地、無限郷へ飛び込んだ時からずっと千里眼で見てたわよ。貴方の活躍もね」


「活躍と言って良い部分と、黒歴史にしたい部分もかぁ……」


 どうやら、当時の自分が二十歳の頃から千里眼で覗いていたらしい。滅茶苦茶恥ずかしい気持ちと、申し訳ない感情が入り交じってる……なんて言うんだろう。

 こう親友や家族、彼氏彼女とかに長年秘密にしてた出来事がバレた様な、複雑な気持ちで胸が一杯一杯。返し言葉や話題変更の言葉すら何も浮かばねぇ。


「だからね。坊や……うぅん。貴紀には、アタシの事をちゃんと名前で呼んで欲しかった」


「あぁ……うん、ごめん。琴音」


 そっか、そうだよな。好きな相手に名前で呼んで貰えないってのは──精神的にもキツいよな。

 自分の左肩に体を預け、坊や呼びから名前呼びにしてくれた琴音に対し、此方も肩を抱き寄せ名前で呼び返す。


「私ね。これからはずっと…… I trust(あなたを) you(常に) forever(信じる)


「自分が外国語は苦手って知ってて英語で言ったろ!? なんて言ったんだよ」


「ふふっ、内緒。悔しかったら稽古のついでに、勉強も教えてあげるわよ」


 外国の言葉は殆んど分からなかったけど、大切な意味を含んでいたんだ。って事だけは理解出来た。だからなのか、琴音をもう少しだけ──独占したくなった。

 惚れない、惚れられない様にって言うのは……やっぱり難しいな。愛おしいって気持ちも封じ込めなきゃいけないなんて。


「ベーゼレブルとロボ相手に注意を引き付けてくれてた時も、アタシが援護してなかったら殺られてた位だったし」


「あの援護、琴音かよ。いや、ありがとう、助かった」


 体感的には短く感じたが、どれ程一緒に夜を過ごしたんだろう。城の中へ戻る時はまだ暗かったけれど……

 翌日。琴音はみんなの前ですら自分を名前で呼び出した為、城中で色んな疑惑や噂が流れたが──まあ、人の噂も七十五日。暫くすれば収まるだろ。






名前:琴音(コトネ)・ドライ

年齢:不明

身長:163cm

体重:66kg

性別:女性

種族:魔族

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 紫色の髪と赤い瞳を持ち、セミロングの後ろ髪を一つに結んで左肩から胸元へ向けている。左右の髪だけが長く、胸元まで届く。

 魔王故のプライドがあり、可能な限り正々堂々を好む。全盛期はその大陸一つすら潰せる膨大な魔力や威圧感に慕ってくれる多くの魔族、魔物を部下に従えていた。

 その頃に組織・終焉の闇から裏切る形で抜け出したディストラクションと出会い、匿った事で、良くも悪くも彼女の運命は大きく動く事となった。



スキル


・魔王Lv9

 ルシファーが持つスキルと同じく、魔王たらしめる為のモノ。常時発動型スキル。


・魅了の魔眼Lv7

 任意発動型スキルであり、発動時に自身の眼を見た相手を魅了し、支配下に置く。人間種には効果大だが、ナイトメアゼノシリーズと言った異形種には効果が薄く、機械系には通用しない。


・魔導師Lv10

 スキル・魔法使い系の最上位版。使える魔法の多さも当然ながら、威力も桁違い。固定砲台となれば真価を発揮する……が、周辺と地形の安全は保証されない。


・舞踏会Lv7

 踊り系のデバフに強い耐性を持ち、味方に様々な効果を持つ踊りが踊れる様になる。効果は踊っている最中と、踊り切った後のタイムリミット・三分まで。

 同時にステップによる回避行動も上達する程、軽やかかつ最小限の動きで、反撃に持って行き易くなる。


・千里眼Lv7

 最高レベルだと過去現在未来すら見れるスキル。

 琴音のレベルだと、遠くを見る程度が限界。

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