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ワールドロード  作者: オメガ
一章・I trust you forever
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復活・前編

 大山夫妻が待つ洞窟へ帰還途中でフュージョン・フォンを使い、現在アンテナ役を務めてくれているルシファー経由で琴姉や静久と連絡を取る。向こう側も作戦通り、西側は盾持ちの蜥蜴人(リザードマン)部隊三十人と漏れた連中を琴姉が抑え込んでいて。

 北側も同じく盾持ち部隊十人と静久が地形の悪さ、極端な段差を利用して持ち堪えてくれている。此方の情報を伝えると「ふっ……良くやった。後で褒美をやる……」やら「折り返し地点を越えた今、注意力を損ねるのは危険よ。坊や」だの言われた。

 琴姉が言う事は判る。現に今、アナメとウズナちゃんの様子がおかしい。風邪を引いているかの様に息苦しそうで、額に手を当てると二人共熱したフライパンの鉄部分位には熱く、素人目でも異常なのがよく判る。苦しいと思うが休憩を入れつつ走り、なんとか到着。


「和人さん、蓮華さん。ウズナちゃんとアナメの様子が……あれ、出掛けてるのか?」


 大声で呼び掛けたのだが──誰も洞窟から出て来る気配が微塵もない。二人を出入り口付近へ寝かせ、夫妻を探しに洞窟の中を調べてみると此方の声よりもずっと大きく、金属をトンカチ等で叩く力強い音と思わず後退りする程の熱気が出迎えてくれた。

 恐る恐る奥へ進むと、鍛冶部屋で直ぐに大山夫妻を見付けた。此方の登場にも気付かぬ程熱した素材をなんと和人さんが『素手』で叩き、高い金属音を鳴り響かせ、蓮華さんが小さなハンマーで軽く叩き音を調べている。熱中する夫妻の様子は真剣そのもの、集中力も凄まじい。

 納得行く代物が出来たのか。蓮華さんが『厚みのある縦長の三角形らしき何か』を溜めた水に着け、勢い良く蒸発する音と水蒸気が出ている時に漸く和人さんが此方に気付くと自身も溜めた水へ手を入れ洗ってから歩いて近付いて来て。

 申し訳なさそうな様子で「すまんすまん。仕事中は熱中する余り、どうにも気付けなくてな」そう言って謝って来た。素手で加熱した素材を何故叩けるのか? 何を作っていたのか尋ねると……


「俺の一族は代々祝福(ギフト)を宿しててな。今は俺とアナメがヘイパトスを半分ずつ持っているんだ」


「ヘイパトス……鍛冶の神、だったか」


「俺の腕が黒い理由がそれだ。で、何を作っていたのか、だが──秘密兵器だ」


 祝福(ギフト)・ヘイパトス。スキル・鍛冶師の完全上位互換であり、祝福(ギフト)以外では決して辿り着けない幻の領域。言わば限定的な産まれながらの超天才児。今回だと真剣に取り組み作った武具は何かしら、能力を持っている場合があるらしい。

 ヘイパトスはギリシャ神話最速の男に武具一式を作り、神々の武器や青銅の巨人さえ作って見せた鍛冶師としても最高域の腕前を持つ。成る程、黒い腕はヘイパトスを表す特徴みたいなモノだったのか。


「今はそれどころじゃない。実は……」


 秘密兵器。あぁ、なんて男心をくすぐる言葉だろう。秘密って付くのがポイントなのかな? 今は倒せない程実力差がある敵さえも、秘密兵器で弱点や虚を突き撃破する。ありきたりな展開とは言え実に分かり易い王道、嫌いじゃない。

 それは一先ず置いといて──ウズナちゃんを助け出した事、姉妹が急な体調不良で様子がおかしく今、洞窟の出入り口付近で寝かせていると話した。すると和人さんは大層驚いた表情で洞窟の出入り口へと走って行き、自分も追い掛ける。


「しっかりしろ。アナメ、ウズナ!」


「ごめん……なさ、い。私、達。もう、奴……を抑え切れ……ない」


「奴? アナメ、君達は誰を抑え込んでいたんだ?」


「貴……紀。おね、がい……約束、を」


 苦悶の表情で苦しむ二人の体を和人さんが揺すり、呼び掛けに反応してアナメが目を覚まし意味深な言葉と約束を言い残し、また眠りについた。それと同時に地面が激しく揺れ動き、ただ普通に立っている事すら出来ない程で思わず屈み、両手を地面に着け倒れないのが精一杯。

 そんな中。大地や姉妹から暗雲の空目掛けて黒と紫の帯が昇って行き、全て集まると今度はウズナちゃんへと降り注ぐ。助けようと右手を伸ばすも二色の帯に阻まれ、勢い良く弾かれてしまった。触れて判った……コレは圧縮した負のエネルギーだ。


「三百十六年前……光を継ぐ者がこの大陸に現れ、魔神を災厄の箱へ封じ込めた」


「どうした、ウズ──ナぁ?!」


 目を覚まし突然語り出すウズナちゃん。青い瞳は紫色に変わり声も此処へ来てから何度も語り掛け、助言してくれた声や自らをアパテと名乗った声に変化。余りにも様子がおかしく、肩に触れた和人さんが体ごと後方へ弾き飛ばされてしまった。

 慌てて和人さんへ駆け寄るとウズナちゃんの体は黒紫色のオーラに包まれ、呪術を受けていた時同様浮き始める。彼女の鞄から自我があると思わせる程勢い良く小さな宝箱が飛び出し、オーラに取り込まれて行く。


「御苦労だったな。お前達の先祖から続く三種族は我の計画通り、この大陸を負のエネルギーで満たした」


「なん……だ、と?」


「破壊者。いや、ジューダス(裏切り者)!! 貴様だけは必ずや我らがその素っ首叩き落とし、王に献上してくれるわ!」


 ウズナちゃんを通して話し掛けてくる男性らしき声と発言から、取り憑いている存在が『闇の魔神』だと理解した。箱から脱出こそしたが、まだ肉体は取り戻せていないが故の憑依だろう。と言うかだな……お前。

 封じ込められた当時から、ず~っとチマチマ計画を進めてたんかい。しかも発言から察するに和人さんの先祖を唆したのがお前とはな。苦痛の表情のまま和人さんが睨むけど、相手はウズナちゃんに取り憑いているだけ。

 で……お前らはどれ程昔の話を何時まで引きずる気なんだよ。断片的な記憶から離反した時期を思い返そうとするが、思い出せん。まあ、怒号混じりに言い放つ辺りそんだけ怨み辛みが強いって訳か。ん~……何かやったっけ?


「其処の小娘が回収したエネルギーを此方へ回さない為、復活に時間を要したが……最早過ぎた事。今こそ」


 アナメ……たった一人で、誰にも相談出来ずアイツを復活させまいと必死に抵抗していたんだな。そりゃあ埃被った伝説の存在が復活を目論んでいる、なんて言っても信じないだろう。そもそも、ヴェレーノの被害が増している中で言おうと誰も耳を貸さないし、奴の監視もあっただろう。


「復活の時だああぁぁーーーッッ!!」


「そう簡単にさせるか!! マグナルーメン!」


 取り込んだエネルギーを解放して蘇ろうとする魔神を阻止すべく、自分が唯一持つ浄化技に持てる魔力の殆どを込め、両手で地面に叩き込む。光の波動が水面へ広がる波紋の如く大地に浸透して行く。

 大地から溢れ出す光の粒子が噴火する勢いで噴き出し、大陸を覆う闇も押し上げて浄化……出来てない、寧ろ押し返されてる! 浄化出来ず押し返した闇がウズナちゃんに吸い込まれて行ってる。これじゃ復活の妨害にすらならんぞ?!

 気付いた時はもう既に遅く、空を覆っていた闇や黒紫色の帯は全て吸収し終わった後。纏う黒紫オーラに赤いラインらしき模様が追加された途端、溢れ出す波動に三人揃って押し飛ばされ、痛みを堪え目を開けると其処には月明かりに照らされた──


「ウガアァァァ!!!」


「クッソ。復活、しやがった」


「アレが……闇の、魔神?」


 黒いゴリラ姿に紫色の剛毛が両腕両足を守る様に有り、顔は文字通り悪魔を思わせる醜い顔。頭の左右から頭上に向けて二本の角が生え、胸元には肋骨らしき部分の上に赤い逆さ十字の結晶がある。多分神を信仰する十字架を逆さにする事で、反逆を意味してるんだろう。


「全ての生命よ。復活せし偉大なる我が名を聞き、畏怖せよ。我が名はイブリース!」


「ハッ……イブリースねぇ。喧嘩売ってんのか? テメェは」


「フフッ。ジューダス(裏切り者)でありアダムの貴様からすれば、なかなか面白い名前だろう?」


 まるで神が降臨した様な、両手を広げたポーズをした上で自身をイスラム教に登場する悪魔の王・イブリースを名乗った。自分の呼び名は幾つかある内、基本的に名前かオメガゼロ、破壊者と呼ばれるが……中には副王達が時折使う別の呼び名。

 『アダム』と呼ぶ連中もいる。天使達に神は黒泥を捏ねて作ったアダムにひれ伏す様命ずるも、反発し神を怒らせた天使達がいる。その一体がイブリース。早い話、自身を神に仕える天使であり、アダムかつ裏切り者の自分には決して跪かないって訳だ。

 しかもキリスト教の悪魔王・ルシファーに相当し堕天理由も全く同じで絶望を意味する悪魔。さて……どうスッかねぇ。魔力の殆どを使って復活を阻止出来ず消耗した今じゃ、勝てる未来が全く見えない。取りま、フュージョン・フォンでスキャンはしておこう。


「大山和人。貴様ら一族には恩がある。故に、今此処で安らかな死を与えてやろう」


「お……お前が、先祖を……」


「大いなる闇に消えよ。シャドウ・ミス──ッ」


 話から察するに封印された直後から裏で和人さんの祖先を唆した事で間違いなく、トリスティス大陸を負のエネルギーと闇で覆い尽くした張本人。後半は壁画や真夜経由で知ってるが、それは兎も角として懐へ飛び込み、両手で顎を押し上げ闇の噴出を阻止してやった。

 此方の腕を掴み引き離そうとするが、パワーは予想よりずっと低いらしくパワードスーツ無しの腕力すら振り払えない様子。このまま崖へ押し込んで突き落としてやろうと思い、無理矢理押し進む最中──イブリースの胸部にある肋骨と思わしき部分が左右に開く。


「イッ──!?」


「オメガゼロ・エックス!?」


 少し遅れて直感が働き、連戦連発気味で限界を超えた為か酷い頭痛が襲い掛かり、反応に遅れ直撃を左腕と胸元に受けて吹き飛ばされ……俯けに倒されてしまった。肋骨っぽい物の中に怪光線を撃つインナーマウスが有るって、何処の特撮番組に出て来る怪獣だよ。

 ま、マズイ。早く動かなくては!! 手を地に着け起き上がろうとするも、産まれたての小鹿宜しく震えて力が入らない。は、ハハハ……最後にゆっくり寝て疲労を取ったのって、何時頃だったっけか? 被弾箇所が石化し始めている。あぁ、こりゃ本当に不味ったな、完璧な判断ミスだわ。

 イブリースが歩き近付く足音が聞こえる。自分が奴なら頭を踏み潰すけど、もしその通りなら普通に死ぬ!! ……頭部へ襲い来るであろう激痛に備え、目を瞑り歯も食いしばるも全く何も起きない為、力を振り絞り顔を上げてみると──


「ムッ……何故我の邪魔をする。我らが同胞よ」


「同胞? ハッ、それはテメェらの認識でだろ。生憎俺は俺自身の目的の為に動いているだけだ」


 今にも自分の頭を踏み潰そうとするイブリースの足を蹴り、軌道をズラし顔面左側スレスレに落ちては地面へめり込んだ。妨害行為で現れたのは……今最も会いたくない、戦いたくない面倒臭い敵ランキング上位に食い込むベーゼレブル。

 人間形態って事は、ベーゼレブル・ツヴァイだな。何が違うのか、に関しては生き延びれたら話そう。うぅ~ん……自分は一体誰に向かって話してるんだ? 旅を始める前も何度かあったけど、冷静に考えると毎度そう思うんだよね。

 それはそうと、ベーゼレブルはイブリースに敵対する明確な意思を持っている。敵の敵は味方、なのかねぇ。睨み合いからの力比べで押さえ込んでくれている今がチャンス。とばかりに勇者候補生とその仲間が駆け付け、自分達も含めて転移の符で避難させてくれた。






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