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ワールドロード  作者: オメガ
序章・our first step
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忍び寄る闇と遺産・後編

 少し色々とあったが、漸く森の神殿。その建物内へと足を踏み入れる。

 見た目は……ある意味、教会に近いのかも知れない。椅子はなく、窓ガラスはカラフルで、女神像を思わせる。

 目の前にある石の祭壇と、奥にだだっ広い部屋があって、シオリは我先にと奥の部屋へ走って行く。


(経年劣化とかでひび割れしててもおかしくないのに、祭壇が綺麗だぜ。宿主様)


(祭壇ニハ何カ置カレテイタ様ダ。痕跡カラシテ楕円形(だえんけい)ノ物ダロウ)


 祭壇に近付くと黒い布が敷かれており、へこみ具合からして楕円形の貴重品を置いていたとか。

 自分としては周りの破損具合に比べ、祭壇だけが綺麗なのも気になる点ではある。

 でも不思議な事に、埃の被り具合から考えても誰かが動かした形跡はない。足元は入り口から祭壇の下まで、赤いカーペットが敷かれている。


「こっちこっち!」


「元気が有り余ってていいねぇ」


(見た目は子供、中身はジジイってか?)


「うるせえ」


 早く来いとばかりに急かすシオリに思わず言葉が出たものの、確かにゼロが言う通り年寄り臭い。

 やはり、さっきの奴が頭の中で引っ掛かっているらしく、気になって考える自分がいる。

 今は取り敢えず、シオリが居る奥の部屋へ向かう事にした。


「遅い遅い~! ほらほら、アレアレ!」


「本当、元気な事で。うん?」


 文句を聞き流しつつ、到着し指を指す方向を見上げると──顔と胴体周りが崩壊してて人物像は解らないが。

 壁から今にも此方に倒れて来そうな姿勢をした、恐らく男性らしき石像と、その像の胸元に突き刺さる一本の剣があった。

 剣の刺さっている向きから、下から斜め上へ突き刺したと思われる。

 残念だが、今の身長では届かない。大人姿なら届いたと思うが……


「っ!!」


「な──」


「後ろ!」


 またしても直感が働き、直ぐ様振り向く。シオリも反射的に振り向くが、出入り口には誰もいない。

 この手は以前の旅で何度もあった為、慌てて石像の方に向き直す。すると其処には、奴がいた。

 青く長い真っ直ぐな髪、少しは羞恥心を持てと言いたくなる競泳水着風な鎧を着る、知る中でも最強の魔術師。


「もう来るか。かなり予想より早いな」


「仲の良い知り合い……って訳じゃない、か」


「もう動いても大丈夫そうね。傷口は相変わらずみたいだけど」


「傷? 彼は怪我なんてしてないけど」


 本当に早い遭遇だった。出来るならば、余り会いたいとは思わない。

 常に此方の心を見抜いているんじゃないか、と疑いたくなる洞察力、観察力には毎度手を焼いている程だ。

 今回もそうだ。胸の内を見抜き、言葉を投げ付けて来やがる。ベーゼレブル同様、文字通り煮ても焼いても食えない程に不死身。

 昔、一度だけ戦闘で奴の心臓を握り潰した事があるんだが、苦しむ表情一つ浮かべねぇ。

 寧ろ、憐れみの顔すら浮かべやがる。なんて言うのか、親に勝てず泣く子供に向ける憐れみに近い顔だ。


「可哀想な子。仲間にすら理解されず、裏切られ、事実すら受け入れられないなんて」


「うるせえ!!」


「無駄よ。『あの頃の貴方』なら兎も角、今の貴方じゃ私達の足元にすら遠く及ばないもの」


 ムカつく言葉に行動で反応し、殴り掛かる。けれど言われる通り、此方の攻撃はすり抜けて空振り。

 種も仕掛けも解る。でもそれを破る力と知恵が今の俺にはない。

 マジック達四天王や終焉のNo.ズと戦っていた『あの頃』なら、マジックの種と仕掛けを無理矢理突破出来るんだがな。


「毎度そうだ。現れては俺の心に土足でズカズカと入って来やがって!」


「土足……か。それはそうと、感情が高ぶったり覚悟を決めると一人称や口調が変わるのは相変わらずよね」


 気の所為か? 一瞬、表情が曇った様な。

 それはそうと、やはり一番多く殺し合った程の長い付き合いだ。俺の事もよぉ~っく知ってやがる。


「一つ教えてあげる。別に私達四天王は、『貴方達が言う魔神王』なんて雑魚に仕えてない。私達は自らの計画の為に利用しているだけ」


「じゃあ、あの気味悪い連中とは無関係って事か?」


「えぇ。奴らナイトメアゼノシリーズは蜂の様な者。そして世界が辿り着く未来の一つでもある」


 マジック達四天王が魔神王に仕えてなく、利用しているだけなのは解った。

 が──妙に『俺達が言う魔神王』って部分を強調したのが気になる。何か含みを持たせた言い方だ。

 悪夢の異形は世界が辿り着く未来の一つ……あんな気味悪いのがウジャウジャいる未来とか、嫌過ぎる。


「今日は妙に口が滑るじゃねぇか。序でにアンタ達の計画、とやらも教えてくれんかね?」


「リップサービスは此処まで。後は自分達で調べなさい。今日は様子見に来ただけだもの」


「急に現れて、喋ったと思ったら消えて……」


 話すだけ話して帰ったのを見るに、本当に様子見だけの為にわざわざ此処まで来たのか?

 情報は得たが、相変わらず何がしたいのか、毎度理解に苦しむ。マジックは魔術……今で言う魔法や奇跡を巧みに操る。

 まあ、登場から退散まで見て解かるかどうかは兎も角だが、厄介な事に不死身な上に時間操作系能力の所有者だ。

 一番戦った回数は多いが、一度も本気で襲って来ない奴でもある為、今尚理解出来ないんだよなぁ。


「時間停止による登場、そして離脱。相変わらず見事なもんだ」


「時間停止!? じゃ、じゃあ、変な事されたり泥棒されてたりするかも?!」


「そんな事する程、卑怯な奴でもないんだよ。不思議な事にな」


 所持品の確認をするシオリ。まあ、時間停止なんて能力を持ってると解りゃあ、気にするわな。

 ……釣られてコートやズボンのポケットを調べてしまう自分に気が付き、何故か自分の言葉に自信が持てなくなってしまった。

 一応何も盗まれてはいないが、一枚の折り畳まれた紙が入っていた。シオリには悪いが、後で見るとしよう。


「良かった~。何も盗まれてない」


「刺さってた剣は持って行かれたらしいがな」


「あぁ~っ、泥棒~!」


 剣一本で命を拾えたのであれば、安い対価だと考えるか、命に代えても剣を渡したくなかったのか。

 自分にはシオリの気持ちは解らない。判る事と言えばあの剣が、大切な物だった。と言う位だ。


「どうする。他に此処でする事はないのか?」


「……冷めた態度」


「悪いな。気の利いた嘘も吐けなくて」


 チャラい男や気の利いた者なら、軽い口調や的確な言葉で場を和ますのかも知れんが、自分は確証の無い言葉を言う事は無理だ。

 いや、言える事は言えるんだが……後々、な。それもあって、軽はずみや軽率な言葉は控えている。

 故に謝る。言い訳はしない。たまには言い訳位しろ。とか言われるが、したらしたで……な。


「此処で薬草と木の実を拾って行く。一昨日の件で薬草は残り少ないし、食糧難も相変わらずだし」


「分かった。手伝うよ」


 自分達は薬草と木の実を集めつつ、今後先の事も考え薬草と毒草の違い、木の実の種類や使い道を教わった。


「この赤と緑色の木の実は食べれる?」


「食べれるけど余りにも辛くて痛くて、単体で好き好んで食べる人は余りいない唐辛子、って実」


 形や名前が同じ調味料も有るらしい。魚だけかと思ったが、自分が知る物より一回り小さい理由は。

 太陽光が遮られ、代わりとなる聖光石が光源として弱いからだ。今はコートを着ているから良いが。

 太陽が差し込まない今現在は気温も低下気味。エルフ達は里に対低温魔法を掛けているが、根本的な解決にはならない。

 帰り道、何となく手紙が気になり、シオリが先へ進むのを見計らいポケットから取り出して開くと。


「……一応、覚えてても損はないか」


 手紙には短く、ある事だけが書かれていた。世界を覆う闇を払う方法はただ一つ。

 星の燭台に火を灯し照らす事。本当か嘘かは解らないし、わざわざ此方へ教える理由も解らん。

 でも星の燭台とは何だ? 火を灯すとは、普通に松明などで行えば良いのか? 訊きたい、知りたい事は増えるばかりだ。


(星の燭台、火を灯す。まさか……な)


「どうした、ゼロ?」


(何でもねぇ。確証も何もない空想をしてただけだ)


 空想、か。旅を始める前は夢物語に思って空想していた魔法だの伝説が、今や体験してるんだよな。


(珍シイナ、ゼロガ空想ヲスルトハ。明日ハ槍デモ降ルノカ?)


(おいルシファー、テメェそこまで言うか!)


「毎度毎度、飽きないねぇ」


 霊華……お母さんが居れば、喧嘩の仲裁をしてくれるんだけど。今回は気が済むまでやらせてやろう。

 ……終焉とサクヤは今頃、どうしてるんだろう。ちゃんとご飯、食べてるかな? 喧嘩する二人を見てふとそう思った。






名前:シオリ(志桜里)・フュンフ

年齢:2000歳(登場時)

身長:165cm

体重:53kg

性別:女性

種族:ダークエルフ

設定


 一般的なエルフとは違い、耳が長く肌色も普通のエルフや人間と変わらないが、感情が高ぶると褐色かつ眼も緑色から朱色に変化し口調も変化する特徴を持つ。

 服装はエルフ族が着てそうな、緑色に染めた布服等では無く黒いメイド服にホワイトブリム、緑色のエプロン。背中へ届く真っ直ぐな銀髪。

 一人称は私、二人称は相手の名前。名前が解らない時はあなた。

 ヴォール王国の専属戦闘メイド六人衆、オラシオンの一人。主に遠距離攻撃を得意とする他、野伏や盗賊スキルを使い仲間の補助も出来る。

 好きなものは、森の木の実を使ったお菓子作りとテイムした動物の世話。

 嫌いなものは、森を荒らす連中やゴブリンと言った魔族。


スキル

・野伏Lv7(レンジャーのスキル)

 トラップ等に気付き易くなり、弓矢などの遠距離武器で敵を狙う際、命中し易くなる他、スキル未所持者と比べると普通の弓矢とライフル程威力が変化する。レベルが大きくなる程、威力・命中共に上がる。


・盗賊の心得Lv5

 罠解除や鍵の解錠が未所持者よりも上手くなり、忍び足で移動した際には足音が発生し難くなる。意識する事で気配を殺す事も可能。レベルが上がる程、罠解除や解錠、気配を殺す成功率がアップ。


・符術師Lv6

 符に効果を付与し、発動する事が出来るスキル。Lv1~4までは各属性付与と付与する属性が増え使えるのみだが、Lv5からは転移の符が使え、行った事のある場所を強くイメージすると瞬間移動が出来る。

 Lv6~10は威力が上がり、発動時の効果範囲も大きくなる。反面、狭い場所では攻撃符の効果範囲が広過ぎて自滅の可能性も高まる。


・魔獣使いLv8

 魔獣や獣を従えるスキル。レベルが上がる程、手懐け使役出来る獣の数と強さが変わる。あくまでも獣から魔獣の範囲なので、神獣などは効果の範囲外になる。


・千里眼Lv6

 遠くを見通すスキル。レベルが上がると自身が知る任意の対象を視る事が出来る他、壁などの障害物があっても透視可能。弓兵系統のスキル、野伏スキルと合わせる事で遠距離攻撃が輝く。


・ダークエルフLv8

 固有スキル、エルフとほぼ同じ。弓兵&軽戦士&魔術師の複合スキル。弓矢の扱いが上手くなり命中率が大きく上がる他、ナイフ系統のみだが扱いも上達する。魔術師は魔法と符術師の威力を底上げしてくれるスキル。

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