表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
48/72

第48話 迷った時の確認表

 翌朝、私は教室の掲示板に新しい紙を貼った。


 題名は、ティナ案である。


 ――迷った時の確認表。


 その下には、昨日みんなで整理した問いを並べてある。


 一、今取らないと失うものは何か。


 二、今取ると失うものは何か。


 三、誰かを置いていく判断になっていないか。


 四、戻り道はあるか。


 五、別の達成方法はあるか。


 六、十秒待てば増える情報はあるか。


 七、誰が一番見えているか。


 文字はクロードが整えた。


 重要なところはポルカの希望で赤く囲んだ。


 ティナの助言で、少し柔らかい言葉に直した。


 ミナが余計な飾りを削った。


 アレンが「十秒待てば増える情報はあるか」を上へ移せと言った。


 つまり、この紙は私一人で作ったものではない。


 それだけで、以前より少し良いものに見えた。


「また増えてる」


 登校してきたラウル・ヘインが掲示板を見て言った。


「学級委員になってから、掲示板が強化されてない?」


「情報共有は重要です」


 私は答えた。


「いや、助かるけどさ。なんか、戦術室みたいになってきたな」


「戦術室」


 危険な言葉だ。


 私は少し考え、訂正する。


「教室です」


「そこは分かってる」


 ラウルは笑いながら確認表を読んだ。


「十秒待てば増える情報はあるか、か。俺、すぐ走っちゃうからなあ」


「あなたには特に有効な問いです」


「特に言われた」


「伝達役は、早く動く力と、待って選ぶ力の両方が必要です」


「難しいな」


「はい。ですが、あなたは速いので、選べるようになればさらに有用です」


 ラウルは少し照れたように鼻の下をこすった。


「じゃあ、今日ちょっと意識してみる」


「お願いします」


 次にセシル・ノートが掲示板の前に立った。


 彼女は魔法陣補助を希望した生徒だ。


 紙をじっと見て、三番で止まる。


 ――誰かを置いていく判断になっていないか。


「これ、怖いですね」


「はい」


 私は頷いた。


「怖い問いです」


「でも、必要なんですよね」


「はい。グレイン先生も、消すなと言っていました」


 セシルは少しだけ唇を結んだ。


「補助役って、置いていかれそうな人を見つける役にもなれるんでしょうか」


「なれます」


 私は即答した。


「光札で、置いていかれそうな場所や危険な場所を示せます。あなたの補助札は、班員の注意を集めることができます」


「注意を集める」


「はい。声が届かない時でも、光は届く場合があります」


 セシルは少し考え、頷いた。


「じゃあ、今日の訓練で試してみます」


「はい」


 掲示板の前に、人が少しずつ集まり始めた。


 ベルト・ガーランドも来た。


 彼は確認表を読み、二番で眉を寄せた。


 ――今取ると失うものは何か。


「取ることで失うもの、ですか」


「はい」


「普通は、取らないことで失うものを考えると思います」


「その方が分かりやすいです」


「では、なぜ逆も?」


 私は少し考えた。


 答えは昨日からある。


 しかし、ベルトにはどう言えば届くか。


「前に出ることで得るものがあります」


「はい」


「ですが、前に出ることで、後ろの射線、支援の距離、退路、班の余裕を失うことがあります」


 ベルトは黙った。


 半歩下がった時のことを思い出しているのかもしれない。


「取るとは、前に出ることだけではありません。旗を取る、敵を止める、負傷者を助ける、情報を確認する。そのどれにも、同時に失うものがあります」


「……なるほど」


 ベルトは確認表をもう一度見た。


「これは、前衛にも必要ですね」


「はい」


「今日、意識します」


 彼は短くそう言った。


 以前より、ずっと聞く姿勢がある。


 前に出る者は変わり始めている。


 後ろに立つ者も。


 そして、私も。


「ルシェラ」


 ミナが隣に立っていた。


 彼女は確認表の三番を見ている。


「はい」


「これ、消さなくてよかった」


「はい」


「でも、見るたびに少し痛い」


「……そうですね」


 私は答えた。


 誰かを置いていく判断になっていないか。


 ミナにとって、それは単なる訓練上の問いではない。


 あの日、オルステッド村は置いていかれたのか。


 救援が間に合わなかったのか。


 誰かが捨てたのか。


 誰も気づかなかったのか。


 その問いに触れるかもしれない。


「見えにくい位置へ移しましょうか」


 私が聞くと、ミナは首を振った。


「いい。見える方がいい」


「痛くても?」


「うん。痛いから、忘れにくい」


 その言葉は静かだった。


 私は何も言えなかった。


 痛いから、忘れにくい。


 それは重い。


 だが、たぶん本当だ。


 アレンが後ろから来て、掲示板を眺めた。


「重い紙だな」


「はい」


「でも、悪くない」


「グレイン先生の評価と同じですね」


「じゃあ、だいたい合ってるんじゃないか」


 アレンはそう言って、自分の席へ向かった。


 その背中を見ながら、私は思う。


 この紙は、今日の訓練で試される。


 問いは、掲示して終わりではない。


 実際に迷った時、使えなければ意味がない。


 午前の実技訓練は、班ごとの総合判断訓練だった。


 演習場には、昨日よりも複雑な配置がされている。


 旗が二本。


 負傷者役が一人。


 罠札が複数。


 上級生の模擬敵が三人。


 さらに、途中で条件札が追加される。


 グレイン先生は説明した。


「今日の目的は、迷った時の確認表を使うことだ」


 生徒たちの視線がこちらへ向く。


 私は少し背筋を伸ばした。


 私が作った紙ではない。


 皆で作った紙である。


 しかし、学級委員として掲示した以上、私にも責任はある。


「確認表は、答えではない」


 グレイン先生は言った。


「問いだ。問いを使って状況を見ろ。紙を丸暗記して動くな。問いを使え」


 やはり先生は、重要なところを押さえてくる。


 最初の訓練班は、ベルト、ラウル、セシル、ティナ、アレン、私の混成班だった。


 クロード、ミナ、ポルカは別班で同じ訓練を見る。


 今回の条件。


 奥に赤旗。


 右に負傷者役。


 左に青旗。


 正面に上級生。


 赤旗は高得点。


 青旗は低得点。


 ただし、負傷者役を搬送すれば別加点。


 つまり、目標が複数ある。


 どれを取るか。


 何を捨てるか。


 迷うための配置だ。


 開始の合図。


 ベルトが前に出る。


 ラウルが左右を見る。


 セシルが光札を準備。


 ティナが負傷者役を見ている。


 アレンは旗と上級生の位置を見ている。


 私は全体を整理する。


 赤旗は遠い。


 青旗は近い。


 負傷者役は右。


 上級生は正面でこちらを見ている。


 誘っているかもしれない。


「状況確認」


 私は短く言う。


「赤旗、遠い。上級生正面」


 アレン。


「青旗、近いけど左に罠札の可能性あり」


 ラウル。


「負傷者役、右。動けるか不明」


 ティナ。


「正面の上級生は、こちらが赤旗へ行くのを待っているように見えます」


 ベルト。


「左の地面、少し不自然です。光札で確認します」


 セシル。


 情報が出る。


 すぐに判断したくなる。


 だが、確認表。


 今取らないと失うものは何か。


 今取ると失うものは何か。


 誰かを置いていく判断になっていないか。


 戻り道はあるか。


「十秒待てば増える情報はありますか」


 私は言った。


 アレンが少し口元を緩めた。


「ある。正面の上級生の動き。赤旗が本命なら、俺たちが動かないと向こうが焦るかもしれない」


「採用。三秒待ちます」


 全員が待つ。


 一秒。


 二秒。


 三秒。


 正面の上級生がわずかに左へ寄った。


 赤旗側ではない。


 青旗側を塞ぐ位置。


 アレンが言う。


「青旗が誘いかも」


 ラウルが小声で言う。


「近い方が罠?」


「可能性があります」


 私は答える。


 セシルが左へ光札を投げる。


 地面に小さな罠札が照らされた。


「左、罠札あり!」


 セシルの声。


 確認表が効いた。


 すぐに青旗へ行っていれば、罠を踏んでいた可能性がある。


「右の負傷者確認を優先します。赤旗、青旗はいったん保留」


 ベルトが少しだけ反応した。


 旗を取らない判断。


 前衛としては物足りないのかもしれない。


 だが、彼は口を挟まなかった。


「ベルト、正面を止めず、牽制だけ。ティナ、負傷者確認。ラウル、右への経路。セシル、罠表示。アレン、上級生の反応」


「了解」


 全員が動く。


 ティナが負傷者役へ近づく。


「大丈夫? 動ける?」


 負傷者役の上級生が答える。


「足を痛めた。支えがあれば歩ける」


「搬送可能!」


 ティナが報告。


 その瞬間、正面の上級生が動いた。


 赤旗ではなく、こちらの退路を塞ぐ方向。


「退路を狙ってる!」


 アレンが叫ぶ。


「ラウル、戻り道!」


「右後ろ、通れる! でも狭い!」


「ベルト、正面を止めすぎない。退路確保優先」


「分かりました!」


 ベルトは前へ押し込まない。


 半歩下がりながら、上級生の進路をずらす。


 ティナが負傷者役を支える。


 セシルが右後ろに光札を置く。


 ラウルが先導。


 アレンが退路側を見る。


 私は風で足元を補助。


 赤旗も青旗も取らない。


 負傷者役を連れて帰る。


 成功。


 グレイン先生が手を上げた。


「そこまで」


 結果。


 旗未回収。


 負傷者搬送成功。


 罠札なし。


 全員帰還。


 昨日に似ている。


 だが今回は、確認表を使って意図的に判断した。


 先生が言う。


「なぜ旗を取らなかった」


 私は答える。


「十秒待てば増える情報があると判断し、上級生の動きを確認しました。青旗側に罠札があり、正面上級生が退路を狙う動きを見せたため、負傷者搬送と帰還を優先しました」


「赤旗は?」


「遠く、退路を失う可能性が高いと判断しました」


「青旗は?」


「近いが罠札あり。低得点で危険が高いと判断しました」


「悪くない」


 先生は頷いた。


「だが、別班なら青旗を取る判断もあり得た。罠処理役がいればな」


「はい」


 絶対規則ではない。


 状況で変わる。


 私は頷いた。


 ベルトが隣で息を吐いた。


「旗を取らないのは、やはり落ち着きません」


「はい」


「ですが、今回は納得できます」


「理由は?」


「取ることで、退路と負傷者搬送を失う可能性がありました」


 彼は自分で確認表の二番を使った。


 今取ると失うものは何か。


 私は少し嬉しくなった。


「良い判断です」


「……ありがとうございます」


 ベルトは少し照れくさそうにした。


 次の班では、クロード、ミナ、ポルカが入った。


 配置は少し変わる。


 今度は旗が一つ。


 ただし、負傷者役が旗の近くにいる。


 旗を取るには負傷者役を越える必要がある。


 しかも、旗を取ると後方から上級生が来る仕組み。


 クロードが前衛。


 ミナが後衛。


 ポルカが撤退補助。


 他の生徒も混ざっている。


 開始。


 クロードはすぐに前へ出すぎない。


 ミナが射線を見る。


 ポルカが戻り道を確認する。


 旗は見えている。


 近い。


 だが、ミナが言った。


「負傷者が近い。旗を取る動きで踏むかも」


 その言葉で、班が止まる。


 クロードが確認表を思い出したのか、短く言った。


「誰かを置いていく判断になっていないか」


 教室ではなく演習場で、その問いが出た。


 私は少し胸が熱くなる。


 ポルカが答える。


「今旗を取ると、負傷者役の確認が遅れます!」


 クロードが頷く。


「負傷者確認を先にする。旗は保留」


 その判断で、班は負傷者役へ向かう。


 しかし、その間に旗の近くの上級生が動き、旗を遠ざける。


 目標は難しくなった。


 だが、負傷者役の状態は確認できた。


 自力歩行可能。


 搬送不要。


「負傷者、自力で動けます!」


 ポルカの声。


 ミナが射線を取る。


「旗、まだ取れる。右から」


 クロードが判断する。


「旗を取る。だが戻り道を先に」


 ポルカが戻り道を見る。


「左後ろ、通れます! 右は罠!」


「左後ろで帰る。ミナ、牽制。僕が旗へ行く」


 今度は旗を取った。


 負傷者確認をしてから、旗を取った。


 少し遅れたが、成功。


 グレイン先生が手を上げる。


「そこまで」


 クロードの班は、旗回収成功。


 負傷者確認成功。


 罠札なし。


 ただし、時間はぎりぎり。


 先生が問う。


「なぜ最初に旗へ行かなかった」


 クロードが答える。


「負傷者役を踏む、または置いていく判断になる可能性がありました。確認後、自力歩行可能と分かったため旗回収へ切り替えました」


「判断を切り替えた理由は」


「負傷者搬送が不要になり、戻り道も確保できたためです」


「悪くない」


 先生は頷いた。


 同じ確認表を使っても、結果は違った。


 私たちの班は旗を捨てた。


 クロードたちの班は旗を取った。


 どちらも、確認した上での判断。


 これが重要なのだろう。


 訓練は続いた。


 ある班は赤旗を取って失敗した。


 戻り道を確認せず、後方を塞がれたからだ。


 ある班は旗を取りそこねたが、全員帰還に成功した。


 ある班は十秒待ちすぎて、上級生に先に動かれた。


 ある班は、待ったことで罠札を発見した。


 確認表は万能ではない。


 使い方を間違えれば遅れる。


 だが、何も考えずに動くよりは、判断の理由が見える。


 それが大きい。


 訓練後、グレイン先生は全体講評をした。


「確認表は答えではないと言った。今日、それが分かったはずだ」


 生徒たちは疲れた顔で聞いている。


「同じ問いを使っても、旗を捨てる班もあれば、旗を取る班もある。それでいい。重要なのは、なぜそうしたかを言えることだ」


 なぜそうしたかを言えること。


 これは、できない理由も報告、に近い。


 行動の理由を言葉にする。


 そうすれば、次に変えられる。


「ただし、問いを増やしすぎるな。戦闘中に七つ全部は見られん。訓練前に読み、訓練中は一つか二つ使え。訓練後に見直せ」


「はい!」


 返事が揃う。


 確認表は、訓練前と訓練後に使うもの。


 戦闘中は、頭に残った問いを使う。


 なるほど。


 報告書と同じだ。


 文書は、現場そのものではない。


 現場を見るための準備と、後から振り返るための道具だ。


 昼休み。


 中庭で、第一班は確認表について話し合った。


 ティナが弁当を広げながら言う。


「同じ表を使っても、違う結果になるんだね」


「はい」


 私は頷く。


「それが重要でした」


「答えじゃなくて、問いだもんね」


「はい」


 アレンがパンをかじりながら言う。


「お前、紙作るの好きだけど、紙に従いすぎると危ないな」


「理解しています」


「本当か?」


「……努力します」


「怪しい」


 ミナが干し林檎を差し出しながら言う。


「でも、問いがあると話しやすい」


「そうですね」


「どうしてそうしたの、って聞ける」


 クロードが頷く。


「判断の根拠が見える。失敗しても修正しやすい」


 ポルカが手帳を抱えながら言う。


「戻り道の項目が赤いので、皆が見てくれました。戻り道の地位向上です」


「地位向上」


 アレンが笑う。


「よかったな、ポルカ」


「はい!」


 ポルカは本当に嬉しそうだった。


 戻り道の地位向上。


 それは少しおかしいが、重要だ。


 今まで見過ごされていたものに、名前と場所が与えられる。


 それだけで、人は見始める。


 確認表の効果は、そこにもある。


 放課後、私は掲示板の確認表の下に、今日の訓練後の追記を貼った。


 ――この表は答えではありません。

 ――訓練前に読み、訓練中は一つか二つ思い出し、訓練後に見直しましょう。

 ――大切なのは、なぜそう判断したかを言えることです。


 貼り終えたところで、セフィナ先生が通りかかった。


「あら、面白い掲示ですね」


「セフィナ先生」


 私は姿勢を正した。


 先生は掲示を読み、穏やかに微笑んだ。


「答えではなく問い。歴史にも似ていますね」


「歴史にも?」


「はい。資料を読む時も、問いがあると見えるものが変わります。ただし、問いが強すぎると、見たい答えだけを拾ってしまう」


 私は黒角隊の資料を思い出した。


 点を線にするのが早い。


 結論を急ぐな。


「問いも、扱い方を間違えると危険なのですね」


「ええ。けれど、問いがないと、そもそも何を見ればよいか分からないこともあります」


 セフィナ先生は掲示の三番を見た。


 ――誰かを置いていく判断になっていないか。


「これは、少し痛い問いですね」


「はい」


「でも、良い問いです」


 先生はそう言って、私を見た。


「ディアさん。この問いを作った人は、きっと痛みを知っているのでしょうね」


 私は少しだけ言葉に詰まった。


 ミナ。


 黒角隊。


 父上の言葉。


 昨日の旗。


 皆で作った問い。


「……はい」


 私は答えた。


「たぶん、そうだと思います」


 セフィナ先生はそれ以上聞かなかった。


 ただ、静かに頷いて去っていった。


 夜。


 私は記録を書いた。


 ――迷った時の確認表を掲示。多くの生徒が確認。

 ――訓練で使用。同じ確認表を使っても、班により旗を捨てる判断、旗を取る判断に分かれる。どちらも状況と理由次第。

 ――ベルト、今取ると失うものは何か、という問いを前衛判断に適用。

 ――セシル、光札で置いていかれそうな場所や危険位置を示す役割を認識。

 ――クロード班、誰かを置いていく判断になっていないか、という問いを用い、負傷者確認後に旗回収へ切り替え。

 ――グレイン先生より、確認表は答えではなく、訓練前・訓練後に使うものと講評。

 ――セフィナ先生より、問いは歴史にも似ていると指摘。問いが強すぎると見たい答えだけ拾う危険あり。重要。


 最後に一行。


 ――問いは、見るための道具であり、見誤る危険でもある。


 私は羽ペンを置いた。


 また難しいことが増えた。


 答えではなく問い。


 だが、問いも万能ではない。


 問いがあれば見える。


 問いが強すぎると、見たいものだけ見る。


 人間も同じかもしれない。


 敵か、味方か。


 魔族か、人間か。


 強いか、弱いか。


 役に立つか、立たないか。


 問いの立て方で、見えるものが変わる。


 なら、私は今、どんな問いで人間を見ているのだろう。


 敵の弱点は何か。


 それが最初の問いだった。


 今は違う。


 この人は何を欲し、何を恐れているのか。


 どこに立てば動けるのか。


 何を言えば息がしやすくなるのか。


 そんな問いに変わりつつある。


 これは任務として正しいのか。


 まだ分からない。


 だが、私はもう、最初の問いだけには戻れない。


 掲示板の確認表のように、私の中の問いも増えてしまった。


 だから、見えるものも変わってしまったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ