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極秘依頼③

「貴様⁉ 冒険者風情が我々の依頼を断るというのか⁉」


 私の返答に、真っ先に反応したのはリオンだった。


「断りますよ。」

「なんだと⁉」


 だが、私は動じることなく、涼しい顔で答える。

 その態度が気に入らなかったのか、リオンは勢いよく立ち上がった。

 しかし、ルイス公爵が鋭い視線を向けると、彼は舌打ちを一つして、不満そうに席へ座り直した


「もちろん、それ相応の報酬は支払う。何なら今後、君たちの後ろ盾になっても構わない。それでも駄目か?」

「はい。」


 私が再び即答すると、ルイス公爵は静かに表情を消した。


「……理由を聞かせてもらえるか?」

「はい。まず一つ、私の仲間であるカーミラは基本的にエトワール領から出ません。」

「何か理由があるのか?」

「いいえ。単純に遠出が嫌いなだけです。」

「そんなことで……」

「それが『そんなこと』かどうかは、私たちが決めますよ。」


 カーライルという護衛の言葉を遮るように、私は再び口を開いた。


「そして二つ目。あなた方は、私たちが女性だからという理由で、Sランクである私たちの実力を信用していませんよね。」

「え?そ、それは――その……」


 私がそう尋ねると、カーライルだけが慌てて否定しようとしたが、リオンはもちろん、ルイス公爵も口を閉ざしたままだった。


「……どうしてそう思った?」

「私たちのことはギルドマスターから聞いており、Sランクであることもご存じだったはずです。ですが、私の姿を見るや、一度疑いの目を向けましたよね?だからこそ、雷龍をどうやって倒したのか、わざわざ確認したのでしょう?」

「……っ。」

「言葉遣いは紳士的でしたが、あなたもリオン様と同じように、私が女性だからという理由で実力を疑っていたのでしょう。」


 私は三人を真っ直ぐ見据える。

 私たちは女性二人組ということもあり、こうした目で見られることには慣れている。

 だからこそ、相手が向けてくる視線の意味くらい、すぐに分かるのだ。


「何のためにランクがあるのですか。何のために実績があるのですか。はっきり言って、それを疑うのは冒険者ギルドへの侮辱以外の何物でもありません。私たちには、冒険者としての誇りがあります。そのような態度の方々の依頼を受けるつもりはありません。」


 正直、公爵相手にこのような言い方は少し横暴だったかもしれないと思う。

 けれど、お嬢様ならきっとこう言うだろう。

 今ここにいる私は、いわばお嬢様の代弁をしている立場だ。

 だからこそ、いい加減な返事はできなかった。

 すると、私の話を聞いていたルイス公爵が、ふっと小さく笑った。


「なるほど……君のような女性もいるのだな。もしかしたら、我々が勝てなかった雷龍を討伐したのが女性だったということに、嫉妬していたのかもしれない。」


 ルイス公爵はそう呟くと、青い瞳を真っ直ぐこちらへ向けてきた。

 私も負けじと、その視線を受け止める。


「……済まない」


 すると、公爵は私に向かって深く頭を下げた。


「え……」

「あのルイスが、女性に頭を下げた……」


 公爵に頭を下げられて動揺する私と同じように、なぜか護衛の二人も驚きを隠せないでいる。


「確かに俺は、無自覚に女性である君を見下していたのかもしれない。だからこそ、改めてSランク冒険者である君に、雷龍討伐の依頼をお願いしたい。」


 私は改めて、公爵様の目を見る。

 先ほどまでの疑いの色はなく、そこにあるのは純粋な期待と信頼だった。

 ……これで、ようやくSランク冒険者として認められたのだろう。


「わかりました。では、一度持ち帰って相談を――」

「いや、もし、もう一人が遠征できないというのなら、君だけでもいい。」

「……え?」


 その言葉は、あまりにも予想外だった。

 思わず、間の抜けた声が漏れる。


「私だけですか?流石に私一人で雷龍を倒すのは、少し厳しいかと……」

「いや、君には俺たちと共に雷龍討伐を手伝ってほしい。俺たちウォールランド家も、代々武人の家系として知られている。剣の腕には多少の自信があるし、何より雷龍は仇でもあるからな。」

「えーと……()()?」


 私は改めて三人を見た。


「ウォールランド家次男、カーライルだ。よろしくな。」


 赤髪の青年が軽く手を上げる。


「そして、こっちが弟のリオンだ。」


 そう言ってカーライルがリオンの頭をかき乱すと、私は思わず目をぱちくりさせる。

 まさか、公爵とその護衛だと思っていた二人が、兄弟だったなんて。

 私は思わず唖然としてしまった。


「え? 公爵家の方が三人だけで来られたのですか? 本当の護衛の方々は?」

「今は雷龍の被害で、動かせる人間がほとんどいないんだ。」

「俺たちも、本当ならすぐに戻らなきゃいけないんだけどね。」


 ……なるほど。

 どうやら、思っていた以上に事態は深刻らしい。


「それで、受けてもらえるか?」


 だが、だからといって、やはり私一人で決められる話ではない。


「……申し訳ありません。一度持ち帰って、仲間と相談させてください。」


 私は改めて依頼に返事をすることなく、その場を後にした。

 

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