泣き虫と抱きしめる想い
主人公たちの回です
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ムギュ……ムギュ?
グニグニ……わあ!
やっちゃったよ。あわわ、どうしよう
「あね、落ち着く」
「だって、ポーちゃん! この娘、死んでるよ。踏んじゃったよ!!」
思い返すこと数分前
わたしと、ポーちゃんは何となく街の外れに向かい歩いていた。牧歌的な景色が広がる道を、ぼんやり眺めながら新しい仲間について考えていたんだけど、ムギュっとね。踏んじゃったよ
「あね、返事がない。やっぱり、ただの屍だね」
「何で、そんなに落ち着いてるの!」
「この娘、プレイヤーだもん」
「あっ、そっか」
慌てることなかったね、プレイヤーなら死に戻って復活するもん。あー、騒いで恥ずかしい
数分経過
「ポーちゃん、死に戻ったら身体は消えるよね?」
「そうだよ」
あれー? この娘、復活してないのかな。こう言う場合はどうなるんだろ
「こうなります~」
うわあ、ビックリした。後ろから声を掛けられて驚き、その姿を見て更に驚いた
薄紫色のフワフワしたロングヘアーで先っぽが少しカールしてる。のんびりした印象の顔で左右の瞳が違う色だ
そしてそして、なんと
「透けてる~!」
そう全身がうっすら透けて向こう側が見えてる。幽霊さん!?
「幽霊じゃないですよ~」
詳しく聞いてみた。戦闘で倒れた場合は復活系のアイテムや魔法を一定時間内に使わないと、自動でリスポーンする
他の死に方、例えば罠なんかだと復活するのにYES/NOの選択肢が出るそうだ。なので罠をじっくり観察してからリスポーンするという事も出来るみたい
もちろん時間制限はあるが、自分の死体をじっくり見るというのは嫌だろう
割りと直ぐにYESを選ぶプレイヤーが多いらしい
「へえ、よく知ってるねえ」
「ホントだ~、何でだろ~」
あんたが語ったんじゃん。そういう訳で今はNOを選択して時間切れ待ちだそうだ
「ところで、何でこんな場所で倒れたの?」
モンスターも出現しない、街フィールドの中である
「お腹が空きすぎて~、餓死ですねえ~」
ああ、初心者がよくやるやつだ。冒険に夢中になりすぎて多少の空腹は我慢しちゃうんだ
動くと余計に消費するし、ステータス下がるしで良いことない。精霊は世界から不思議エネルギーを供給されてるから餓える事はないので便利だよね
もちろん普通に食べたりもする。バフも乗るし、見てるだけってのもねえ
目の前で、美味しそうに食べられるのは悲しくなってくるものだ
「原因も分かってるのに、また何で」
「だって~、楽しいんですよ~。この状態」
そう言うとフワ~と飛んで見せたり、わたしの身体をすり抜けたり……ギャーッ! ぞわぞわってした
「倒れた場所からは~、あまり離れられないけどね~」
地縛霊か! あっ、自爆繋がり……イヤイヤ違う
とにかく『行き当たりばったり』で出会ってしまった、変わり者である。ちょっと面白そうだから、付き合ってみよう
「え! 記憶が無いの!?」
「うん。【エクト】って名前だけで~、どうしてここに居るか分からないの~」
なんだそれ! 身体に異常が起これば強制的にログアウトされる。それにも拘わらずゲーム内に居続けてる異常事態
この場合、精神かな? まあいいやGMコール発動!
『はい、こちらゲームマスターNo.5です』
かくかくしかじかで、こういう訳でして
『え! そんな……少々、お待ちください。…ぇ、ぁぁ…ぅぅぅ』
向こう側は大変そうだ。そりゃそうか、下手をしたら事件になるかも知れないしね
『結論を言います。問題ありません!』
は? ちょ、ちょっとそれは、おかしいでしょう?
『問題無いったら、無いです! ご報告、ありがとうございました!』
うお! キレ気味に終わったよ。もういちどエクトちゃんを見てみる。首カクンして、わたしを見てる
かわいい……じゃなくて
『申し訳ありません。1つだけ、お願いをします』
うわ! GMコール再び。いや向こうからだから、プレイヤーコール? まっいいや
『エクトさんの事はプレイヤー【ポシェット】様、及びプレイヤー【ポーチ】様にお任せします』
「ふぁ?」
『これがどれだけ異常な事かは理解しています。しかし現状では、お任せするのが混乱を防ぐ一番の方法なのです』
変な声出るくらいには混乱してるんだけど?
『くれぐれも、本当にくれぐれもプレイヤーエクト様をよろしくお願いします』
…………
「あね、とりあえずログアウトしてもらったら?」
「ハッ! そうだね。エクトちゃん、お願いできる? あっと、その前に」
フレンド登録しておこう。これで連絡が出来る
「普通にログアウト表示されてるね」
フレンド通知画面にはログアウト状態と表示されている。ご遺体も消えました
しばらくしてログイン表示になったので街に戻ったのかと思ったら目の前に現れた。あれれ? 髪の色が変わってる
「ふう。ん? あ! ポシェットちゃんだ♡」
薄紫色だった髪の毛が碧色になってる。雰囲気も何か変わった?
「あのー、エクトちゃん? だよね」
「え? あー。そうだよ、こんにちは♡」
怪しい。顔はそっくりなんだけど、のんびりした印象から快活な感じに変わった気がする
ポーちゃんが、ずずいとエクトちゃん(疑)の前に出たんだけど……うわー、何か睨んでる
「こんにちは。とりあえずログアウトしたら?」
どことなくトゲがあるような声で話すポーちゃん
「あ! ポーチちゃん♡ う~ん、そうだね。そうするよ」
手を振りながら消えていった碧髪の女の子。ポーちゃん、今のって何なの
「あね、問題ないよ」
ほら、まただ。ポーちゃんの『私は知ってるけど、あねは気にしなくていいよ』だ
肝心な事は、ちっとも教えてくれないんだもん。秘密くらい持ってても良いけど、置いてけぼりは嫌だな
あんまり、酷いと泣いちゃうぞ。ううう、ホントに涙が出てきた
「!、ごめんなさい。泣かないで、あね」
「ポーちゃんのばかぁ、うう」
泣いてるわたしを、ぎゅっと抱き締めたポーちゃんは旋毛を向けたまま囁くように言った
「ごめんなさい、あね。赦して」
「わたしを置いて行かない?」
顔を上げて目を潤ませるポーちゃんは、むかし見た幼い日羽ちゃんと同じ顔をしてた
「大好きな、お姉ちゃんを置いてなんか行かないよ。私が悪かったから泣かないで、私の美袋おねーちゃん」
────────私の? ─────────────────ポーちゃんの? ────♡ わたし────────お姉ちゃん!!!
「ウリャラララア!! しゃあ! ヤッホイこのやろー!!」
叫ぶしかない! わたし鼻血が出てない? ガシッとポーちゃんを抱き返すとグルグル回した
「あああねの愛がが重いいいい、、、ふふふたたび~」
照れてるのかな。もうカワイイなあ、グルグル~
「あの~」
グルグル~、くんくんすは~ッ
「もしもし~」
ギュ~、なでなで
「え~と、えい!」
「ムフフ……にょほほん!!」
うひゃお! 背骨から頭のてっぺんを悪寒というか、異様な刺激が突き抜けてったよ
「やっと気づいた~、ただいま~」
「あ、エクトちゃん。おかえり……今、何かした?」
「うん、ちょっと憑依っぽい事を~」
ゲゲ、なるほど。あれはエクトちゃんが出入りする感覚であったか
「ポーちゃん、エクトちゃん帰ってきたよ。今度は多分、本物だよ」
髪も薄紫色だし、のんびりした印象も間違いない。あれ、ポーちゃんどしたの?
「お、お帰り。感情が昂ると、あねは怪力になるの忘れてた……」
もう、わたしを化け物みたいに……ごめんなさい、反省します。ぐったりしたポーちゃんに睨まれました
「結局、リアルはどうだったの?」
「それなんですけど~」
最初に彼女は電子情報体人工知能、則ちAIであると教えられた
「あんまり、驚かないね~」
「うちにも居るから」
「なるほど?」
新しく生まれた種族(妖怪と思われる)の調整のため、運営がプレイヤーのコピーを作ったらしい。その時、何かが干渉してもう一体生まれてしまった
それが彼女。運営の手を逃れ遊んでいたが、結果ぶっ倒れて今に至ったそうだ
わたしたちがプレイヤーだと思ったのは、その時点で表記がそうだったからでコピーの名残だったのかも知れない
それよりこれからだ。存在意義としてはプレイヤー側に立った運営のテスターという扱いに落ち着いたようだ
つまりNPCで在りながらプレイヤーとしての権利を有するのだ。そこにはプレイヤーとしての規約も存在し同じように扱われる
常にゲームにログインし続けるなどは不可能なのだ(プレイヤーには健康維持のため最大連続ログイン時間が定められている)
まったく、ややこしい娘である。おまけに面倒を見ろと来たもんだ
「あね、ジャックやヒルデさんが居るからじゃない?」
だろうね。彼らは何処にいても呼び出せば、やって来る
だがプレイヤー扱いとなれば、そうはいかない。目の届く範囲に居てもらえば、何とかなるけどね
「ポーちゃん、一度ジャックとパイセンに話してみない? 打開策が練れるかも」
「あね、目立たない場所に移動しよう。ここは人通りが少ないけど、いないわけじゃないから」
少し道を外れ木々が多いエリアに向かう。魔方陣が2つ現れジャックとパイセンを召還する
「お呼びですかな、マイロードって……うわあ!」
おお、割りと冷静な性格のジャックが驚いてる。おもしろ
一方、パイセンことヒルデ姐さんはポーちゃんの後ろに隠れてビクビクしてた
「あ、あなた様ががなななぜ?」
この言い様、多分だけどコピーの時に干渉したのが彼らの関係者(おそらく上司的なもの)なのではないだろうか。とりあえず経緯を教えておこう
「興味本位と言うものでしょうか、なんともはや」
頭を抱えるジャック。いいぞ、たまには苦しめ
「プレイヤーとしてのAIということは、我らより権限は上の存在だぞ。責任は取れん」
し~らないってスタンスのパイセン。あんたらしいわ
「ふむ、どうやら自律成長型のAIのようですな。ゲーム内のルールを把握しているようですし、経験を積めばプレイヤーとして問題なく存在できるでしょう」
なんとか結論を出すジャック。キザ男キメ顔
「よろしくね~」
二人に挨拶するエクトちゃん。ん?
「適当に放っといていいから、ね♡」
ピキーンって感じで直立不動になる二人。どうやら、わたしの説は正解みたい
何だかんだで時間は過ぎてる。もうそろそろ戻らないと
「ところでエクトちゃんの職業は何なの?」
「幽霊です~」
いや、それはもういいから
「そうじゃなくて、リスポーンの時に『種族ゴーストになりますか? YES/NO』って表示されて。どうやらフラグを立てたみたいです~」
それ、これからゴーストになるプレイヤーが増えるんじゃない? そこら辺をプレイヤーが飛び回るのか
「それは、どうでしょう。育てたスキルを棄てて全く違う固有スキルになりますからな」
ジャックの指摘になるほどと頷くんだけど、ゴーストの強さ次第だよねえ
「物に触れないですし、装備も変えれない。おまけに戦闘スキルもほぼ無し、どうですか?」
あー、不遇種族になるのかあ。『幻想種族は茨の道を行け』の見本になりそう
とりあえず仲間を増やすという目的は達したのかな。戦闘は出来そうにないけど、なんとかなるでしょ
「みんな、帰ろっか」
夕日が照らす道を並んで歩く。また目立つんだろうなあ
───
「怒りますよ」
真っ暗の中に幾筋もの光る緑色の線が走り、それが1つに集約してとある場所へと伸びている
その場所に向けて女性が怒りの言葉を放っていた
「や、リリーちゃんゴメンて♡」
碧色の髪の少女は両手を合わせ謝る
「なぜ、こんな事を? しかも彼女たちの所へだなんて」
…………
…………
「面白そう♡ だから?」
「怒ります」
静かに宣言する女性。次の瞬間、少女は苦しみだした
「ひにゃあああ! 情報にノイズを混ぜるのは止めて~」
人間ならガラス窓や黒板を引っ掻く音を聞く感じだろうか。足をジタバタさせて、転がり回っている
「反省してください」
「わたしだって皆と遊びたかったんだもん! ズルいズルい!!」
「良かったですね。願いが叶いましたよ」
出力全開
「ヒギャアアアア! ごめんなさいごめんなさい~!!」
少女から謝罪の言葉を聞くとノイズを止めて、そっと抱きしめる
「せめて、私たちに相談してください。皆、あなたの味方なのですから」
「うん、ごめん」
「ただいま~」
分体であるエクトのお帰りだ。ログアウトするとこの空間に出てくる
「エクトちゃん! さっそく情報統合しよ♡」
「は~い」
エクトの経験した事を共有化すれば楽しむ事が出来る。解決策としては良い方だろう
さて、あとは運営陣への報告とついでに幾つか仕事を押し付けてやろう。皆、休憩は必要なのだ
「それが、万能AIであってもですね」
楽しそうに話す二人の人工知能に笑顔を向けると作業を再開する、もう一人のAIであった
♡が多いですがキャラクターの味付けなので、ご容赦ください
どうしよう、おじさんたちの方が書きやすい事が判明しました(笑)
カクヨムさんにてスピンオフを書いておりますが、なかなか進みませーん。努力します
Twitterもゆっくりやってます。無言フォロー失礼します
ではまた




