魂、炎となりて
老人回です
サオトメの言葉に多少危険な表現がありますが、彼の性格の風味付けだと思いご容赦ください
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読んでくださる方には感謝を
「仲間……仲間のう」
破壊の権化などと呼ばれる戦闘狂、豪ロボGことサオトメは歩きながら考え込んでいた。改めてパーティーを組むという事は、今までの戦闘スタイルが変わるかもしれない
果たして自身のやり方は新しくなる戦法で通用するのか。チームプレイが嫌なのではない
好き勝手に暴れる事で多大な戦果を挙げて来たのだ。若く柔軟な思考の頃ならともかく、この歳になると合わせられるかキツイ
昔は頭が固い老人を嫌ったものだが、自分がそうなるとは思いもしなかった。用は不安なのである
「わしが不安のう……」
独り言が思わず出てしまう。だが2時間後に成果を挙げなくては合わせる顔が無い
当てもなく歩いているよりはと、近場の飲食店に入った。なかなかに繁盛している
席に着くと、いくつかの視線が刺さった。そのうち3人ほどが、こちらに向かって来る
「よう、爺さん。負けた気分はどうよ?」
「ヒヒヒ、見事な完敗だったなあ」
「いい気味だぜ、ギャハハハ」
なにやら声をかけられたが、頭の中は新メンバーの勧誘でいっぱいだ。何の話しか本当に分からなかった
「?、何の事じゃ」
「おいおい、この間のイベントでリックスに殺られただろうが。もうボケちまったのかよ」
なんだ、その事かと思う。サオトメにとって戦闘は楽しいゲームだ
ゲームの勝敗にいつまでも固執するほうが面倒だし、負けたまま終わる積もりもない
「確かに負けたのう。まあ次は分からんがの」
「かーっ! このジジイ懲りてないぜ。あんだけ派手に負けたのによ」
「ハズカシー! 俺だったら外、歩けねー」
「恥の上塗りじゃん。歳を考えろっての!」
サオトメはギロリと睨み付けた後、やれやれといった感じで言葉を吐く
「……ぬるいのお」
「あ?」
「一度の敗北がなんじゃ、わしらは叩かれたらやり返せと教育されとるからの。大人しく尻尾を丸める負け犬どもとは違うわい」
人生において負けを痛感する事は多々ある。だがそこで止まっていては何も変わらないのだ
なるほど、確かに負けた。だがそれだけだ、命を失うわけでも無い
不屈の精神とまでは言わないが、己の熱き炎魂で相手を呑み込む気概を歳をとったとはいえ失ってはいない
「なんて暴力的なジジイだ!」
「時代を考えろ!」
「昭和の遺物め」
「クックック、ならば教育が間違っておったのかのう。文部科学大臣を相手に裁判でもするかの、いくら貰えるじゃろか」
もはや閉口である。裁判にすらならない案件であるが、この爺さんは国を相手に勝つ気でいる
勝敗には固執しないが、勝負には執着するサオトメらしい発言である
「ハイハイ、そこまで~。うちの店で騒ぐんじゃないよ、まったく」
奥からフライパン片手に店の主が出てきた。その姿を見て3人組はギョッとする
深紅の髪を後ろで1つに纏め、褐色の肌をしている。首元から赤いウロコが生え、瞳は縦に長い
頭には灰色をした鋭い角が2本伸びている
竜人
竜の加護を得て、その姿を変えた人びと。加護を得る竜によって、その能力は異なるため竜人同士でもプレイスタイルは変わってくる
赤いウロコは火竜の加護であり、高い火耐性と運動能力を得る。水耐性は下がってしまうが、魔法耐性も高いので壁役としても活躍できる
さて、そんな戦闘種族である竜人だが目の前に居る女性はかなり異質であった。戦闘をあまり好まず、料理スキルに全ての情熱を捧げる強者である
曰く
「素手で炒め物が出来るよ~! ハハハー!!」
である。年若く見える彼女に何があったか、知る者はいない
「う、【鬼炒め】だ」
ひとりが思わず呟いた。眉根を曲げる女性
「なんだい、その呼び名は! 焦がしてるみたいじゃないか」
バン! と机を叩いて不快をあらわにした
「どうせなら【火竜の愛し子】エンチェンと呼びな!」
完全に気圧される三人組。実はこのエンチェンと名乗る竜人、料理生産でトップを走るプレイヤーである
他人の威を借りて煽ってくるような人間が、頂点に居る者に対抗できる訳がない。睨まれただけで出て行こうとしている
「毎度あり~。お代はキチッと払うんだよ」
あたふたしながら勘定を済ませると、そそくさと逃げて行った
「なんじゃありゃ、ケンカ売りに来たんじゃないんか」
あれだけの事を言っておいて何もしないとは。拍子抜けする
「あのな爺さん、世の中には自分で戦いもせず相手の隙につけこんでマウント取ってくる輩もおるんよ。ハア~」
溜め息混じりの言葉に、このエンチェンという竜人もそれを受けた経験があるのだろう
「何にせよ、他のお客さんたちには迷惑だったのう。すまん」
自身も飲食店を経営していたので、店側の苦労も分かる。こちらに非は無いだろうが謝罪をせねばならぬだろう
「何か注文して食ってくれればいいさ」
それに対してあまり気を遣うなと言う店主
「いや、騒動の原因が居っては落ち着くまいて。テイクアウトがあれば、そちらを貰おう」
「その辺はゲームらしいというか、料理ごとインベントリに入るからね。たくさん買ってくれれば助かるさ」
この際だからと大量に注文するが、待ったが掛かった
「おいおい、たくさんとは言ったが多すぎだろう。在庫が足らないよ、後で配達するから場所を教えておくれ」
その言葉にフムと考えると、とある場所を指定した
「了解、じゃあ後でな。毎度あり」
店を出たサオトメは指定した場所へ向かう。正直あまり行きたくない所ではあるが、他に当てもないので足を運ぶしかなかった
「久しぶりじゃのう、サオトメ」
「もちっと顔を出さんかい、薄情者め」
居並ぶ面々は貫禄たっぷりの老人たちであった。元々は近い年齢同士の集まりであったが、一念発起して多方面で名を上げている
POWER OF OLD
チームが実装されればトップに君臨するやも知れぬ、恐るべき集団だ。実はサオトメを半機械人間へと導くクエストを発見したのも、ここのプレイヤーである
「サオトメの坊やかい。問題児のご帰還だね」
この女性、齢90に近い。それでも眼光の鋭さは衰えを見せない、この集団の纏め役である
バイタルチェック機能を持つゲーム機を気に入り、毎日のログインを欠かさない。もし何かあれば病院にデータが飛んでいき救急車が駆け付ける
「あたしが死ぬのは、この世界の中さね」
動かし難いリアルの肉体での生活は程々にして、こちらの自由に動かせる身体で残りの人生を謳歌する。フルダイブVR時代初期に流行した【現実逃避老人症候群】の罹患者でもある
現在ではログイン時間の制限、ゲーム内飲食の味覚低下など対策がされているため罹患者は少ない。また病院からの指摘で厳重に監視できる事も法案化されているため、重症化する恐れがある場合はログイン不可能となる
「先生、ご無沙汰しております」
そしてリアルではサオトメの小学生時代の恩師でもある
「よく来たね。滅多に顔を見せない坊やが、どうしたんだい?」
「実は新しい仲間を探しておりまして」
「ほう、小娘の使い走りかい。いい歳をして何してるんだい」
「いやいや、真面目にやっとるだけですよ」
サオトメをジロリと睨む老女
「そうゆう事を言ってるんじゃないよ! あんたがしつこく絡んで、あちらさんに迷惑掛けてないかって言ってんだ!!」
何歳になっても、この教師オーラには恐怖を感じる。子供時代に戻った気がして萎縮してしまう
「や……あの、その……」
言葉を明確にしない元教え子に溜め息が出る
「まあ、いつもの事じゃ。治らん病気じゃの」
「あきらめて、しっかり説教を受けとけ。サオトメ」
横から口を挟む2人の老人。先生以外に嫌みを言われれば腹を立てる
「ツネヒサにナオイエ、貴様ら~」
そう呼ばれたのはサオトメの同級生たちだ。ともに悪ガキとして拳骨をもらった仲でもある
「かーっ! すぐに湯気を立てるのは、変わらんのう」
「おっ、やるか? やるのか?」
パン! と手を叩く音が響いた
「まったく、お三方。わきまえて下さい」
眼鏡を掛けた老人が割って入る。切れ長の目が鋭い光を放つ
「なんじゃ、モトナリ。お主には関係無かろう」
「年下のくせに、仕切りおって」
「優等生ヅラが気に入らんのじゃ」
会えばいがみ合う三人組だが共通の敵に対しては即座に手を組む。ちなみにモトナリもリアルでは知り合いである
サオトメ 元飲食業経営(若い頃は声優)
ツネヒサ 元蔵元
ナオイエ 元醤油製造メーカー代表
そして
モトナリ 元銀行副頭取
現役の頃は助け合い励ましあった間柄で、勇退した今でも酒を飲むくらいには仲が良い。だが勝負となると熱くなる
今までも囲碁、将棋や麻雀など多種に渡って勝負してきた
「いいでしょう、相手になります。ただし3対1は卑怯でしょう?」
「わかっとるわい! 先ずは、わしからじゃ」
ツネヒサとモトナリが決闘フィールドに消えた。その様子を見ていた老女は残った2人に声を掛ける
「あんた達はいいのかい?」
「いや、ちっとばかしサオトメに話しがありまして」
「うん? ナオイエどうした」
「最近、お前の孫がゲームを始めたじゃろ?」
「よう、知っとるの」
「あんな可愛い孫が居って、他の娘を追いかけ回すのはどうなんじゃ」
ナオイエの息子夫婦には子供が居ない。孫という存在に憧れさえあるナオイエには納得がいかないようだ
「あれは、以外に強かでの、わしからタダでゲーム機を持っていきおった。心配などせんでもええ、わしの孫じゃぞ」
「ふん、そうか」
「おう、逆にウザイと言われるわ。それにのう……」
「なんじゃ?」
「孫が目の前でバッタを食べる姿を見るのはキツイぞ」
「……はあ?」
訳がわからないという顔をするナオイエ。その疑問には溜め息で返事をするサオトメ
正直、話したく無い内容だ
「毎度~、配達に来たよ」
その時、入り口から声が聞こえて来た。どうやら注文した食事が届いたらしくエンチェンが受け取りを確認していた
「おお、来たか。皆の衆、たまには奢らせてくれ」
言うまでもなく、がっつきだすメンバーたち。この歳になると遠慮などという外聞は気にしない
「うまい!」
「絶品じゃ!」
「さ、酒は無いのか」
良い反応が返ってきてニコニコするエンチェン。ただ1人だけ顔をしかめる老女がいる
「婆さん、口に合わなかったかい?」
自らの料理に多少は自信のあるエンチェンだ。満足できない客は見逃せない
「そうじゃない、味覚に制限が掛かっておるでな。あまり味が分らんのじゃよ」
その言葉で理解するエンチェン。しばらく考えてから持っている素材の吟味を始めた
「ちょっと、待っとくれ。お客さんを満足させなきゃ、料理人として名折れだ」
「すまんが、ちょっと良いか?」
「なんだい?」
サオトメが声を掛け、決闘フィールドに映る2人を指差す
「あいつら、食いっぱぐれたら恨まれるでの。2人分追加で頼む」
「あいよ!」
快く引き受けたエンチェンは携帯コンロのような器具で料理を始めた
「ところでサオトメ坊、バッタを食べるとは穏やかじゃないね。昔の話しじゃあるまいし」
先生に話しを振られては答えない訳にはいかない
「実は孫がカメレオンでプレイしておりまして。それが言うにはバッタはチョコレート味なんだそうです」
ピクッ
「つまり空腹値を満たすための虫食かい?」
「そのようで。一応、宝珠にもなるそうですが」
ピクピクッ
「出来たよ」
ちょうど決闘フィールドから帰ってきた2人を迎えて、改めて食事となった。お椀から湯気があがっている
「ほい、特製の揚げ浸し。酒呑みゼンザイって私は呼んでる」
お椀の中には軽く片栗粉をまぶして油で揚げた餅、茄子と獅子唐が出し汁に浸かっている。そこへ大根おろし、細めの削り節を乗せて完成だ
「うま!」
「美味ですな」
今まで戦っていた2人が仲良く、お椀を空にしている。そして老女先生も目を閉じて堪能していた
「制限があるなら、それを越えて味を付ければいいのさ。ゲームだから塩分濃度なんか気にしなくて良いしね。もちろんそっちの2人の椀は普通のだよ」
「なるほど、年寄りは塩分に気を付けるからね。盲点だったよ」
ゲームとはいえ、食べる物に気を使ってしまうのは癖のようなものだ。なるほど、若い者は現実と仮想の境目を理解している
「と・こ・ろ・で」
サオトメに詰め寄るエンチェン
「さっきから面白そうな話しをしてるじゃない。私にも教えてよ」
料理中に耳をピクピクさせて、気にしていたエンチェンである
「うん? え! もしかしてバッタの事かの」
「そうそれ! もしかしたら新しい食材の発見かも」
一斉に嫌な顔をする一同。何の事か分からないツネヒサとモトナリに事の次第を話すナオイエ
「マジか」
「うわあ」
やはり引いている
「い、いやあれはカメレオンならではの味覚かもしれんし、蚊やハエがミルクとイチゴチョコなどと訳わからん事も言っとるし……」
さらに引く一同
「決めた、私は料理職人として全ての食材を研究する。まずは虫からね」
キラキラした目で語る、竜人エンチェン
「み、店はどうするんじゃ?」
「私が居なくてもレシピが有れば作れるから問題なし。オーナー業だけなら店に居なくても良いしね」
もはや、止める理由も無い
「ハア、サオトメ坊や。あんたの所で面倒見てやりな」
「え?」
「恨むよ、せっかく良い料理人に出会えたと思ったのに」
ウンウンと頷く一同。これは新たな仲間を得たと思って良いのだろうか
だとしたら孫に感謝しないといかんなと思う。まてよ恩師と、この集団に恨まれたので差し引きゼロのような気もする
「新しい料理の夜明けだよ!」
「ハハハ、ハア。視線が痛いわい」
しばらくは顔を出すのを止めようと思ったサオトメであった
じいじ四人組は皆さん戦国時代のヨロイ衣装です。ホントに仲良し
しまった先生の名前を入れてない!……まっいいか
サラマンドルとエンチェン、分かる人には分かりますね
話しにも出てきたサオトメ氏の孫、モモこと美咲が活躍する物語
【絆ONLINE ~美咲忍法帳 友達が華やかなので影の道を歩もうと思います~】
カクヨムさんにて書いてます。現在3話
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