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まこととNATUKIの出会い、1

 あるところに、堀田という名の夫婦がいたとさ。


 夫は堀田まこと、妻は堀田NATUKIという名前で、それはもう、とても仲の睦まじい夫婦だったという。


 二人は小学の時に出会い、中学で交際、そのまま流れるように関係が進み、最終的には結婚した。


 まことは真面目で優等生。誰からも好かれる性格をしており、彼の笑顔はダンゴムシさえも魅了すると言われていた。


 一方、NATUKIの周りからの評価というのはとても酷いものだった。彼女が学校で誰かに触れようものなら、「アゴ菌」のなすりつけあいが始まる。アゴ菌というのは、某地域で突発的に発生した、「アゴパラサイト」という、まだ解明の進んでいない謎の寄生虫によってもたらされる、不治の病である。それだけでなく、彼女のアゴは周りに攻撃されないようにと、様々な進化を僅か数年のうちに行っていた。彼女のアゴは、通常のアゴパラサイトとは違い、人間並か、それ以上の知能をもっていた。その為か、アゴが異様に肥大化し、ピーナッツのようになっていた。


 彼女のアゴが数年で進化する上で得た力は、とてつもないものだった。


 まず一つ目に、敵との交戦をなるべく避けるようにと、アゴから悪臭を放つようになった。これにより、味方である人間さえも自分に敵意を見せてくるようになったが、生き残る上では問題ないとアゴは判断した。


 そして二つ目に、アゴに知能があるということに伴い、アゴが自律できるようになった。NATUKIからの支配、制約を全く受けず、NATUKIに危機が迫ればNATUKIが何もしなくても敵を攻撃するということができる。これにより、NATUKIが寝ている間でも不意打ちをされる危険性が減り、より、NATUKIの生存力が上がった。


 最後に三つ目。アゴは、基本顔面に団子のようにくっついているが、アゴ自身の思い通りに変形する。自由自在に操れるのだ。アゴのみ皮膚の硬度や伸縮性を高めることができる。さらに、アゴがNATUKIとは別に栄養を摂取すれば、アゴを強化できる。アゴの使用できる皮膚、筋肉の密度を急激に上げることもできる。




 こんな化物のようなアゴを体に飼っているせいか、彼女の周囲は彼女を珍獣を見る目で、時には恐怖の目で見ている。


 アゴの能力により、アゴはとてつもない悪臭を放っているため、彼女のアゴに触れると臭いが移る。そのため、周りの者たちは彼女の臭いを「アゴ菌」と呼んだ。当時小学生だった子供たちは、彼女の酷い臭いに耐え切れず、なすりつけあいが始まる。 


 普通であればなすりつけあいというのは軽い遊びで、一日も経てば収まるだろう。しかし、彼女の菌は臭いのだ。とても人間に耐えられる物ではない。なぜか洗っても落ちない。解決する方法は、「誰かに移す」ということだけだった。不思議なことに、「アゴ菌」は、誰かに軽くタッチするだけで自分についた臭いが相手に移り、自分の臭いはなくなる。


 人間は、自分が理解できないものに恐怖を感じる。それはNATUKIのアゴも例外ではなかった。彼女のアゴ菌が周りに害を成すと分かり始めた頃から、彼女の孤立が始まっていた。


 ある日、廊下を歩いていた少年が、前方から歩いてくるNATUKIに気がつかず、少年の肩とアゴがぶつかってしまった。


 この時、周りの小学生たちは「またあの悲惨なアゴパーティーが開催されるのか・・・・」と嘆いた。誰しもがアゴ臭を恐れ、少しずつ少年から離れていった。中には教室に設置されているアゴシェルターに逃げ込む生徒さえいた。


 しかし、この後みんなが恐れるような事態にはならなかった。少年はNATUKIに一言謝り、去り際に、「そのアゴ、キュートだね」と言いながら歩いて行った。


 皆が目の前の光景を信じられなかっただろう。普段NATUKIにそんな言葉をかけるときは、決まってNATUKIをからかう時だけだった。しかし、その言葉をNATUKIに投げかけたのは、クラスで人気者のまことくんだったのだ。


 彼はそのまじめな性格からか、人をからかうということを心から嫌っていた。そんな彼が、あのNATUKIに、キュートという言葉を使ったのだ。


 誰しもが時を忘れ、その事実を受け入れられなかった。




 その時からだろう。NATUKIの人生は今までとは違い、とても明るいものとなり始めたのだ・・・。

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