第5話 ゼフィル共和国
しかし、いつまでもそうしているわけにはいかない。
春人はテレビの前のテーブルに置かれていた自分の携帯でゼフィル共和国について調べてみることにした。
世界は違えども操作感は自分が知っている携帯とさほど変わらない。
端末脇のボタンを押して起動。指紋と顔認証、2つの生体認証でロックを解除。タッチパネルに表示されたアイコンをいくつかタップして、インターネットブラウザに当たるものを探しだすと、検索する。
やがて結果が表示されると、
「マジかよ」
春人は愕然とする
検索内容が表示される。
ゼフィル共和国
天の川銀河に存在する星間連合共同体の一国、その歴史は宇宙開闢以来と言われており、現在確認されているだけでも1億年以上の歴史を持つ。
特に共和国の外交を担う外務統括省に属する異星文明調査局は長年にわたって銀河各地の調査を行っており、連合未加盟の文明の発見、隔離、保護、保全、現地政府との交渉に力を入れている。
また各恒星系の調査は天の川銀河の多くの地域に及んでおり、連合のなかでの軍事、経済力は大国であるセルフサード帝国、リフラート連邦、ノウサハラ民主共和国などには及ばないが、各国に対して未開発星系の入植や開拓、資源獲得のための情報提供を行ってきた実績により銀河系の各国に強い影響力を持つとされている。
「一億年以上の歴史…ってすごいな」
春人はさらにゼフィル共和国について検索する。
ゼフィル共和国を構成しているのは主にマアナ・ロハスと呼ばれる複数の見た目を持つ民族。
額と耳の後ろから角を生やした鬼人、尖った耳を持つ森の妖精の様な森人、人と竜の間のような見た目の竜人、鳥人、狼人、
彼らは見た目は違うが遺伝子的にはほぼ同じなのだと言う。
しかも彼らは長命で一万年は生きると。
「一億年以上の歴史に一万年は生きる…宇宙人か」
このアマテラスは彼らによって自治権を認められた中で繁栄しているのだという。
スマホの画面に映ったファンタジー世界の住人のような見た目の人々に春人は非現実さを覚えるが、好奇心を押さえられず、さらに検索をする。
それはこのアマテラスの歴史。
要約するとこの星の人間の大多数はゼフィル共和国によって約80年前、ここから100光年程ある太陽系の地球にある国、日本から移住してきたのだと言う。
そしてゼフィルによってテラの文化や生態系が移植され、レアメタルなどの資源採掘を本国へと輸出して得た資本で発展してきた。
「つまり、地球からの移民か」
つまり、ここの人々は間違いなく自分が目が覚める前にいた、前世というべき世界の自分と同じ日本人、ということか。
続いて春人は先ほどの人型について調べる事にした。
あれは、立体質量投影機による外装と筋力補助骨格、空中を自在に移動するための小型浮遊扇機構を背負い、それらを制御する服型の着用型電子機器を一まとめにした身体強化服と呼ぶべきものだという。
あれは民間のものでいささか不恰好だが、軍用のものは無数の無人小型機械を従えて車両や航空機から飛び立ち、通常の歩兵では携行できない規模の火器を携え、小銃程度では傷つかない外装によって歩兵の機動力や防御力、攻撃力を大きく増大させたという。
しかも光学迷彩機能まで持っているという。
「これは、ロボットアニメというよりは特撮ヒーローだな」
企業の紹介動画で武器を手にした狼顔の兵士が一瞬にして全身を滑らかな装甲と頭全体を覆うフルフェイスの姿へと変える様を見た春人は呟く。
続いて春人がみた動画では無数のドローンと共に宙を飛び回り、恐竜のような巨大生物を捕獲する兵士達の映像があった。
それは映画のような光景、あるいはAIで作られたのではないかと思えるような様子。
春人はさらに検索する。調べたのはさっき見た触れる立体映像等に使われている立体質量投影機についてであった。
それはこの世界では個人の携帯の立体映像にも使われているほどに普及した、粒子を空中で固定して実体化できる技術。
出力に電力を使うため、航空機の客席などの主要構造物やエンジンのような複雑な機構のものは出力できない。そのため、携帯の立体映像や車が浮遊走行するときの姿勢安定用の補助翼や二輪車の風防や防護外殻等に使われている。
また、制御技術を応用したある程度の情報の交信が可能となっているため、道路上から低空へと上昇して飛行する際、飛行機のように操縦方法が変化する浮遊車の操縦系統やパソコンのキーボードの代替等の電子機器の操作等に使われているのだという。
一旦、検索結果を閉じ、春人は息をつく。
これからどうすればいいのか。
自分が前にいた世界とは似てはいるがあまりにも違う世界。
その事に春人は途方にくれるしかない。




